家は一体どのような役割を果たすものなのでしょうか? それは日々の生活を送る場所であり、家族と一緒に過ごす場所です。でも家がそれだけの場所だとしたら、それは少し物足りないかもしれません。そこには日常生活の忘れられるような刺激や彩りも必要なのです。そこで紹介したいのは、そんな日常生活に変化を生み出せる家です。そこには他の家に無いような生活を一変させる空間が備えられています。
松橋常世建築設計室が建てた住宅には、他とは少し異なる壁が作られています。その上にあるのは色とりどりのオブジェ。また壁の下にマットが敷かれており、明らかに他と違うものになっています。そんな壁がある家に付けられた名前は「クライミングウォールの家」。その名の通り、ここでは壁をクライミングのために使うことができます。取り付けられたカラフルなオブジェは、壁を登るために手や足をかけるための足場なのです。
この住宅が建てられたのは北海道の札幌市。そこでの冬が厳しいことは言うまでもありません。また外でスポーツができなくなるなど生活が制限され、家で過ごす時間も長くなります。しかし家の中で過ごすだけでは生活が単調になるでしょう。時間を有意義に過ごせ、刺激を与えてくれるような何かが必要なのです。そんな問題に応えたのが、このウォールクライミング用の壁。冬の間には運動不足解消に使うことができ、家族の交流の場にもなるでしょう。それは生活に刺激を与える重要なアクセントになるのです。
東京の住宅街に建てられた3階建ての白い家。シンプルな外観な建物は控えめな印象を感じさせます。ですが他の家では見られないような個性的なものがあるのです。それはすべり台。もちろん子供部屋にあるような小さな遊具ではありません。1階と2階、そして2階と3階の間を繋ぎ、移動の際に使える本格的なもの。家には各階を繋ぐ階段がありますが、ここでは遊び感覚で家の中を移動をすることができるのです。
普通であれば、家の中の移動は階段、場合によってはエレベーターになるでしょう。それによって移動ができますが、何か特別なことが起きるわけではありません。ですが、すべり台であれば、楽しみながら移動することができます。もちろん移動するだけでなく荷物を運ぶこともできます。子供たちにとっては格好の遊び場となるでしょう。そして、すべり台が持つ存在感や個性は、家に大きな特徴をもたらしてくれるはずです。このようなすべり台は生活に大きな変化をもたらし、他で感じられないような生活を可能にするのです。
最後に紹介したいのは、町工場兼住宅として使われていたビルをリノベーションした建物。ここで大きな特徴となっているのは新たに設けられた茶室です。建物の1階部分に4畳半の上座床茶室が作られています。そこにあるのは、お茶を点てる際に必要な炉、茶室へ入るためのにじり口、そしてお茶を点てる際の準備に使う水屋。古ぼけたビルの外観からは想像できないほど本格的なものとなっています。それは外観だけでなく、茶道を行うには相応しい場所と言えるでしょう。
お茶を飲むことは、どこでもできるような日常的な行為です。ですが茶室で茶道を行うのは別の意味となります。茶道に「道」という言葉が使われるように、お茶を点て、それを飲むことは総合芸術とも言われます。そのような非日常的な芸術的空間が、日常的な空間に備えられると、生活も大きく変わることでしょう。きっと日常生活に芸術的な視点が加わり、そこに退屈さなど感じなくなるかもしれません。
家は生活の大部分を過ごすとても重要な場所です。それが生活に与える影響は計り知れないでしょう。そんな家に求められるのは、くつろぎや安らぎばかり。そこで刺激や変化を生み出すことは、それほど求められないのです。ですが家が生活を単調にさせ、人生をつまらないものにさせるとしたら、それは問題でしょう。もし生活に少しでも刺激が必要であれば、そして変化が必要であれば、日常生活を忘れる空間を家に備えてみてはどうでしょうか。それは生活だけでなく、日々の視点や人生にも何らかの変化を生み出すかもしれません。