以前、テレビを観ていたら、若い芸能人が「俺はデートの時は洋食と和食を二店舗予約しておいて、彼女に会ってから『どっちにする?』って聞いてる」という発言をしていました。テレビの中では「気が利く~!」と盛り上がっていたのですが、さて、どう思いますか?
これ、もちろん彼女が洋食を選んだら和食のお店の方はキャンセルするんですよね。当日に突然、予約をキャンセルされた和食のお店の気持ちを考えてみますね。
彼女とのデートの待ち合わせが六時としましょう。そう考えるとふつうはその芸能人は「六時半」に洋食と和食のお店に予約を入れたことになります。
彼女が「じゃあ私、洋食がいい」と彼に告げるのが六時十五分で、その場で彼が電話で「和食の店」をキャンセルしたとします。そこから十五分以内に新しい二名のお客さまって、運良く来店すると思いますか? よほどの繁盛店じゃないと無理ですよね。
そう考えると、その和食の店は、その芸能人が使ったであろう二名分の売り上げの損失があるんです。そしてそのお店がコースを予定していたらそのコースの料理も廃棄しなければなりません。お店としてはイヤになってしまいますよね。
テレビってすごくたくさんの人間が観ていて、影響力があるから、こういう飲食店側の事情がわからない人が真似をして、困る飲食店がたくさん出現しそうです。もしこういう予約の仕方が流行っているのなら、なくなってほしいものです。
そういうこともあってなのか、最近は予約をいただいたら「前金制」というのも流行っているそうですね。確かにコンサートのチケットも先に払ってしまって、当日行けなくなったら、誰か別の友人に「これ代わりに行って楽しんできて」なんてかたちでチケットを譲ったりしますよね。飲食店も同じような感覚にした方がいいのかもしれないですね。
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さて、お店の予約のことです。僕が働いているbar bossaの予約は、八時までの入店でしたら予約は受け付けております、とお伝えしております。こういうスタイルってよく耳にしませんか? たとえば居酒屋でも「予約は七時まで」なんていうシステムです。これ、どういう意味なのか説明いたしますね。
例えば「四名で十時に予約をお願いします」と言われたとします。そうなるとbar bossaは六時にオープンで、六時から十時までその四名席はずっと誰も座らせないで空けておかなければなりません。
さて、そこに七時に四名で来店されたお客さまがいます。もしかしてこの四名様は十時までに帰られるかもしれません。でも「何時くらいまでお店にいます?」なんて聞けません。なので、その七時に来店された四名様はお断りすることになるんです。
おわかりでしょうか。ずっと席を空けている間に他のお客さまが座っていただける可能性があるのにお断りしなきゃいけないので、「七時まででしたら予約は受け付けています」なんてことを飲食店側はお伝えするわけです。
「予約って面倒くさいなあ」って思い始めましたか? でも正直な話、特に「すべてがコース料理」なんてお店は、実は全席が予約で埋まった方が運営がすごく楽です。七時に来店するお客さまが四名とわかっていれば、それにあわせて料理を始めればいいわけですから。
お客さま側も、お店側もどちらもハッピーになる落としどころはどこだろう? と考えてまして、こういうお店の気持ちもわかっていただけるとうれしいなあと思い、こんなことをお伝えしました。
bar bossa 林伸次
飲食店って本当に面白いなあって感じの本を出しました。『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』 https://www.amazon.co.jp/dp/4866470011