本日の朝日新聞 朝刊に竹内研が推進している、JST CREST「デジタルデータの長期保管を実現する高信頼メモリシステム」プロジェクトが紹介されました。
メモリといえば、主要な市場であるスマホなどのモバイル機器、パソコン、データセンタのストレージでは、コスト(価格)・容量が最も重要です。
三星電子、東芝メモリ、マイクロンといった巨大企業が、毎年数千億円もの研究開発資金を投資して、メモリの大容量化を競っています。
その一方、将来重要になるメモリの特性として、高い信頼性・データの長期保管があると思い、このプロジェクトではReRAM(抵抗変化型メモリ)をモチーフにデータの長期保管の研究を行っています。
デジタルデータの長期保存は、例えば赤ちゃんの時の写真を永続的に残すように、誰にとっても身近な話題です。
その一方、この朝日新聞の記事を読んで、私も目から鱗だったのは、データの長期保管は、(大袈裟に言えば)民主主義の根幹であること。
今でも、メモリの寿命が来たら、古いメモリから新しいメモリに定期的にデータを移し替え続ける(マイグレーション)ことで、事実上、永続的にデータを保存することが可能です。
しかし、データ量が大きくなるほど、マイグレーションにかかるコストは大きくなります。
例えば、フェイスブックがデータセンタで光ディスクを使って自動的にデータをマイグレーションするストレージを発表しています。下記のホームページでストレージの動画が見れますが、大量に格納された光ディスクを自動的にピックアップする装置は、もはや精密なロボットですね。
データがこのまま増え続け、マイグレーションにかかるコストが高くなると、マイグレーションによってデータを永続的に保存できるのは、資金力のある特定のプレーヤー(企業や政府?)だけになるかもしれません。
その結果、特定のプレーヤーにとって都合の良いデータだけが残され、都合が悪いデータは消滅してしまうのではないか、という懸念が記事には書かれています。
日本国憲法で定められている「知る権利」を担保するためには、その前提として「誰でも安価にデータが安価に永続的に保存することができ、データに簡単にアクセス(検索)が可能な事」が必要なのでしょうね。
その意味では、私たちの長期保存メモリの研究は、デジタル時代の民主主義を成り立たせている根幹の部分を担うための、第一歩と言えるかもしれません(大袈裟ですが)。
記事を書いて下さった、朝日新聞の小堀記者には御礼申し上げます。却って私の方が勉強になりました。
(2018年4月30日Takeuchi Laboratoryより転載)