全国人民代表大会が3月5日、中国で始まる。年に一度開かれる中国の「最高国家権力機関」とされるが、一体何が行われるのか?何に注目すればいいのか?
大会の内容を簡単にまとめた上で、2019年の注目すべきポイントを専門家に聞いた。
■日本でいう国会 2018年は習近平の「皇帝化」話題に
全国人民代表大会、略して「全人代」。中国では「人大(レンダー)」と別の略称で呼ばれるこの大会は、日本でいう国会にあたるとされる。
中国の省(福建省や広東省など)や直轄市(北京市や上海市)、それに少数民族や人民解放軍などから代表者が選出される。代表は選挙で決まるが、事実上共産党が推薦した候補が選ばれる。
政府の予算を審査するほか、法律の改正も議論の対象になる。会の初日には、李克強首相が前の年を総括し、政治や経済の次の1年の方針を示す「政府活動報告」を朗読する。
2018年の全人代は国内外で大きく報道された。憲法が改正され、これまで連続して2期(10年)までとされてきた国家主席の任期制限が撤廃されたからだ。
これにより中国のリーダー・習近平国家首席が際限なくトップに留まり続けることが可能になった。
さらに憲法にも「習近平新時代の中国の特色ある社会主義を確立する」という文言を入れ込み、独裁色を強めた。
ちなみに、この時期中国では「終身制」「皇帝」など独裁を匂わせる言葉は検索できなくなった。
■中国経済は崩壊するの?全人代のここに注目
3月5日から中旬まで続く全人代。メディアの注目は、初日に李克強首相が発表する経済成長率の目標に集まる。
2018年の通年の成長率は6.6%で、朝日新聞によると28年ぶりの低水準だった。
アメリカと中国が互いに輸出するものに高い税金を掛け合う「貿易戦争」の影響もあり、複数のメディアが、李首相が発表する成長率の目標は6%〜6.5%程度に落ち込むとみている。
この数字を見ていると、かつては10%以上と、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けてきた中国経済が「減速」しているように見えなくもない。しかし中国・北京にある対外経済貿易大学の西村友作教授は「中国経済が減速したと見るのは間違いだ」と指摘する。
西村教授も、2019年の経済成長目標は鈍化すると予想している。しかし「中国のGDP(国内で生まれたモノやサービスの合計)は年々規模が増えている。母数が大きくなれば成長率が下がって見えるのは当たり前のことだ」と話す。
中国政府は2010年に「今後10年間(=2020年まで)で国民の所得を倍増させる」と宣言している。
西村教授は成長率が6%台前半に落ち込んでもこの目標は達成できるとし、「6%台の目標設定は妥当だ。成長率は下がっているが全体の規模は拡大しているため、中国経済が『崩壊』することには繋がらない」と考えている。
中国経済の先行き不安を増長するのがアメリカとの貿易戦争だ。アメリカとは現在、関税引き上げをめぐり協議を続けているが、まとまらないままに全人代を迎える。
西村教授は「すでに国内の消費に影響は出ている」とし、全人代の注目ポイントについては「減税や投資など景気の下支え策がどの程度具現化するかが大事。どういった市場がどの程度、拡大しているかを見極めるべきだ」と、成長率の低下に惑わされず、冷静に市場を見極めるべきだと呼びかけている。