「令和ぱずる」を生んだのは、面白法人カヤックの自由な社風だった。

社内のプログラム勉強会の課題が、瞬く間にヒットゲームに。「元号を全部覚えていない」という元木駿さんが開発した経緯とは…
「令和ぱずる」を開発した元木駿さん(2019年6月20日撮影)
「令和ぱずる」を開発した元木駿さん(2019年6月20日撮影)
安藤健二

 「令和ぱずる」というスマホゲームをご存じだろうか。

 「令和」「平成」といった歴代の元号に使われた漢字が、ランダムに画面上部から落ちてくる。その漢字を組み合わせて元号を完成させると、漢字が消えるというパズルゲームだ。画面上まで漢字が積み重なるとゲームオーバーとなる。

「元号なんか全部覚えてないよ!」という人も多いと思うが、プレイしてみると不思議と長く遊ぶことができる。全く知らない元号が偶然そろい、勝手に消えていくからだ。元号マニアでなくてもハマってしまう不思議な魅力がある。

iPhoneやiPad用だが、無料配布ということもあり、密かなブームを呼んでいる。一体、どうしてこんなゲームを思いついたのか。作者にインタビューした。

■もともとのタイトルは「元号ぷよぷよ」

「令和ぱずる」の画面。「令」「和」は他の文字に比べて100倍、「平」「成」は10倍出やすいという。
「令和ぱずる」の画面。「令」「和」は他の文字に比べて100倍、「平」「成」は10倍出やすいという。
Huffpost Japan

JR横須賀線に乗って都心から約1時間ほど、JR鎌倉駅についた。観光スポットとして駅前は、着物姿の男女の姿を多く見かけた。小粋な店舗が建ち並ぶ「御成(おなり)通り」の一角に、その会社はあった。

毎月サイコロを振っ給料を決める「サイコロ給」などユニークな社内制度で知られるIT企業「面白法人カヤック」だ。「令和ぱずる」の作者、元木駿さんはこの会社のウェブエンジニアだった。

元木さんは、2015年にカヤックに入社。そのころ、個人的なプログラムの勉強のためにテトリスタイプのゲームを大量に作っていたという。3Dタイプの「TETRICUS」というのもあった。

元木さんは、社内の有志数人で実施しているプログラム勉強会に参加していた。そこの4月のお題が「新元号」だった。元木さんは以前の経験から「元号でテトリスを面白いのでは?」と思いついたという。

元木さんは、iOSのアプリ開発はほとんどなかったが、ゲームは数日で開発できた。テトリスのときのノウハウを生かしたのだという。

4月中旬の勉強会で発表したところ、評判が良かったので、正式にiOSのアプリとして公開することにした。

ちなみに勉強会の時点でのタイトルは「元号ぷよぷよ」だったが、さすがに既存のゲームの名前ではまずい……ということになり、「令和ぱずる」に改名してApp Storeに登録することにした。

■社内イベントで評判になってクチコミで拡散

面白法人カヤックの本社がある鎌倉市内の御成通り。多くの人で賑わっていた
面白法人カヤックの本社がある鎌倉市内の御成通り。多くの人で賑わっていた
安藤健二

10連休中の5月3日にアプリは登録されたが、最初は全く反響がなかった。約1カ月間は、ほぼ知人しかダウンロードしていなかったのが転機が訪れる。

会社内で毎月恒例で業務後に実施している「つくっていいとも」というイベントで、「令和ぱずる」を出したところ大評判となり、「発想が天才的すぎる」などと社員がこぞってSNSで称賛したことがクチコミを呼び、ダウンロード件数が飛躍的に増えたのだ。6月20日時点で1万回を超えたという。

カヤックでは約300人の社員のうち9割をクリエイターが占めていることもあり、仕事とは全く関係ない自分の趣味で、アプリなど作る社員が多い。“作ったものならなんでもいい”がコンセプトの「つくっていいとも」というイベントは、社員の課外発表の場として親しまれているのだという。

■元号マニアかと思いきや…

「楽しい職場で成長できている感じがする」と語る元木さん。最後、元号についてどう感じているか聞いたところ、意外な答えが返ってきた。

「そこまで思い入れはないですね。社内では新元号をめぐって対応が大変だったという人の声も聞きましたが、僕自身はそういう経験もなかったです。元号マニアというわけではないので、未だに元号を全部覚えていないんですよ」

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