令和元年となった5月1日。徳仁さまが新天皇に即位され、日本にとっても節目の1日だが、それを報じる新聞各紙も気合いを入れている。
朝日、毎日、読売、産経、日経の各新聞がどのように伝えたか、読み解きたい。
■朝日新聞「平和憲法もつ国民に作用」
朝日新聞は一面に福島申二・編集委員が文章を載せている。「令和」の出典と同じ万葉集から、言葉にゆたかな力が宿る国という意味の「言霊の幸(さきわ)う国」という一節を紹介している。
そして、天皇は政治的な機能を持たないことに触れたうえで、「上皇さまの、簡素に磨かれた平和へのたしかな言葉と、ご夫妻の祈りの姿が、平和憲法を持つ国民の意識の深い部分に作用してきたのは確かなことだろう」としている。
最後は、「新天皇ご夫妻には言葉の力を信じ、ご自分の言葉を大切にして語っていただきたいと願う。言葉が軽く浮遊し、饒舌がはびこる時代であればこそ」と結んだ。
また経済面では、「令和経済 期待と課題」と題し、令和の時代は、AIや自動運転の開発に期待が持てるとしている。
その一方で、国の借金が増え続けていることや、生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)が減少し続けることなどを課題として挙げている。
■毎日新聞 横顔を特集
毎日新聞は7ページにわたる特集を制作し、新天皇ご夫妻の横顔を中心にまとめている。このうち、新天皇陛下については、イギリスのパブで友人とお酒を楽しむオフショットや、南アルプスの北岳山頂に立つ写真などを掲載。
花火をするためろうそくに火を灯そうとしたところ「点火ではなく殿下ですね」と冗談を飛ばすなど、気さくな人柄がうかがえるエピソードも紹介している。
一方で、新陛下より若い皇位継承資格者が、秋篠宮さまと長男悠仁さまのみとなったことに触れ、女性天皇や女系天皇に関する議論が進んでいないことも指摘している。
■読売新聞 経済や安全保障を評価
読売新聞は一面に社説を大きく掲載し、平成の日本を振り返っている。
経済ついては、「経済大国の座を保持する『守成』の難しさに直面した」と評した一方で、完全失業率を最悪でも5%程度に留めたことや、家計の金融資産が30年前の倍となったことなどを挙げ、「特筆すべきは、厳しい局面でも混乱を抑えようとした努力」と好意的に紹介している。
安全保障は「防衛費の急増を招かずに自衛隊の能力も向上させた」と評価。中国や北朝鮮、それにロシアの名を挙げて「他の現実的な選択肢はありえなかった」と主張した。
■産経新聞 憲法改正を呼びかけ
産経新聞はロゴの横に据えられた「令和元年」の文字が目立つ。
一面には櫻井よしこ・国家基本問題研究所理事長が「令和に寄せて」と題して寄稿している。「令和」の課題に「聖徳太子が脱中華と大和の国造りを目指したように、日本の国柄を誇りをもって定着させること」と指摘した。
課題の「筆頭」として「日本の国柄とはおよそゆかりのない現行憲法の改正」を挙げ、改憲の必要性を改めて強調している。
2面では乾正人・論説委員長が少子高齢化や経済の衰退を「平成の敗北」とし、「真っ先に取り組まねばならないのは、新時代にふさわしい国家戦略の構築」と呼びかけている。
■日経新聞 経済成長へ提言
日経新聞は、井口哲也・編集局長が経済成長を取り戻すための提言をしている。
平成の日本は、モノづくりで追い上げる新興国に対し、賃金を抑えて競争力を保とうとしたため、経済が停滞し「貧者のサイクル」に陥ったと指摘。
日本はさらに、少子高齢化で労働力が不足するとみられているが、処方箋として、「自動化できる仕事は機械にまかせ、働き手はより付加価値の高い仕事に専念する。なにより人手不足の日本は大胆な自動化で世界最先端をいける立場にある」としている。
そのうえで、政府に対して、ただ賃上げを呼びかけるだけではなく、「企業が喜んで高給を払うようなデジタル時代の人材」が育つ土壌の整備をするように求めている。