赤ワインを飲むと頭痛がするのはなぜ?新研究で「犯人」が浮上

人によっては、少量のワインを飲んで数時間のうちに頭痛が起きることも。何が頭痛の原因になっているのでしょうか?

目を覚ますと頭がズキズキ…。アルコールが頭痛を引き起こすことはよく知られています。特に赤ワインは、飲んで数時間後に頭が痛くなる人もいます。

小さなグラスで飲んだだけなのになぜ……そんなワイン愛好者たちの長年疑問を解明する糸口が見つかったかも知れません。

学術誌『サイエンティフィック・リポート』に11月に掲載された研究で、頭痛の原因が、赤ワインに含まれている「ケルセチン」という物質である可能性が示されました。

ケルセチンはブドウに含まれる天然のフラボノイド(ポリフェノールの一種)です。

研究では、このケルセチンが体内のアルコール代謝を妨げ、吐き気や顔の赤み、頭痛などの不快な症状を引き起こす毒性物質アセトアルデヒドを体内に蓄積させる可能性があることがわかりました。

ケルセチンは健康に良い抗酸化物質ですが、アルコールと一緒に摂取することで、問題が発生すると研究者は指摘しています。

ケルセチンは、体内に入ると肝臓でケルセチン-3-グルクロニドと呼ばれる代謝物に変換されます。

この時にアルコールを摂取していると、ケルセチン・グルクロニドが体内のアセトアルデヒド濃度を上昇させる可能性があるというのです。

これまでの研究から、大量のアセトアルデヒドが、頭痛や顔の赤み、心拍数の増加、吐き気などと関連していることが明らかになっています。

研究者の一人でカリフォルニア大学デービス校ブドウ栽培・醸造学部のアンドリュー・ウォーターハウス名誉教授は「アセトアルデヒドには一定の毒性があり、顔の赤みや頭痛、その他の症状を引き起こします。それを考えれば、これは問題だと言えます」と述べています。

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過去の研究からは、生体アミンや亜硫酸塩、タンニンなどの化合物がワインによる頭痛を起こす原因になる可能性も示唆されてきました。

ただし、フラボノイドなどのフェノール系化合物を多く含む他の食品には、同様の作用はありません。

この矛盾から、科学者たちは頭痛の原因は、他にあるのではないかと考えてきました。

しかし今回の研究から、少なくとも赤ワインに関しては、ケルセチンが頭痛の犯人である可能性が示されました。

どんな人が「赤ワイン頭痛」になりやすい?避ける方法はある?

そうなると気になるのは、どんな人が頭痛を起こしやすいかという疑問です。

残念ながら、赤ワインで特定の人だけに頭痛が起きる理由はまだわかっておらず、ウォーターハウス氏は「答えを出すには時間がかかるでしょう」と述べています。

可能性としては、アセトアルデヒドに敏感な人や、ケルセチンの代謝方法が異なる人が頭痛になりやすいということも考えられます。

研究に携わったカリフォルニア大学サンフランシスコ校の神経学者モリス・レヴィン教授は「もともと片頭痛を起こしやすい人に、アセトアルデヒドの増加で頭痛が起きるという可能性も考えられます」と説明します。

フラボノイドの量は赤ワインの種類によって大きく異なり、主にブドウの栽培方法に左右されます。

ケルセチンの量はブドウが日光にさらされることで増加し、太陽の光を浴びたブドウは、日陰で栽培されたブドウに比べて、ケルセチンの量が4〜8倍も多いことが、過去のデータから示されています。

そのため、例えばナパ・ヴァレーで栽培されたブドウを使ったカベルネ・ソーヴィニヨンは、ケルセチンの濃度がかなり高くなる傾向があります。

日照量の他にも、熟成や発酵の過程がケルセチン含有量に影響することもあります。

ウォーターハウス氏によれば、一般的にブドウが日光にさらされる量が少ない安価な赤ワインほど、ケルセチンの量が少ない傾向にあります。

同氏は「読者からかなりのメールをもらっているのですが、そのうちの一人は、安い赤ワインは飲めるのですが、良いワインは悲しいことに料理用になってしまうと教えてくれました」と述べています。

レヴィン氏は「頭痛を引き起こさない赤ワインを探すにはさまざまな物を試す必要がある」としつつも「自らの経験からはピノ・ノワールやシラーの方が頭が痛くなりにくいと感じている」と話します。

また、アルコール度数も頭痛のリスクを高める可能性があるため、頭が痛くなりやすい人は、アルコール度数の高いカベルネ・ソーヴィニヨンなどのワインは避けた方がいいともいいます。

ウォーターハウス氏のお勧めは、ケルセチン含有量が少ない白ワインを選ぶことです。

赤ワインも、種類によってケルセチンの含有量は大きく異なりますが、残念ながら、ボトルにケルセチン量は表示されていません。今できる最善策は、さまざまな種類の赤ワインに自分の体がどう反応するかを観察することかもしれません。

他にも、安いシラーを選べば、頭だけではなくお財布にも優しい選択肢になりそうです。

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。