リクルートホールディングスは、2019年4月以降の入社予定者を対象とした新卒採用を国内グループ企業9社で一本化し、365日いつでも応募できる通年エントリー・選考などを始める。
留学や起業など学業以外にも学生の選択肢が広がってきており、新卒一括採用など従来の採用基準・スケジュールでは対象とならない人材が増えている。応募できる時期や年齢を広げることで、そうした人材の確保につなげたい考えだ。
採用の一本化に伴い、リクルートホールディングスの「30歳まで応募可能な新卒採用」や、リクルートライフスタイルの「365日通年エントリー」といった取り組みを9社全体で導入する。
対象になるのは、以下の9社。
・リクルートホールディングス
・リクルートキャリア
・リクルートジョブズ
・リクルート住まいカンパニー
・リクルートマーケティングパートナーズ
・リクルートライフスタイル
・リクルートアドミニストレーション
・リクルートコミュニケーションズ
・リクルートテクノロジーズ
実際にどう変わるのか。
1、365日、いつでもエントリーを受け付け
この取り組みは、リクルートライフスタイルが2017年の採用から実施している。今までとどう変わるのかは、次の通り。
・これまで(※2016年のリクルートライフスタイルの例)
2016年3月 エントリー開始
5月 エントリー締め切り
6月 選考開始
2017年4月 入社
・これから
2018年3月 エントリー開始
6月 選考開始
2019年2月末 エントリー締め切り
4月 入社(間に合わない場合は、4月以降で相談する)
エントリー、選考の開始時期は変わらないが、1年中いつでもエントリーできるようになり、選考もエントリー時期に応じて随時行われる。また、締め切り間際の2月にエントリーし、選考スケジュールの都合で4月入社に間に合わない場合は、入社時期は個別に対応する。
2、30歳まで新卒採用。社会人経験者もOK。
この取り組みは、リクルートホールディングスが2015年に導入。それまで年齢を明記せず、「大卒・大学院卒 見込」などとしていた新卒採用の応募資格に、30歳までを対象とすると明記。既卒者や社会人経験がある人材も、新卒枠として応募できるようにした。
リクルートホールディングスの広報担当者は、新しい採用基準を導入した理由について「留学や起業など多様な経験をした人材を幅広く受け入れるため、採用の自由度や幅を広げる必要があると考えました」と説明している。
通年エントリーの会社は増加。新卒一括採用にも変化?
日本では従来の新卒一括採用が根強いが、リクルート以外にも通年エントリー・選考を導入する企業が増えており、採用方法に変化の兆しが現れているようだ。
リクルートキャリアが運営する「就職みらい研究所」は毎年、従業員が5人以上いる企業を対象に新卒採用について調査し、「就職白書」にまとめている。2018年は1192社から回答があり、365日の通年採用を導入する企業が増えていると発表した。
調査は、2018−19年の新卒採用でどのような採用方法・形態を実施するのかを尋ねた(複数回答あり)。「365日の通年採用」と回答したのは26.3%(約313社)で、トップの「職種別採用」(63.3%)に次いで2番目に多かった。
前年2017年と比べて7.2%増え、回答項目の中で最大の増加幅だった。
従業員の規模別にみると、割合が高い順に300人未満(39.1%)、5000人以上(28.1%)、300〜999人(23.2%)、1000〜4999人(17.8%)だった。
岡崎仁美・研究所代表は記者会見で、企業が通年採用を導入する理由について「グローバル化を踏まえて、海外留学生などを意識して『いつでも受け付けている』とアピールする狙いがある」と説明。
ただ、人数の少ない企業で特に多いのは、「(大企業のように)人材が集まらない」という苦労もあると話す。
一方、「365日の通年入社」を予定している企業は、300人未満の企業でも1割超、5000人以上の大企業ではわずか3.3%にとどまっており、「4月に新入社員がくるという価値観がまだまだ根強いです」(岡崎代表)。
新卒一括採用は、今後変わっていく可能性はあるのか。岡崎代表は、ハフポスト日本版の取材に対して次のように答えた。
「廃止は難しいと思います。ただ、4月入社をメーンに別の時期や365日通年の入社も導入していくといったように、新卒一括採用が相対的に弱まっていくことはあると思います」
その上で、これからどんどん人口が減っていくことに伴い、企業の採用方法に変化が必要になってくるとも指摘する。
「2018年問題(※1)で、大学の卒業人数が減っていきます。社員数の大きい大手は企業維持すら難しくなってくると思います。日本人以外にも目を向けるなど、採用対象が多様化していくでしょう」
(※1 日本の18歳の人口が減少に伴い、大学進学者が減っていくこと。18歳の人口は、1992年の205万人をピークに2009年には121万人へと激減。それ以降はほぼ横ばいだったが、2018年から再び減少に転じる。入学者獲得のため大学間の競争が激しくなり、潰れる大学も出てくると懸念されている。)