「私にとって先生は、お医者さんではなくてリハビリをしてくれている唐沢先生なのよ」
この言葉は、私が以前回復期と言うリハビリテーション(以下リハビリ)専門の病院に勤務していた時に、担当していた患者様に言われた言葉です。
リハビリをする為に入院されてきている患者様たちにとり、毎日顔を合わせ、話しをし、訓練を行う我々セラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)は、もはや先生として認識されます。
主に整形外科疾患と脳血管疾患を対象にリハビリを行う回復期では非常に多くの事を学ぶことが出来ました。
しかし、入院していられる期間が定められている中では、特に脳血管疾患患者に対しては十分なリハビリを提供しきれず、介護分野へと移行せざるを得ない方を多くこの目で見てきました。
「退院した後は、リハビリは出来ないの?」
この声は、今でも私の心に深く刻まれています。
その様な中、現在勤務している脳梗塞リハビリセンターでは、自費と言う全く新しい選択肢のリハビリを提供できています。
回復期を退院した後でも、高頻度で長時間のリハビリを提供できる事に、セラピストとしては多くの可能性を感じることが出来る、まさしく「画期的」と言える施設です。
しかし、回復期において、発症から1ヵ月から介入を開始する脳血管疾患患者は、疾病自体の回復や脳機能の自己治癒能力による回復が著明に見られるため、基本的には著明な改善が見られることが多いです。
ですが、一般的にこれらによる改善は6カ月間で急速に減弱していくと言われており、回復期以降から関わり始める我々セラピストは非常に難渋する事が考えられました。
私が脳梗塞リハビリセンターで勤務を始めてから1年半以上が経過していますが、これらの臨床の中で述べ200人を超える利用者様と関わる事が出来ました。
その中でも、
「病院でもう治らないと言われましたが、そんな私でも良くなりますか」
と言う言葉を非常に多く耳にします。人は生涯学習をします。それは、脳卒中を患ったとしても同様です。
<今よりもっと楽に生活が出来るようにするためにはどうすれば良いのか。>
この問題に対して、手を取り立ち向かう事が出来るのは我々セラピストしかいません。
その為にも、私たちセラピストは患者様・利用者様の身体・脳に何が生じているのか、なぜこのように動いてしまうのかを、可能な限り正確に捉えていく必要があると思います。
「セラピストは、臨床を通して成長していく人間だ」
これは、私が先日9月1日に発売しました「臨床は、とまらない」の帯に書かれている言葉です。研修会に参加し、本を読み学ぶのは、少しでも患者様・利用者様を良くしたいからです。これらを臨床の中に落とし込むことが、我々セラピストの役割の一つだと考えています。
我々セラピストが臨床の中で何を考え、今持っている力でどうすれば目の前の人を理解することが出来るのかを赤裸々に書いてある、他にはない書籍となっています。
最後に、私が担当した患者様に言われた言葉を紹介して終わりにしたいと思います。
「私が良くなった様に、先生はもっと多くの患者さんを治してあげてください。先生なら出来ると思います。」
【著書】
唐沢彰太 著
協同医書出版社
【脳梗塞リハビリセンターHP】
(2016年10月6日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)