アメリカのR&B歌手のR.ケリー被告に対し、ニューヨーク・ブルックリン連邦地裁の陪審団は9月27日、性的搾取や組織犯罪などの罪に問われていた9件すべての罪状で有罪評決を言い渡した。
9件の罪状には、1件の組織犯罪と8件のマン法(違法な性的行為を目的として、女性や少女を州間で移動させることを禁じる法律)違反が含まれていた。
有罪評決が言い渡された時、紺色のスーツとネクタイ姿のケリー被告はほとんど感情を示さず、頭を下げ続けていた。
ようやく恐怖を感じずに人生を送れるようになる
評決を、被害者や被害者側の弁護士、検察は歓迎した。
評決後の記者会見で、ジャクリン・カスリス連邦検事は「評決により、R.ケリーには、自分の欲望のために名声と財産を利用し、若者や弱い立場の人々、声を上げられない人たちを食い物にする犯罪者の烙印が永遠に押されることになった」と語った。
また、裁判の中心となった6人の被害者のうち、3人の代理人を務めたグロリア・オールレッド弁護士は「ケリー氏はかつて、私の依頼人の1人に自分を“天才”だと言いましたが、今や有罪評決を受けた犯罪者です」「ケリー氏は自分は罪に問われることはないだろうと思っていたのでしょうが、そうなりませんでした。犠牲者全員を操れるという考えが間違っていたからです」と述べた。
さらに被害者の一人、ソニアさんは「陪審員が私たちの話に耳を傾けてくれたことに感謝します」「ロバート・ケリーへの恐れや、脅迫を受けていたために私は隠れて生きてきましたが、ようやく恐怖を感じずに人生を送れるようになります」とコメントした。
一方、ケリー被告の弁護団は「告発者たちは、ケリー被告からお金を得るために、虚偽の証言をしている」と何度も主張した。
また、デブロー・カニック弁護士は 「評決に失望しています」と述べ、上訴を検討すると回答した。
告発者たちが証言台で語ったこと
裁判は8月中旬に始まり、50人が証言台に立った。 そのうち、検察側に出廷を求められたのは45人で、被告側は5人だった。
45人のうち11人が原告で、そのうち6人はケリー被告が最初に虐待された時に未成年だったと証言した。
被告側が出廷を求めた証人は、元警備員やケリー被告の会計士、そしてケリー被告と10年以上一緒に働いてきたアーティストらだった。
裁判で最も注目されたのは、匿名希望の8人の女性と2人の男性による証言だ。
ほぼ全員が、ケリー被告からの虐待や、管理されて恐怖を感じていたことについて述べた。
告発によると、ケリー被告は自分を「パパ」と呼ぶよう指示するなど厳格な規則を設け、殴打したり、服や食べ物、行き先を管理されていた。1人は、ケリー被告に自分の排泄物を顔と口になすりつけることを強要され、その様子を録画されたと語った。別の被害者は、「彼はすぐに私に恐怖を抱かせることができました」と振り返った。
裁判の中心になった6人の女性の被害者は、ステファニー、ソニア、エルホンダ、ジェーン、フェイス、アリーヤという名前で呼ばれた。最初の5人は、ケリー被告からの身体的、性的、感情的虐待について証言したが、アリーヤは2001年に飛行機の墜落事故で亡くなったために証言はなかった。
また、2人の男性被害者の1人でルイと呼ばれた告発者は、17歳のときに性的に虐待されたと証言し、もう1人のアレックスは、20歳の時にケリー被告の指示でケリー被告や他の人と性的な関係を持たされたと述べた。
量刑の言い渡しは2022年5月4日に言い渡される予定だ。
また、ケリー被告は、ニューヨーク州の他にイリノイ州やミシガン州の裁判所でも、訴追されている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。