小山田圭吾さんが「いじめ加害者」だったと告白した約26年前の記事に関して、若者向けカルチャー雑誌『クイック・ジャパン』の出版元である太田出版が7月19日に謝罪声明を公式サイトで発表した。
小山田さんは東京オリンピック開会式で音楽を担当する予定だったが、14日の発表直後から、学生時代に「いじめ加害者」だったことを告白する記事の内容が拡散。「オリンピックにふさわしくない人選」と批判が集まっていた。
『クイック・ジャパン』同様に、小山田さんがいじめに参加していたことを語るた記事を掲載した『ロッキング・オン・ジャパン』の編集長は18日に謝罪。小山田さんも19日、組織委員会に対して辞任の申し出をしたことを明らかにしていた。
■太田出版社長「差別を助長する不適切なものであることは間違いない」
問題のインタビュー記事は、1995年8月発行の『クイック・ジャパン』第3号の「いじめ紀行」という連載コーナーに掲載された。その中で小山田さんは、小中学生のときに障害を持つ児童らへのいじめに参加していたことを告白していた。
今回の太田出版の謝罪声明は、岡聡社長名義によるもので、まず「表現方法、記事の影響についての思慮そして配慮が足らないままに世に出たことにより被害者の方をはじめ多くの方を傷つけたことを深くお詫びします」と謝罪した。
岡社長は、当時のスタッフに対し、事実や経緯を確認をした上で、記事の再検討をしたと明らかにした。その結果、小山田さんへのインタビュー記事は「被害者の方を傷つけるだけでなく差別を助長する不適切なものであることは間違いないと判断しました」と説明した。
問題の第3号を2012年に、内容を再検討することなく復刊したことについても「出版社としてその姿勢が問われるもの」と反省の弁を綴っている。
岡社長の声明全文は以下の通り。
■『Quick Japan 第3号』掲載の小山田圭吾氏記事についてのお詫び
1995年刊『Quick Japan 第3号』は「いじめ紀行」というシリーズの第一弾として小山田圭吾氏へのインタビューをもとにした記事を掲載しました。この記事が、表現方法、記事の影響についての思慮そして配慮が足らないままに世に出たことにより被害者の方をはじめ多くの方を傷つけたことを深くお詫びします。
「いじめ紀行」は、取材者自身がいじめられた体験があることから、いじめられた側だけでなくいじめた側からも話をきくという趣旨で「いじめた側といじめられた側の対談」として当初発案されたものでした。この第一回で小山田圭吾氏は自身の体験として障がいを持つ方へのいじめを告白しています。
現在、この小山田圭吾氏の一連のいじめ体験についての告白が大きな批判を受けています。当時のスタッフに事実・経緯確認を行い、記事を再検討した結果、この記事が被害者の方を傷つけるだけでなく差別を助長する不適切なものであることは間違いないと判断しました。この検討は出版後26年を経てのものであり、この間、2012年にはいくつかの号が復刊される機会があり、この第3号も100部の復刊を行っています。最初の出版段階での判断のみならず、その後再検討のないまま時が過ぎたことも、出版社としてその姿勢が問われるものであると考えます。
今回の反省は、継続的に今後の出版活動を顧みる機会とするべきと考えます。『Quick Japan』のみならず、弊社の出版活動全体を改めて再検討し、その都度振り返ることにより同じことを繰り返すことがないように努力してまいります。
2021年7月19日
太田出版社長・岡 聡