アメリカ・テネシー州メンフィスで、29歳の黒人男性タイリー・ニコルズさんが警察官に暴行され死亡した事件で、警察は1月27日にボディカメラの映像を公開した。
映像には5人の警察官がニコルズさんを殴打する様子が映っており、公開後にアメリカ各地に抗議行動が広がった。
ボディカメラに映っていた警察官の暴行
ニコルズさんは1月7日、危険運転の疑いで警察に運転していた車を停車させられた。
27日には警察官が身につけているボディカメラの映像が公開された。その中には、警察官がニコルズさんを車からひきずり下ろし、暴力的に地面に押さえつける場面が映っていた。
ニコルズさんは「私は何もしていない」「家に帰ろうとしただけだ」と訴えている。
別の映像では、警察官たちは地面に倒れているニコルズさんに催涙スプレーをかけ、蹴ったり殴ったりを繰り返しており、殴打されたニコルズさんは複数回「お母さん」と叫んでいる。
家族によると、病院に運ばれたニコルズさんの顔は本人だと認識できない状態になっており、10日に心臓発作と腎不全で病院で死亡した。
広がる抗議の声
ボディカメラ映像が公開された後、CNNによるとニューヨーク市、アトランタ、ボストン、ボルチモア、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ポートランドなどアメリカ各地でデモが広がり、大勢の人々が警察による暴力に抗議した。
ニューヨーク・タイムズスクエアで27日夜に行われた大規模な抗議活動では、集まった人々で交通が麻痺した。
また、ボストンではデモ参加者が横断幕を掲げて、「この人種差別的なシステムは崩壊しなければならない」と声を上げた。
SNSに投稿された動画では、ほとんどの抗議活動が平和的に行われている。しかしNBCによると、ニューヨークでは警察の車両に対する破壊行為で3人が逮捕された。
ジョー・バイデン大統領は26日に発表された声明で「怒りは理解できます。しかし暴力は決して受け入れられません。暴力は破壊的で違法であり、正義を求める平和的な抗議行動にふさわしくありません」と述べ、平和的な抗議を呼びかけた。
ニコルズさんの母親ローヴァン・ウェルスさんも、平和的なデモを呼びかけている。
ウェルスさんは27日に「タイリー・ニコルズ記念基金」として クラウドファンディングを立ち上げた。その中で「私たちの街に火をつけ、道路を破壊したくはありません。それは息子が支持するものではありません」とつづっている。
クラウドファンディングには2日で約116万ドル(1億5000万円)以上が集まっている。寄付金は、今後事件の真相解明を求めるウェルスさん夫婦の支援や、スケートボードを愛したニコルズさんを追悼するためのスケートボード場を作るために充てられるという。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。