こんにちは、砂流です。第6回目のテーマは「僕が大切にしているゲリラPRの心得 part1.5」。前回に引き続き、「世の中の流れにのっかる&メディアの持つ特性にのっかる」について、事例を通してご紹介します。
事例としてご紹介するのは「ザ・エンタのニコニコカーペット」というニコニコ生放送でオンエアーした番組。賞金100万円をかけたお笑い番組をエイサープレゼンツでお届けしました。この事例はゲリラPRとしては珍しく予算を使ったPRです。
ちょっと長くなってしまったのでざっくり要点をまとめると・・・
・TVで話題になったものが→ネットで話題になり→企業がのっかる 型
・ティザーサイト公開から本番まで毎週リリースを送り、オーディションや本番を取材してもらうことで露出を獲得
・お笑いとニコニコ動画というメディアの特性にのっかった番組制作で高視聴数を獲得
・いま見ても番組は面白いし、優勝したアメリカザリガニは面白い
この事例で僕がやったことと言えば「社内に企画を通して色んなことにNoと言わせない」のみ。この企画は師匠である中川淳一郎さんと、博報堂のコピーライター タカハシマコトさんの発案で実施したものです。当時の僕はこの企画を通してPRやネットニュースについて色々と知ることができ、PRと仕事観の大きな転機になりました。僕の転機になった仕事が皆様のご参考になれば幸いです。
■お笑いのネタ見せ番組の終焉
突然ですが、皆さんは「ザ・イロモネア」「エンタの神様」「爆笑 レッドカーペット」など、ゴールデン帯でやっていた有名なお笑い番組がいつ終了したかを覚えていますか?
正解は2010年です。「ザ・イロモネア」と「エンタの神様」は3月で番組が終了。「レッドカーペット」は8月で終了しました。この3番組の終了で、ゴールデン帯のネタ見せ番組が消失!お笑い業界では「エンタ難民芸人」「レッドカーペット難民」が続出するんじゃないかと囁かれ業界を揺るがす事件となったそうです。
そのことをR25が取り上げると、Yahoo!トピックスまで駆け上がり大きなニュースになりました。
■世間の話題にのっかった後追い企画
ザ・エンタのニコニコカーペットは、このニュースに"のっかった"後追い企画です。
8月に終了したレッドカーペットを後追いする形で、
「テレビで観られないならネットで観よう!ネットで観るのならエイサーのPCで観よう!」
をコンセプトに番組をニコニコ生放送で11月にオンエアーしました。
企画の進行は以下の流れでしました。
"8月上旬に番組終了→8月中旬に企画をもらって→9月からとりかかり→10月初旬にティザーサイトオープン→11月に本番→(エイサーの企画とは関係ないですが)M-1のラスト開催"
世の中がお笑い業界に注目していたこともあり、結果的にこの番組は、通常のニコニコ動画企業提供番組の2.5倍の総視聴者数である4万7507視聴を獲得。コメントは20倍の19万3543コメントを獲得して番組は大成功(2010年当時のデータ)。PRも今までエイサーが露出したことのないネットニュースで露出することができました。また、2010年がM-1のラスト開催だったこともあり、12月にM-1がニュースになると関連ニュースで引っ張られて、再度ニュースが読まれました。
■なんでエイサーがネットでお笑い番組?
これには2つの理由があります。
1.ネットブック(ミニパソコン)の後、エイサーは暫く話題になる製品がなく、世の中から忘れ去られそうだったのでPCが軸でないもので話題になるPRが必要だった。
2.ニコニコ動画は動画にコメントを入れる文化があり、コメントはPCで入れることが多く親和性が高かった。また、ニコニコ動画を見ている10代・20代はエイサーがアプローチしていきたい層だった。
■露出獲得のためにしたこと
この企画は認知と露出を獲得することが目的だったので露出を獲得するために以下のことをしています。
1.ティザーサイト立ち上げから本番まで毎週プレスリリースを配信
「ティザーサイト公開&オーディション開催→出場芸人発表→敗者復活戦開催→敗者復活を勝ち上がった芸人発表→結果発表→当日の動画追加案内」
合計6回
2.オーディションの様子を取材に来てもらい記事にしてもらう
NEWSポストセブン 、R25 に取材にきてもらいました。
3.当日も取材に来てもらい記事にしてもらう
こちらは、NEWSポストセブン、R25 以外にも、ロケットニュース、お笑いナタリー、Web 1週間などのネットニュースに取材に来てもらい記事にしていただきました。
■番組制作で意識したこと
世の中が注目しているニュースの後追いのため元々ニュースになりやすい要素はありましたが、よりメディアや世間に注目してもらうために「お笑い芸人救済企画」というメッセージを発信しました。また、オーディションをする上で、ネットらしく以下の様な案内をお笑いの事務所に送りました。
「『テレビの放送コード』よりも毒のあるネタも歓迎します。『ネットで観るお笑い』はテレビとは一線を画す形にしたいと考えております」
この案内のおかげもあって、オーディションには120組の芸人さんから応募がありました。オーディションは下ネタ、時事問題などなんでもありで(本戦もですが)、テレビではとてもできないネタで勝負を挑まれた芸人さんも多かったです。改めて振り返ると、「エイサー、よくこれオッケーしたな」と感心します・・・。
予選の様子はコチラからご覧いただけます。
内容に過激なものもありますのでご注意ください。
番組の制作に関しては、ニコニコ動画を運営しているドワンゴさんのアドバイスを参考に、とにかく番組が面白くなることに全力を注ぎ、企業色を出さないように気をつけました。エイサーが番組内で出てくるのは、タイトルにある「エイサープレゼンツ」の看板と途中で流れるCMのみ。また、見てくれている視聴者に前のめりで番組に関わってもらうために司会にはコメントを積極的に拾ってもらい、視聴者にも採点を委ねました。この決断も、テレビとは一線を画すネットだからできるお笑いに一役買ったと思います。
余談ですが、ネットでは下ネタとか際どいネタがウケるかなとよんでいたのですが、蓋をあけてみると下ネタには厳しい声があがり、評価されたのは技術力がある漫才でした。
■番組内でのエイサーの露出
エイサーは、ニコニコ生放送ではじめて企業CMを流しました。なんだCMかと落胆しないでください。エイサーが流したのは、お笑い番組とニコニコ生放送に合わせたダジェレで作ったツッコミどころ満載のCMです。
例えば、こんなものを流しました。
軍隊のイエッサーの掛け声に合わせて「Acer」ロゴが出るCMと、用紙サイズのA3がエイサーに似ているということでA3とエイサーが交互にコピーされてくるCM。いずれもくだらないダジェレですが、お笑い番組とツッコミ文化があるニコニコではウケがよく、CMが一番面白いという声が出るくらい好評でした。これは、お笑いとニコニコというメディアの特性にのっかった結果です。「エイサー、よくこれオッケーしたな」と感心します・・・。
■視聴者の反応
テレビでなくなったものをネットで復活させたので、視聴者の反応はよく満足度の高い番組になりました。また、番組の終わりに「エイサーありがとう」という番組を作ったことに対してのお礼のコメントが溢れ、エイサーとしては認知がとれただけでなく好感度も上がりました。この2年後「ニコニコ超会議2」でエイサーは超生放送ブースに協賛するのですが、この番組について覚えてくれていた方からコメントもいただいています。
■まとめ
ちょっと長くなってしまったので、もう一度さらっと要点をまとめます。
・TVで話題になったものが→ネットで話題になり→企業がのっかる 型
・ティザーサイト公開から本番まで毎週リリースを送り、オーディションや本番を取材してもらうことで露出を獲得
・お笑いとニコニコ動画というメディアの特性にのっかった番組制作で高視聴数を獲得
TV番組をネット復活させるに注目してしまうとなかなかマネできない形ですが、「既に世の中で話題になっていることにのっかるので、どういうところで話題になりそうか予測をしながら企画を立てる」ことや「メディアの特性に合わせて作るものを変える」は流用できると思います。僕はこの企画では、社内に通すことしかできていませんがそういった事を学びました。
いかがだったでしょうか?次回は、新しいゲリラPRの心得をご紹介したいと思います。お付き合いよろしくお願いします。
ちなみに、CMは「イエッサー篇」「A3篇」「○○サー篇」以外にもう1本ありましたがお蔵入りになりました。それが、「沖縄エイサー篇」です。エイサーでは、沖縄エイサーのネタはタブーという暗黙の了解であって、下ネタや時事問題を社内に通せてもこれだけは社内というか社長に通すことができませんでした・・・。Acerのロゴをだしながら「イーヤーサーサー」と言えなかったことが今でも悔やまれます。。。