当研究所は、都道府県や、市町村が取り組んでいる政策などの中から、先進的なものや、全国へ広がりを見せているものを選んで、地方自治体情報誌(名称:つな研ナビ)というカタチにまとめ、月に1回発行しています。
北海道から沖縄まで、日本全国の地方議員や、自治体関係者など、1千人を超える方々に、利用していただいてます。
全国各地の自治体では、いろんな取り組みが行われています。
中規模レベルの都道府県で、一つの自治体が行っている事業数は、3千数百くらいでしょうか。
それぞれの地域に特色があるように、自治体の政策などにも、けっこう、個性や、特色があるものです。
ところで、ネットの中にはたくさんの情報が転がっています。
自治体の政策関連のモノでも、調べる気になってちょっとググれば、情報の山に、簡単にたどり着けます。
でも、「本当に自分が必要なモノはどれなのか」、「見つけたモノにどれくらいの価値があるのか」、「鮮度や、広がり具合はどうなのか」とかいうことまで、自分ひとりで調べるのは、簡単ではありません。しかも、短い時間では‥。
例えば、どこかの自治体が、新しい政策を始めたとします。
政策が、他の自治体に広がっていく、一般的なパターンは、「その政策の評価がある程度定まる(効果が出ている、評判に上っているなど)」→「それを他の自治体の職員などが認識する」→「その政策の内容や効果を、自分の自治体内で説明し、必要性についてコンセンサスを得る」→「最終的に首長が納得したらゴーサインを出す」→「予算化に向けて、細かい作業を進めていく」→「議会に提案し、議決をもらう」という感じで、時間がかかります。
補足ですが、企画した政策の予算規模が大きかったり、住民への影響度合いや、受益の範囲が広いものほど、議会への説明、関係者への根回しなど、実際に事業が行われるまでには、さらに時間がかかることが多いものです。
ところで地方議員が、その地域の独自の課題や、自分が関心がある分野などの、知識を深めたり、専門性を高めていくことは、とても大事なことだと思います。
理想としては、地方行政が関わるすべての分野について、常に、新しい情報を踏まえながら、状況や、課題を把握して、それを理解しておかなければなりません。
でも、現実は、それはとても無理なこと。
首長でも、職員でも、すべての分野に精通している。なんてことはあり得ないです。
行財政、防災、安心、商工、観光、農林水産、医療、衛生、福祉、子育て、環境、交通、文化・芸術、土木、防犯、などなど。
挙げればきりがないくいらい、行政の守備範囲は広く、その中の、事業ひとつひとつが、しくみも違うし、場合によっては、法律や、国の制度などが、絡んできますから。
まじめに政策提案しようした場合、それが議員であれ、首長であれ、自治体職員であれ、誰であっても、政策の「内容」はもちろんのこと、「背景」「取り巻く環境」「国や民間との役割分担」「財源」などについて理解をした上で、実現に向けて、議論をしていくことが必要です。
そして、事業化にあたっては、「自分の自治体で、似たような事業はやってないのか」とか「よその自治体の状況は? 効果は?」みたいなことが議論になり、挙げ句の果てには、他の事業と比べて、「予算のボリュームが大きいか小さいか」などといったことも、判断材料になったりするものです。
一方で、地方議員の「議会質問」は、質問した時の、執行部の答弁の善し悪しとは別に、首長など、行政の執行部側から見ると、非常に大きな意味や、役割を担っています。
一つの質問が出ると、事前に、執行部の中で、答弁のための勉強や議論が行われますし、
議場で、首長始め執行部が、その見解を述べることには、住民に対し少なからず責任が発生するからです。いずれにしても、いい加減な答弁はできません。
したがって、議会質問は、まさに、地域の課題を解決していくための、政策提案と、その実行のための、最大の武器とも言えるでしょう。
"つな研ナビ"は、地方議員が、この武器を、スピーディかつ有効に使うための、サポート役のようなものとして、活用していただいています。
発刊から、約1年4ヶ月が経ち、議員の方々から、「自分の提案した事業が予算化されて良かった。」「議会の中の勉強会や、職員との意見交換などで活用している。」といった声が届くたびに、研究所一同で、「やった!」とか、「一歩前進!」と言いながら、喜んで励みにしています。
なお、"つな研ナビ"で紹介する際には、「国の交付金事業や特区など、国の意向に大きく左右されるものでない」、「実施主体は、都道府県や市町村など自治体」、「先進的な取組みであり、今後、全国各地で広がる可能性がある」ものを選び、掲載しています。
と、いうことで。
今回、昨年度取り上げた、先進的な政策や取り組みを行っている都道府県を、集計してみました。
そして、取り上げた事例数が多い自治体は、少ない自治体と比べ、他の自治体への影響度が少なからず大きいのでは、という判断のもと、甚だ勝手ですが、自治体『政策伝播力』と名付けることにしました。
47の都道府県に順番を付けたり、格付けをしたりすることは、無意味だと思うので、最も、事例数が多かった都道府県のみを、公表させていただきます。
"平成25年度の、『政策伝播力』ナンバーワンは、「静岡県」でした。"
結果については、さまざまなご意見もあるかと思いますが、自治体間で、非常にバラツキがあったことに、とても驚いています。
この差は、県民性なのか。はたまた‥。