「クリスマスの国」のスポーツ事情

クリスマスまであと1日。カトリック教会の「総本山」であるバチカンにとっては新しい教皇の選出後初めて迎えるクリスマスでもあり、25日にはアルゼンチン出身の教皇フランシスコが世界中のカトリック教徒に向けてウルビ・エト・オルビと呼ばれる祝福の言葉を発します。

クリスマスまであと1日。カトリック教会の「総本山」であるバチカンにとっては新しい教皇の選出後初めて迎えるクリスマスでもあり、25日にはアルゼンチン出身の教皇フランシスコが世界中のカトリック教徒に向けてウルビ・エト・オルビと呼ばれる祝福の言葉を発します。

私は6月にバチカンに特派員として勤務する友人を訪ね、その際にバチカン内部を案内してもらったのですが、新体制になったローマ教皇庁がどのような改革を行うのかを皆が注視する姿が印象的でした。財務改革や開かれた教皇庁の実現といった大きな課題もあり、これらについてもいずれ書きたいと思っていますが、今回は本腰を入れ始めたスポーツ改革についてご紹介したいと思います。

バチカンではヨハネ・パウロ2世が教皇だった2000年、「スポーツを通じてキリスト教コミュニティに活力を授ける」という目的でスポーツ省が設立されたのですが、その中心は現在に至るまでサッカーです。そんな中、バチカンは10月に公式クリケットチームの立ち上げを発表しました。イングランドで産声を上げたクリケットですが、インドやパキスタン、オーストラリアに南アフリカといった国々でも人気があり、競技人口ではサッカーに次いで世界第2位というデータも。

クリケットは大英帝国の繁栄と共に世界中でプレーされるようになるわけですが、クリケットが誕生したイングランドでは16世紀にバチカンを統治するローマ教皇庁から袂を分かつ形でイングランド国教会を誕生させた歴史があります。報道をまとめると、クリケット人気の高い地域出身の聖職者や神学生からのリクエストが多かったことや、クリケットを停滞が続くエキュメニズム運動(超教派でキリスト教の結束を目指す運動)における起爆剤の1つとして利用したいというローマ教皇庁の思惑もあるようです。

クリケットチームの誕生はある意味で画期的なことですが、バチカンで一番人気のスポーツはやはりサッカーで、歴代の教皇とサッカーにも少なからぬ縁があります。現在の教皇フランシスコは幼少期から出身地のブエノスアイレスにあるクラブチーム「サン・ロレンソ」の熱烈なファンで、2008年には正式にクラブの会員登録も行っています。サン・ロレンソは今シーズンのリーグ戦で優勝を果たし、18日に選手とクラブ関係者は優勝トロフィーを持って教皇を表敬訪問しました。

かつてミュンヘン大学で神学を学んでいた前教皇のベネディクト16世はバイエルン・ミュンヘンのファンであることを公言していましたし、少年時代にゴールキーパーとしてサッカーをプレーしていたという報道もあるヨハネ・パウロ2世は同じドイツブンデスリーガ―のシャルケから名誉会員の称号を贈られています。

人口わずか830人のバチカンですが、サッカーの代表チームも存在します。FIFA(国際サッカー連盟)には加盟していないものの、これまでに公式試合を3度行い(相手は全て同じFIFA非加盟国のモナコでした)、1分け2敗という成績を残しています。職務についている間のみ居住権が与えられるという特殊な事情があるため、長年にわたってバチカン代表を引っ張る選手はなかなか出てこず、スイス傭兵とバチカン美術館の警備員の混成チームになっています。

2010年にはイタリアサッカー屈指の名将として知られるジョバンニ・トラパットーニ氏を1試合限定でバチカン代表の監督に招聘したこともあり、バチカン内部のサッカー熱は想像以上に高いようです。過去には「ローマに留学中のブラジル人神学生を集めて代表チームを作れば、戦力は格段にアップする」といった議論がバチカン内部で真剣に行われたという報道もありましたが、モナコに勝つことがまずは当面の課題となっています...。

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