【地域発】自治体の予算編成の舞台裏(その1)(林和弘)

今頃、都道府県や、市町村などの地方自治体では、来年度(平成26年度)の、予算編成作業が、着々と進んでいることでしょう。いったい、どんな風に、予算が作られているのか。いつ、誰が、金額(お金)を決めているのか。

今頃、都道府県や、市町村などの地方自治体では、来年度(平成26年度)の予算編成作業が着々と進んでいることでしょう。

いったい、どんな風に予算が作られているのか。

いつ、誰が、金額(お金)を決めているのか。

組織や職員が少ない小規模な市町村では、職員同士が、日頃から顔が見えるところで業務を行っています。ですので、予算編成過程での財政所管部署の担当者と、事業課の担当者のやりとりや、財政所管部署(通常、総務課財政班とか、企画課財政係などの名称が付けられている)の中での議論は、ガラス張り同然でしょうが、政令市や都道府県クラスの大きな組織の予算編成過程での議論は、非常に見えにくいものとなっています。

私はここ10年の内半分以上の期間、ある県の予算査定や行財政運営に携わってきました。

そこで、今後何回かに分けて、自治体職員にも見えにくい、ましてや住民は直接知ることのない自治体の予算編成の流れや、意志決定の舞台裏を「物語風」にご紹介していきたいと思います。

最初にお断りしておきますが、予算編成の作業やルールは、自治体によって様々です。

あくまでも、私が経験した(携わっていた)自治体の話ですので、「うちの町のやり方とはちょっと違う」「おかしいんじゃないの」などと思われる方もおられるかもしれませんが、よその自治体のことと割り切ってお読みください。

8月のある日

各出先事務所の総務課長や事務部長などが、部下の職員(経理担当者)とともに本庁を訪れ、事務所を所管する事業課の担当者に、来年度(翌4月から翌々年3月末まで)の予算説明(要求)をします。

県の出先事務所というのはあらゆる分野にわたっており、消防学校、空港、消費生活センター、美術館、陸上競技場、保健所、工業技術センター、児童相談所、家畜衛生保健所、図書館、県立学校、警察署など、様々です。

それぞれの事務所が、それぞれに予算要求を行う必要があり、職員人件費以外(人件費は部局全体分を、本庁が要求するので)の活動費や、事業費、施設の維持管理費などを積み上げなければなりません。

電気代、ガス代、水道代などの光熱水費。

コピー代、紙代、事務用品などの消耗品費。

電話代、郵便代、インターネット接続料。

公用車のガソリン代、施設や設備の保守点検料、などなど。

ありとあらゆるものを、1円単位で積み上げ、支出費目(節と言います)ごとに仕分けして「予算見積額調書」という名の書類にしていきます。

それに加え、毎年必要ではないけど、来年度はたまたま必要な経費(例えば、車の2年に1度の車検代など)や、来年度だけ必要なもの(例えば、故障した機械の修理代や、施設の修繕経費など)は「臨時経費」と呼ばれ、別途1件ごとに、書類(A4版数枚程度)を作成し、業者見積書などを添付して提出するのです。

予算要求の第一関門

出先事務所の予算要求側は、1円でも多く予算を獲得しようとします。

「なぜこの予算が必要なのか」「どんな効果があるのか」あるいは、「予算がなかったら、どれだけ困るか」説明にも、力が入ります。

一方、要求を受ける事業課の担当者は、必要性の確認や金額ボリュームが適正かどうかなど。少しでも件数や金額を減らそうと、丁々発止のやりとりが続きます。

しかし、そこで決着することは稀で、その場でさらに細かい資料の作成を要求されるか、後日、再度ヒアリングされることとなり、また同じようなやりとりが繰り返されます。そして、何度かやりとりがあって、最後にとりまとめます。

「他の出先事務所の要求額との調整があるので、特に臨時的な経費については全部要求するわけにはいきません」

「優先順位(例えば、5項目要求していたら必要ものの順番を1番~5番まで順番を付ける)を、一応教えてください」

「あとは主管課の経理担当者につないでみます」

主管課とは、保健福祉部、農林水産部、土木部といった本庁の部の中心で、部の人事や、経理、庶務や、企画を行うところです。

まさに、予算要求や予算配分を握っているセクション(課)です。

そして9月

出先事務所からの予算要求をとりまとめた事業課は、今度は、それを主管課の経理班の班長と担当者(若い職員)に説明します。

ただし、ここで主管課に説明される際には予算の額は削られており、出先事務所から出された要求の、2/3程度というところでしょうか。

さて、攻守が入れ替わり、事業課の職員はいかにその予算が必要なのかを調べます。

主管課側は、必要性、緊急性、予算の有効性、妥当性、そして、説明の矛盾点など、あらゆる角度から突っ込みます。いわゆる、査定作業です。

そして、結果的に、残るのはやっぱり、2/3程度でしょうか。

しかし、これで予算が固まった訳ではありません。やっと、部局の手を離れ(晴れて?)、財政当局(総務部財政課)へ提出されるわけですから。

<この続きは、次回に>

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