ときどき、眼鏡選びの相談を受けることがあります。なかでもよくあるのが「私に似合う眼鏡の形は?」という質問。そう聞かれると、私は返答に困ってしまいます。なぜなら、そうしたセオリーに囚われながら眼鏡選びをしてほしくないからです。
よくありますよね。「丸顔の人は丸みが強調されないよう角ばった形の眼鏡を選びましょう」といったような指南。私はこうした顔型別の指南方法には疑問を感じます。というのも、人の顔の形や眼鏡の形状は、そんなに単純なものではないからです。同じ丸顔の人でも目や鼻の大きさや配置などによって印象は変わるし、眼鏡も丸や四角といった単純な形のものばかりではないですよね。さらには同じ形でも色が違えば雰囲気が変わったりもするわけで......。
それに第一、そんな堅苦しい決まりごとを意識しながら眼鏡を選ぶなんて、楽しくないじゃあないですか。
顔型のほかにも、「顔の幅より大きな眼鏡はNG」とか、「フレームの上のラインと眉のラインを合わせる」云々......。それらを否定するわけではありませんが、そうした情報がかえって眼鏡選びのハードルを上げてしまっているのではないかと思うのです。
では、膨大な数の眼鏡からどうやって自分に合う1本を選べばいいのか? しいてひとつ基準を挙げるなら「黒目がレンズの中央~やや内側にくるものを選ぶ」ということ。あとは「使うシチュエーションを意識して、自分のファッションに合うものや好みのデザインを選べばいい」と私は答えます。
たとえば服や靴を買うときは、「休日のお出掛け用にジーパンを探そう」、「仕事用のスーツに合わせる革靴を買おう」といった用途やシチュエーションを踏まえたり、この前買ったブラウスに合わせるスカートが欲しい」など、コーディネートを考えてデザインを選んだりしますよね。
そんなことを意識しながらお店に行って、気になるものがあればとにかく試着。自分で選べない、という人はお店の人に目的や希望を伝えて一緒に選んでもらってもいいでしょう。また、いつもは自分で選ぶという人でも、時々あえてお店の方にお任せしてみるのもお勧め。自分では手に取らないようなものが意外と似合ったりして新鮮です。
そうして気になったもの、選んでもらったものなどいくつか候補が揃ったら、あとは納得いくまで試着するのみ。いろいろ掛けていくうちに、形や色はもちろん、掛け心地や素材感なども含め、どんなものが自分にしっくりくるかがわかってくるはずです。一見遠回りのようですが、セオリーに頼るよりも、じつはひたすら試着するのが一番の近道だったりします。数本掛けただけで「私は眼鏡が似合わない」とお嘆きの方、諦めるのはまだまだ早いのです。
さらに、眼鏡選びは「似合うこと」以上に、自分が「好き!」と思えるものを選ぶことが何より大事。どんな眼鏡でも掛けている姿が自信なさげでは、魅力も半減。気に入ったものであれば堂々と掛けていられますし、愛着も湧くので大事に長く使うことができますからね。
これが、今まで100本近く眼鏡を買ってきた私の持論です。
次なる1本をお探しの際は、ぜひ肩の力を抜いて、眼鏡選びのプロセスそのものも楽しんでもらえたら嬉しいです。