『終戦のエンペラー』のプロデューサー奈良橋陽子さんと対談した。日本ではとても映画化出来ないので、あえてアメリカで映画化したのだろうか。
日本が無条件降伏をして、マッカーサー最高司令官のアメリカ軍が日本に乗り込んで来る、ここから映画ははじまる。
マッカーサーの任務は日本を占領することである。さらにいえば、占領という名の国家管理を行なって、日本を民主主義国として独立させることだ。
マッカーサーは、そのために、まず戦争責任者たちを逮捕して連合国の裁判で裁かなければならない。その戦犯裁判に昭和天皇をかけるべきかどうか。マッカーサーは、ボナー・フェラーズ准将に、その調査を命じる。そしてフェラーズが、東条英機、近衛文麿、木戸幸一たちキーパーソンに直接あたって、天皇の戦争責任を問い、裁判にかけるべきかどうかを確かめる。これがこの映画のテーマでありストーリーである。
たしかに日本ではとても映画化出来そうにはない。いわばタブーである。げんに、これまでにこのような映画を企画した日本人はいない。
フェラーズはキーパーソンたちを調べてまわり、結局、昭和天皇は裁判にかけず、天皇制も続けるべきだと考える。日本人がいかに天皇に深い思いを抱いているかを知り、天皇なしでは日本が大混乱して占領政策がまっとう出来ないと判断したからだ。
フェラーズのこうした意思を知り、マッカーサーは、自分が天皇と直接会って話して決断することにした。そして昭和天皇とマッカーサーの、あまりにも有名な場面が映画でも展開されることになる。これが、この映画のクライマックスでもある。
力のこもった労作である。奈良橋さんは「アメリカは、日本以外の国では韓国、ベトナム、アフガン、イラクと全て占領政策に失敗していて、成功したのは日本だけ。そのことを殆どのアメリカ人は知らない。だから、なぜ日本では成功したのかということをアメリカ人に知ってほしかった」と語った。その言葉で、私は、あらためて、彼女があえてアメリカ映画にした意図が理解できた。