お世話になっております。
ガリバーの直人です。
ちょっと前に「IT屋が自動車産業に注目すべき8つの理由」というポストを投稿し、おかげ様で「ねーよ」「ねーよ」「それはない」等、多くの反響をいただくことができました。
私のサラリーマンライフ的には流通からITビジネスを模索する立ち位置にありまして、いわゆる「自動車 × ○○」的なネタを日々物色しておるのですが、ざっくりカテゴライズすると、「広告」「デジコン」「アフターマーケット」「ライドシェア」「通信」「車内IoT / ハードウェア」「インフォテイメントプラットフォーム」「走行系テレマティクス」「自動運転」「テレマティクスプラットフォームプロバイダ」「ロボットタクシー」「エネルギー」「輸送」「まちづくり」・・・、まあいろんなネタがございます。
その中から本日は、Yahoo!カーナビさんのサービス提供などで自動車業界でも話題になりつつある、「自動車 × ネット広告」の個人的な見方を、さくっとまとめてみますね。
前提なんですが、「自動車 × ネット広告」というビジネスアイデアは、WEB業界やネット広告屋さんからはあまり聞こえてこないんですよね。むしろ、ハードウェアに近い領域で検討されているようです。なので、ネット広告系の方には当たり前過ぎておもしろくないかもしれません。
「自動車×ネット広告」はもうちょっと先?
出典 : nmbr.jp
Google を例に挙げるまでもなく、インターネットにおいて広告というの重要な成長分野です。5兆円を超える日本の広告費におけるネット広告の割合は、総広告費の増減に依らず一貫して増え続けています。
なので、「自動車×インターネット」の文脈から「広告!」という発想が出てくるのはごく自然なことかと思います。
ざっくりいうと、「カーナビにネットのバナー広告が出ます」とか「プッシュ通知が出ます」みたいな感じですねw
システム全体像としてはこんな感じ? ガリバーが2016年2月に出したコネクティッドカーの世界観がわかりやすいと思うのでちょっと引用しておきます。
出典 : ガリバーインターナショナル
要するに、様々なデバイスを介して車がインターネットにつながります、と。で、クラウド上にデータが溜まるのでデバイス側にプッシュで最適化された広告出すこともできますよね、的な感じです。今、日本中でたぶん1万人くらいの人が同じような構想を考えており、ガリバー含めなかなか実装に至っていないというのが現状です。
ちなみに数年前からマイクロアドデジタルサイネージさんなどがバス車内等での広告掲出を実証実験したり、実際に商品化したりしていますが、これらは「自動車×ネット広告」というよりは既存のADNWの延長線上にOOHやデジタルサイネージがあるという携帯なので本稿のテーマとはちょっと違うところにある感じです。
参考 : バス車内での広告掲出イメージ (クリックで遷移)
インターネットに接続した「コネクティッドカー」で可能になるであろう広告商材は、広告主には以下のメリットがあると言われています。
・マーケティング (買いまわり行動の把握、商圏の把握、等)
・パーソナライズ (車とドライバーは、自己所有であればある程度紐づく)
ユーザーメリットはなんぞや、となりますが、CVRの向上は不要な情報に触れなくて済むということなので上記テクノロジーでほんとにCVRが上がるのであれば多分いいんでしょう。ほんとに上がるのであれば、たぶん。
ひとつの参考情報ですが、独立行政法人 工業所有権情報研修館の特許情報検索プラットフォームで「自動車 広告」をAND検索すると色々出てきて、登録者のラインナップと共になかなか興味深いです。
後述のドライバーディストラクションへの配慮とかですね。
「当面、難しい」と思っているわけ
エコシステムがない
現在存在しないマーケットなので、当然広告在庫 (広告枠、imp) はないです。それは当然として、インターネットを中心としたエコシステムがないんですよね。車における広告ビジネスを考える際はそこが深刻。
インターネット広告は歴史的に、すでに出来上がったITエコシステム (ポータルサイト、個人メディア、ADNW / 検索エンジン、アプリマーケット、etc) の上に発展してきたものなのですが、自動車には現状それがありません。
面 (露出。媒体や枠、デバイスなどをごっちゃにしたような表現。) の開拓は各々のプレイヤー (ADNW屋とか) が頑張ればいいんですけど、エコシステムは1社単独ではなかなか創りあげられない (Appleとかは例外ですごい)。
完成車メーカーさんが現在構築しているネットワークを開放すればいい、と思われるかもしれないんですが、そもそもPushがなかったりやインタラクティブじゃなかったりと技術的にもそう簡単じゃないみたいです。
ドライバーディストラクション、要するに運転者の注意を妨げるようなことはやめれ、ということで、自動車内では広告その他の通知が規制されます。
業界の動きを見ていると、駐停車中にしか広告を出さないようにしていることが多いみたいです (同乗者向けであれば別)。
前述の課題を克服するために、ないエコシステムを作り、媒体を作り、運転者の注意をそらさないよう留意し、低いimpを克服すべくビッグデータとアドテクとネイティブアドを駆使してターゲティング精度高く広告を出したとしても、広告クライアントの感覚からは「1送客100円〜300円くらいでよろしくお願いします」くらいの価格感かと思います。もちろん業種・業態によって単価は違うと思いますが、要するにチラシやその他のWEBマーケと比較して競争力のある単価でなければ意味がない、と。
世知辛いですよね。データエクスチェンジでも、1件数円から、高くても30円くらいの相場観だそうです。
まとめ
自動車ITエコシステムや自動車内メディアの成熟に続いて立ち上がる広告ビジネスは、普及機において事業を支える有力なビジネスモデルには成り得ないと考えています。ただし、すでにつながる車というメディアを持っている完成車メーカーやナビメーカーにとっては、規模を拡大することで後続他社に対して参入障壁の高い事業となる可能性を秘めています。
ただし、収益性は非常に悪いと思いますので、まずは黒字化を考えずシェア獲得のためにあらゆるアライアンスを模索するのだろうな、と。業界では Google の最大化戦略が有名ですが、とにかく「マーケットシェア」のビジネスモデルなので、有力プレイヤーがガンガンパートナーシップを結びつつどでかい網を張ったら素敵だな、と遠い目をしながら夢見ています。
他方、やはりYahoo!さん級の媒体がスピード感を持って始めているのはすごくいいですよね。うーん、やっぱり我々が入り込める隙はなさそうだなぁ。よし、ぼちぼち頑張ろう。
それでは、よろしくお願い致します。
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