アメリカ・オレゴン州の「ポートランド果樹プロジェクト(PFTP)」は2023年、低所得層の庭に162本の果樹を植えた。
PFTPは元々、地元コミュニティで収穫しきれていない果実の廃棄を減らすことを目的に2007年に設立された。
団体は、地域住民に果樹の手入れ方法を教えたり、食べきれない果実を近隣住民や地域団体に提供したり、収穫祭や果物保存ワークショップの開催したりして、食品廃棄物の問題に取り組んできた。
今ではポートランドの果樹に実る大半の果実が収穫され、地域団体や収穫ボランティアに提供されている。
PFTPのヘザー・ケイズラー・フォーンズ理事は、「果樹はよく手入れすることで、より良い果実を実らせることができる」と話す。
PFTPは2020年、植林NPO「ワン・ツリー・プランテッド」からの助成金を得て、果樹の植樹活動も始めた。
この活動を通してPFTPが目指したのは「健康的な食べ物の公平なアクセス」だ。しかし、取り組みを始めた当初、対象としていたのはすべて白人の家だった。
この点を指摘されたPFTPは、活動の中心を、樹木が少なく気候変動の影響を受けやすい低所得者層の居住地域に広げた。
樹木のない地域を把握するために、PFTPが使ったのが森林再生の活動に携わる環境NPO「アメリカン・フォレスト」が考案した「木の公平性スコア(Tree Equity Score)」だ。
木の公平性スコアは、樹冠被覆率や所得、人種構成、地表温度、建物密度などの要素を0〜100で数値化する。数値が低いほど、その地域は気候変動の影響を受けやすいことを意味する。
地域の木の公平性スコアを数値化した結果、「木の格差」が浮き彫りになった。
例えば、富裕層が暮らすポートランド北東部のアーヴィントンは、公園や通りに樹齢100年の木々が植えられ、ほとんどの地域の木の公平性スコアが100点近かった。
一方、ポートランド東端のセンテニアルは木が少なく、樹齢の古い樹木が伐採されて、歩道や自転車道などのインフラも十分に整備されていなかった。この地域の「樹木公平性スコア」は50点代で、ヒートアイランド現象が起きていた。
こういった地域は、気候変動や熱波、汚染などの環境問題の影響を受けやすく、低所得者やホームレス、移民が多く住んでいた。
果樹を増やすことで「木の格差」が緩和され、「食料主権」を改善できるのではないか。
そう考えたPFTPは、移民支援団体「オレゴン州アジア太平洋アメリカン・ネットワーク」や、菜園作り支援NPO「グローイング・ガーデンズ」と協力して、低所得者が多いポートランド南東部で庭に果樹を植えることに関心のある住民を探し、162本の果樹を植えた。
植樹後は、PFTPのスタッフが年2回樹木の状態をチェックし、必要に応じて剪定やトレーニングを行っている。
植えた樹木のうち数本は夏に枯れてしまったものの、大半が根付きつつあるという。
ケイスラー・フォーンズさんによると、果樹が好まれた理由の一つが、「大きくなりすぎないこと」だった。
樹木の少ない地域に住む人たちの中には、大きくなる木を植えたがらない人もいた。特に非白人や移民が暮らすポートランド東部のコミュニティでは、果樹を好む傾向が見られたという。
住民の間で一番人気の果樹はフェイジョアとイチジクだったが、バナナやゆずを選んだ人たちもいたという。
2002年からポートランド南東部に住んでいるハイ・ヴォさんは、PFTPから譲り受けた富有柿とフェイジョアを育てている。
PFTPはこの活動を始めて、樹木を植えていなかった人たちは知識がなかったのではなく、手に入れられなかったのだということに気づいたという。
樹木管理マネージャーのサディ・ウェクスラーさんは「住民の皆さんは熱心に樹木の世話をしています。一緒に植樹や木の活動をして、これこそ私たちがずっとやるべきことだったんだと気づきました」と語った。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。