05 少数者しか世界を変えない
06 格差は悪くない。大事なのははしごがかかっているかどうか
07 がまんできない大人たち
08 手紙を書いても人間関係は続かない
05 少数者しか世界を変えない
田中:分断と言っていることがそもそも違う、当たり前なんですね。
逆にみんなが同じ方向を向いていることはおかしい、そんなことあるはずないという意味では、ポピュリズムはどうなんですか。
出口:ポピュリズムは基本的には無知からきているんです。例えば、本屋さんで「隣の国はこんなに世界中の人から嫌われているけれど日本はこんなに好かれている」などのタイトルをみたことありませんか?
田中:嫌韓、嫌中とかですね。
出口:たくさんありますよね。
これと同じことを学校のクラスで「私はこんなにクラスの人から好かれているけれど、私の横に座っているこの人はクラス中から嫌われています」と言ったらどうなりますか?
田中:ひどいを通り越して、ひきますね。(笑)
出口:ひくでしょう?(笑)それと同じ話ですよね。
好きでも嫌いでもさ、クラスで物理的に横に座っている人は、必ずしも合う人ばかりではありません。
けれど、席替えでそうなるときもある。あまり好きじゃない人が横の席になったらどうしますか?
田中:表面上で付き合いますね。
出口:そうですよね、そうしないと毎日がしんどいですよね(笑)
田中:自分が嫌ですよね。
出口:例え嫌いな人であっても挨拶をして、できるだけ波風をたてないようにする、
それが普通です。
それなのにわざわざ「私はクラス中から慕われているのに横の人は嫌われている」と言って、何の得になるのかという話です。
そう言われるとみんなわかるんだけれど、
言われないとすぐに隣のやつはけしからんやつだなと思ってしまう。
だからポピュリズムの敵は無知なんです。知らない、考えないは敵。
田中:小池さんがポピュリズムと言われているのを目にしたことがあります。
あれはポピュリズムなんですか?
出口 小池さんの選挙はとても上手だったけれど、あれはポピュリズムなどというより、選挙の原則から考えて、2択、3択ある選択肢からどちらを選ぶかという話です。
都議選でいえば、安倍さんと小池さんとどちらがマシですか?
それだけの話ではなかったのでしょうか。
田中:まさにチャーチルの言葉ですね。
出口:アメリカを見ていると、民主主義の仕組みが機能している気がします。
例えば、トランプさんが大統領令を出しても、すぐに裁判所が無効だと言うわけです。
ファシズムや全体主義というのは、仕組みの問題もありますね。
田中:その話で浮かんだことが、多数決が絶対的に正しいわけではなく、
少数の意見が正しいこともあるということです。
出口:少数者しか世界を変えないというのは、
「社会心理学講義」という本に書いてあります。
本を読むのが好きならおススメです。少数者しか世界を変えません。
なんでかわかりますか?
例えば、東日本大震災をきっかけに地域おこしが盛んになりましたが、
地域おこしのキーワードって知っていますか?
田中:若者、ばかもの、よそもの。
出口:そう、どうしてその人たちが地域おこしができるのかわかりますか?
田中:その土地について何も知らないからですかね。
出口:そこに住んでいる地域の人々の常識を知らないので、見たこと、聞いたことすべて「すごいじゃん」と思うわけです。
例えば僕は東京に住んでいますが、新しい東京タワーにはまだ行ったことがない。遠くから見えるけれど忙しいし、いつでも行けると思っているから良さがわからないのです。
田中:僕も東京バナナ食べません。(笑)
出口:でも、地方からきたら「高い、すごい、面白い」となるんですよね。
よそものは東京タワーの素晴らしさがわかる。ばかものは社会的常識がないからわかる。
若者は社会経験がないからわかる。
劇作家・バーナード・ショーに次のような言葉があります。
「賢い人はすぐに空気を読んでしまい、その場ではどういうことを言えばいいかわかってしまうから、世界に合わせてしまう」
賢い人は何も世界を変えないのです。
ばか者は空気を読まず、自分が正しいと思うことを言い続けるから世界を変える、
そのメカニズムが「社会心理学講義」には書いてあります。
田中:読んでみます。日本で出口さんがそれを象徴していると思う人はいますか?
出口:地域おこしをやっている人はみんなそうじゃないですか?
若者には未来に希望が持てるような人がたくさんいると思います。
ハーバードビジネスレビューのunder40で選ばれた禮彩香(にれいあやか)さんのような人。
中学生で会社をつくって事業をやっている人ですね。
Under40の中で、ただ1人の10代でした。
06 格差は悪くない。大事なのははしごがかかっているかどうかにつづきます。
(写真:小野瑞希)