東京オリンピックで手にした銀メダルをオークション出品したポーランドのマリア・アンドレイチク選手に対し、落札した企業がメダルを同選手から受け取らないと発表した。
アンドレイチク選手は、生後8カ月の赤ちゃんの手術費用を捻出するために、やり投げで獲得した銀メダルをオークションに出品していた。
最後の希望、私も手助けしたい
アンドレイチク選手が、赤ちゃんの手術費用を集めるためにメダルのオークション出品するとFacebookで発表したのは、8月11日だった。
赤ちゃんには、総肺静脈還流異常という先天的な心臓疾患があり、アメリカで手術を受けるための費用を集めていた。
ESPNによると、アンドレイチク選手は「ある家族がすでに手術費用の半分を提供してくれている」と説明。
その家族は、自分たちの子どもも手術が必要で費用を貯めていたが、子どもは手術を受ける前に亡くなったという。
アンドレイチク選手は、「私も何か手助けしたい」とオークションで手術の残り半分の費用を捻出したいと呼びかけた。
手術の募金を呼びかけるページによると、赤ちゃんは現在自宅でホスピスケアを受けており、症状が悪化している。
また、ヨーロッパで手術できる病院が見つからず、アメリカ・カリフォルニア州にあるスタンフォード大学メディカルセンターが最後の希望だという。
自らも苦難を乗り越えて手にした銀メダル
アンドレイチク選手の銀メダルは、ポーランドのコンビニエンスストアチェーン「ジャプカ」が、12万5000ドル(約1370万円)で落札した。
アンドレイチク選手は8月16日に「これでアメリカに行くことができる」と感謝のコメントを投稿。
メダルは自分自身にとって「多くの困難がある中での、苦しみや信念、夢を追うシンボル」であり、ジャプカにとって「メダルが、私たちが共に闘ったシンボルになって欲しい」とつづった。
しかし、落札したジャプカは、銀メダルを受け取らなかった。
ジャプカはSNSで「オリンピック選手の美しく寛大な行動に、私たちは心を動かされました」「素晴らしい人間であることを示したマリアさんの手元に、銀メダルを残すことを決めました」と伝えた。
アンドレイチク選手は、2016年のリオオリンピックで、わずか2センチの差で銅メダルを逃した。
その後、2018年に骨肉腫と診断され、怪我にも苦しんだが、闘病を経て復帰した東京オリンピックで銀メダルに輝いた。
NBCによると、同選手はユーロスポーツ・ポーランドに「メダルの本当の価値は、いつも心に残っている」と語り、オークションに出品した理由を次のように説明した。
「メダルはただの物ですが、他の人にとっては素晴らしい価値があります」
「クローゼットの中でホコリを集める代わりに、この銀メダルは人の命を救うことができるのです。だから私は、病気の子どもを救うために、オークションに出品しました」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。