アメリカのニュースやドラマでよく登場する「警察(ポリス)」と「保安官(シェリフ)」の違い、ご存知ですか?
アメリカの映画やドラマが好きな人なら、「レンジャー」や「マーシャル」という肩書きも聞いたことがあるかもしれません。
日本にも警察官以外に麻薬取締官や労働基準監督官など、捜査権や逮捕権を持つ職務があるように、アメリカにもそれぞれ取締りの内容や捜査の範囲が異なる職務を表す言葉がいくつかあります。
どれも警察と似たようなイメージがありますが、4つの職業を区別することができれば、アメリカのニュースやドラマをもっと身近に感じられるかも…。
「警察と保安官、レンジャー、そしてマーシャルの違いとはなんですか?」という、アメリカ版「知恵袋」のようなQuoraに掲載された質問に、元警察官で刑事司法教授のティム・ディーズ氏が回答した内容をご紹介します。
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警察(ポリス)とは?
警察(ポリス)とは一般的には多目的の法執行機関です。彼らは、銃などで武装して警察のユニフォームを着用し、非常灯とサイレン付きのパトカーに乗っています。そして捜査令状の執行や容疑者逮捕の権利があります。
警察は多くの場合、市役所が所有しています。しかし、郡政府や州政府、大学、病院、運輸公団など、準政府機関が警察を雇用する場合もあります。
一般的にと説明したのは、連邦警察だと少し事情が違うからです。首都ワシントンD.C.で周囲を見回すと、全ての連邦政府機関にそれぞれの警察がいることに気付くでしょう。造幣局の警察、FBIの警察、スミソニアン研究所の警察、合衆国議会警察、最高裁判所警察ーーといった具合です。
しかしながら、彼らの仕事はどちらかといえば治安維持です。警察は雇用主の市民や職員、施設を守ります。
もし、雇い先の自治体や機関が所有する施設で重大犯罪が発生した場合は、FBIや監察官(FBIと同じように、警察権や特別捜査官の権利を持っている)が捜査を担当します。
保安官(シェリフ)とは?
保安官(シェリフ)は保安官事務所の最高責任者で、選挙で選ばれる公選職です。
ほとんどの場合、保安官は郡政府に雇われています。わずかではありますが、保安官を雇っている市もあります(そのほとんどが、市が郡に属していないバージニア州)。郡が存在しないアラスカ州をのぞく49の州で、保安官がいます。
「保安官(シェリフ)」という言葉は、中世イギリスで税徴収官をしていた「シャイア・リーブ」という二つの単語が一つになってできた言葉です。保安官が税の徴収を担当している州もあります。
多くの州では保安官は司法を担当します。それはつまり、郡には必ず保安官がいなければいけないということを意味します。
自治体によっては、保安官事務所の仕事が書類を届ける、裁判所の治安を守るといった公式的なものにとどまる一方で、保安官が刑務所の運営をする自治体もあります。
しかしほとんどの州では、保安官はそれら全ての業務に加えて、法執行機関としてのサービスを提供します。また、警察のない市の警察業務を請け負う保安官事務所もあります。
わずかですが、保安官事務所と警察の両方を持つ郡もあります。両方をもつ郡は大抵の場合、自分たちで法執行機関の責任者を罷免する権利を持ちたいという意図から両方を所持しています。
郡の警察では、警察署長は郡政委員の下で活動します。そして警察が置かれている郡では、保安官は刑務所の運営や訴訟手続き業務など、格下の仕事を担当します。
保安官の指揮下で働く人々は、保安官代理と呼ばれます。彼らは一般的に警察官と同じだけの法執行権限を持っています。
レンジャーとは?
レンジャーは、州政府が所管する部局(国立公園部門や森林部門など)で、国立公園や森林の警備隊として働きます。
警察権力を持っているレンジャーもいれば、持っていないレンジャーもいます(一般的には持っている)。警察権力を持っていない場合、レンジャーは博物学者や自然保護官として活動します。
ただし、レンジャーに古い歴史があるテキサス州では、レンジャーは州レベルの法執行官です。警察機関の序列の中でも、上位に位置します。
マーシャルとは?
マーシャル(日本語ではシェリフと同様、保安官と訳される)は、裁判所の運営にあたる法執行官です。マーシャルの仕事は裁判所と裁判所職員の安全を守るだけの場合もあれば、それに加えて召喚状や逮捕状を届ける場合もあります。
連邦政府のマーシャルと市役所のマーシャルがあり、連邦のマーシャル「U.S.マーシャルサービス(アメリカ合衆国連邦保安局)」は、裁判所の治安維持、目撃者や囚人の裁判所への移送、囚人の州矯正施設への移送、目撃者保護などを行います。
市のマーシャルは、召喚状の配達や裁判所の治安維持、逮捕者の拘留にあたります。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。