カエルをなめてはいけない。アメリカ・国立公園局が、極めて異例の警告をFacebookに投稿した。
同局は投稿で「バナナナメクジや見慣れないキノコ、真夜中に目を光らせる大きなヒキガエルなど、国立公園で遭遇するほとんどのものを舐めないで」と訴えている。
なぜわざわざ、注意喚起するのか。
なぜなめる?
公園局が警告した「真夜中に目を光らせる大きなヒキガエル」とは、ソノラ砂漠ヒキガエル(別名コロラド川ヒキガエル)のことだ。
同局は「このヒキガエルには、強力な毒素を分泌する耳下腺があり、触ったり毒が口に入ったりすることで、気分が悪くなる可能性があります」と警告している。
公園局がわざわざ注意喚起したのは「5-MeO-DMT」と呼ばれる物質を求めて、このカエルを捕獲する人がいるからだ。
「5-MeO-DMT」はソノラ砂漠ヒキガエルが分泌する物質で、幻覚作用がある。それを求めて、近年摂取する人が増えている。
しかし、この物質には身体に深刻なダメージを与える可能性がある。
首都中毒センターは「激しい炎症や痛み、組織の損傷を引き起こす可能性があります。また、舐めたり吸ったりすることで、口や喉のしびれだけでなく、心臓が命を脅かす深刻なダメージを受ける恐れもある」と説明している。
心肺停止の恐れもあり、皮膚からの吸収でも同様の健康被害を受ける可能性がある。
また、近年は舐めるよりも、吸う人が増えているという。
カエルも人間も危険にさらす
このヒキガエルの愛好家として知られるのが、元ボクシング選手のマイク・タイソン氏だ。
タイソン氏は2021年のニューヨークポストのインタビューで「心身ともにボロボロだった時に初めて試し、カエルがエゴを取り除いてくれた」と明かした。カエルを吸う目的について「自身の可能性の最高点に到達すること」と語っている。
しかし摂取は人間だけではなく、カエルの生存も危険に晒している。
ソノラ砂漠ヒキガエルは現在、ニューメキシコ州で絶滅の危機に瀕しており、原因の一つは、幻覚作用を求める人々による“取りすぎ”だという。
ニューヨーク・タイムズは、分泌物の需要で個体数が激減の危機にあると報じている。
公園局によると、ソノラ砂漠ヒキガエルは北米最大の種の一つで、体長約18センチ。鳴き声は「弱くて低く、1秒も続かないほど短い」という。
同局がFacebookに投稿したのは、アリゾナ州オルガン・パイプ・サボテン国定公園で撮影したソノラ砂漠ヒキガエルの写真で、「カエルはあなたの魂を見つめている」と説明書きをつけている。
このカエルをなめてはいけない。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。