ワールドカップ決勝戦の授賞式で、自国のサッカー連盟会長にキスされ、さらに嘘をついていると批判されたスペインのジェニファー・エルモソ選手に対し、ライバルだった選手やコーチらも連帯を表明している。
この問題をめぐり、すでに80人ものスペインの選手たちが、ルイス・ルビアレス会長が会長職に留まり続けるなら代表チームでプレーしないと宣言している。
これに加えて、決勝でスペインの対戦相手だったイングランド女子代表チームの選手らも「性差別的で家父長制的な組織で、許されない行動が起きた。虐待は虐待です」という声明を発表。
「私たちはジェニファー・エルモソ選手とスペインチームの選手を支持します」という連帯のメッセージをSNSでシェアした。
さらに、女子スペイン代表チームのコーチら11人も、会長の行動に抗議して26日に辞任した。
決勝戦後の会長の行動が問題に
スペインは8月20日に行われた決勝で、イングランドに1-0で勝利し、初のワールドカップ優勝を手にした。
その授賞式で、スペインサッカー連盟のルイス・ルビアレス会長はエルモソ選手の頭を両手でつかんでキスし、スペインのペドロ・サンチェス首相を含め国内外から大きな批判を招いた。
その後ルビアレス会長は謝罪したものの批判は止まず、FIFA懲戒委員会も8月24日に懲戒手続きを開始したと発表。辞任する可能性が高いと報じられていた。
しかし、ルビアレス氏は25日に開かれた緊急会議で辞任しないと表明し「キスは同意のもとに行われたもの」と述べ、「自分は偽のフェミニストたちによる魔女狩りの犠牲者だ」と主張した。
さらに「ルビアレス氏の行動を正当化する声明を出すようサッカー連盟から、プレッシャーをかけられた」とも述べた。
すると、スペインサッカー連盟も「会長は嘘をついていない」と否定する声明を出し、逆にエルモソ選手の主張を「嘘だ」として法的な措置を講じると強気の姿勢を見せた。ただし、CNNによると声明はその後削除された。
ルビアレス氏が会長職に留まり続ける中、FIFAの懲戒委員会は26日、ルビアレス氏を90日間の停職処分すると発表。ルビアレス氏とサッカー連盟にエルモソ選手とコンタクトしないように命じた。
この発表の後、ワールドカップ優勝を支えた女子スペイン代表チームのアシスタントコーチやU20のコーチら11人が辞任を発表した。
コーチらは声明でルビアレス氏の態度に抗議したほか、「会長が辞任を否定した会議では、支持しているような印象を与えるために前方に座るように求められた女性コーチもいる」と述べている。
ルビアレス氏に対して怒りを感じているのは女子選手たちだけではない。
元スペイン代表で2023年7月までヴィッセル神戸でプレーしていたアンドレス・イニエスタ選手も27日、SNSに 「1人の人間、そして3人の娘を持つ父親、夫、サッカー選手として悲しみを伝えたい」というメッセージを投稿。
「ワールドカップ優勝という偉大な節目を台無しにした今回の行為は容認できるものではなく、代表チームの選手たちが今どんな思いでいるのか、私には想像もできない」と選手たちに寄り添った。
そしてルビアレス氏について「地位に固執し、自身の行動が許容できないものであることを認めず、それが私たちの国と世界中のサッカーのイメージを傷つけていることを認識していない会長に耐えなければならない」と失望をつづっている。