「10歳で結婚? 」
途上国で幼くして結婚させられる女の子がいるという動画を見て、衝撃を受けた。10歳といえば、筆者の息子と同じ歳だ。まだまだ幼い。
途上国では、本人が望まない10代での結婚がいまだに多くあるという。早すぎる結婚(※1)は、学業を途中であきらめざるを得ず、経済的自立を難しくするし、幼い身体での出産は命に関わることもある。
途上国の女の子の地位向上と自立のために、早すぎる結婚を防止するプロジェクトを実施している国際NGOプラン・インターナショナル(以下プラン)の海藤さんに、コロナで悪化する現地の状況とプランの活動について聞いた。
そして、プランの活動を知って、筆者は人生で初めて継続的な寄付をすることを決めた。その理由についてもお届けしたい。
早すぎる結婚はなぜ起きる?
なぜ、途上国では早すぎる結婚が後を絶たないのか。
海藤さんによると、さまざまな要因があるという。貧困で親が生活に困り結婚させる、幼い女の子の方が結婚持参金が少なくて済む、伝統や慣習、法律がきちんと施行されていない、そして、幼い方が夫に従順であると考えられたりするためなどだ。
「でも、一番大きな問題は、早すぎる結婚が女の子に及ぼす負の影響を、女の子達自身、または周囲の大人も正しく理解していないということです。たとえば女の子が早すぎる結婚をすることによって、就学や就業の機会を失って、選択の可能性が狭まってしまいます。また、早すぎる妊娠や出産に繋がるので、母子ともにたいへん危険な状況になり、死亡の大きな原因の1つにもなっています」(海藤さん)
️早く結婚させるために、3歳も年齢を詐称
ネパールに住むシャワナさんは、早く結婚させるために3歳も年齢を偽って出生登録されていた。
ネパールでは早すぎる結婚が法律で禁止されているにもかかわらず、農村部では依然として52%の女性が18歳未満で結婚しており、10万人以上の女の子が10歳になる前に結婚させられているという(※2)。
しかし、シャワナさんは15歳で結婚させられた姉に「あなたは私のようになってはいけない。勉強を続けるように」とアドバイスを受けていたこともあり、抵抗した。
「早く結婚してほしい。伝統だから仕方がない」という親に対して、彼女は諦めず、姉が今どんな生活をしているかを両親に訴え、「わかってくれないなら警察に行く」と迫り、ようやく両親が折れたそうだ。
現在、貧しい人を助ける医者になるために勉強を続けている。
「早すぎる結婚から逃れて将来に向けて力強く歩む女の子達がロールモデルとなって、周囲の女の子達や男の子達の意識が変わっていくと考えています」(海藤さん)
物を送るだけではない、地域の自立を助けるための支援
では、このような状況の中、プランでは、早すぎる結婚を防ぐためにどのような活動をおこなっているのだろうか。
海藤さんによると、大きく3つの取り組みがあるという。
「1つ目は、女性が自らの意志をきちんと述べられるようなトレーニングをすること。2つ目は、性と生殖に関する健康と権利や、暴力からの保護に関する教育や啓発活動によってセーフティネットをつくること。そして3つ目は、早すぎる結婚の防止に向けた法律の整備や施行が強化されるような活動になります」
これらの活動は、女の子達だけではなく、男の子達にも関わってもらうことで、理解が広まるという。
さらに、意思決定者である大人達や行政を巻き込むことにより、早すぎる結婚への防止がより効果的になることが考えられる。
また、プランの取り組みの特徴について、海藤さんはこう話す。
「地域の自立ということが最終的な目標となっています。物だけを支援するのではなくて、その地域が抱えている課題について、地域の人達に一緒に考えてもらうということが活動のテーマにもなっています」
コロナ禍で、ジェンダーギャップの解消が99年から135年に延びた
プランのこうした活動は実を結んでいるものの、コロナ禍で途上国の女の子達を取り巻く状況はますます厳しくなっているそうだ。海藤さんは語る。
「国連人口基金(UNFPA)では、新型コロナウイルスの影響により、2020年から2030年の間に1300万件の早すぎる結婚が発生すると推計されています」
「さらに、世界のジェンダーギャップ解消にかかる時間が増えています。ジェンダーギャップを埋めるには、今までは99年くらいかかると推計されていましたが、コロナ禍で135年に延びたと言われています。これまでの取り組みが決して後戻りにならないように、プランは特に女の子の権利の実現について力を入れていきたいです」
135年。気の遠くなるような数字だ。コロナ前の99年でも相当長いのに、さらにひと世代分延びたことになる。
「自己満足」「偽善」と言われても寄付をする
筆者は、恥ずかしながら、これまで一人が少額の寄付をしたところで世の中は変わらないんじゃないかと思ってきた。自らの意志で寄付したのは、震災やコロナ関連、保護猫活動など単発のものを年に1、2回ほどにすぎない。
しかし今回の取材を通して、息子と変わらない歳の少女たちの自立をサポートしたいと考え、寄付を申し込むことにした。プランのウェブサイトで寄付の使い途などもきちんと確認して納得した上でのことだ。
「自己満足」「偽善」と言う人がいるかもしれないが、コロナ禍で早すぎる結婚が増え、女の子達が危機に陥っている今、そんなことを言っている場合ではないだろう。
複数のコースの中から選んだのは、「プラン・スポンサーシップ」という毎月3000円を寄付する継続支援だ。「教育」「医療」といった女の子達が自立するための課題に多面的に取り組んでいる。
支援する子どもの性別は女の子を選択した。ジェンダーギャップの解消にかかる135年が少しでも短くなるようにという思いからだ。
ちなみに、確定申告をすると寄付金控除で最大4割戻ってくるのも大きい。
また、支援者は「チャイルド」と呼ばれるプランが活動している地域の子どもと手紙のやりとりができるという。
申し込みページのコメント欄に「10歳の息子がいるので、歳が近いチャイルドと交流できるとうれしいです」というコメントを書き添えた。
息子に今回の寄付について説明し、「遠い国に住んでいるあなたと同じ歳くらいのお友達から、手紙が来るかもしれないよ」と伝えたところ、「返事を書いてみたい」とのことだった。
日本には寄付文化が根付いていないと言われる。いくつか要因はあるが、生活の中で寄付をする機会に出会わないということも大きいのではないだろうか。
息子に今回の筆者のアクションを伝えていくことによって、次世代には寄付文化が当たり前に根付いてほしいと願わずにいられない。
<後日談>
交流をするチャイルドが決まったとの連絡が来た。西アフリカ、トーゴに住む10歳の女の子だ。まずは、私と息子から手紙を書いてみようと思う。
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