一杯のコーヒーが、男女によって値段が違ったら?
男性は400円、女性は304円。男性はきっと「女性が得をするのは、なぜだ」と疑問を抱くだろう。
それは女性が働いて賃金をもらう上で、常々抱いている疑問と同じかもしれない。
性別に関わらず同一の労働に同一の賃金を支払う多国籍企業として世界初認定*をされたフィリップ モリス インターナショナルのステイシー・ケネディ氏が3月24日、第5回国際女性会議WAW!/W20(Women20)内のセッションに登壇。企業における男女間の格差是正について、企業のリーダーたちと語り合った。
セッションの司会を務めた東京芸術大学理事でありニュースキャスターの国谷裕子氏は、「90年代以降、日本の女性の就業率は大幅に伸びました。25歳から34歳の働く女性の割合は80.2%と過去最高の数値になりましたが、一方で、男女の賃金格差は解消されていません。管理職比率の歩みはさらに遅く、アメリカの39.2%の達成率に対して、日本はわずか12%。1991年の8.4%から27年経過しても3.6%ほどしか増えていません」と、日本の現状を解説。
それを受けケネディ氏は、フィリップ モリス インターナショナルにとっては「男女が同一賃金になるというのは、ビジネス上でも必要不可欠なことだった」と述べた。
「私たちは今、従来の紙巻たばこメーカーから、サイエンスに基づくテクノロジーリーダーへと変化を遂げようとしています。フィリップ モリス インターナショナルでは、紙巻たばこより害の少ない製品の開発に力を注いでおり、将来的に、紙巻たばこ全てをこれらの『リスクを低減する可能性のある製品 (RRP※)』に切替えることを目指しています。このビジネストランスフォーメーションを達成するためには、私たちはダイバーシティやインクルージョンの取り組みを推進することが重要な鍵となると考えています。
また、女性が管理職に就くことで、ビジネスにも新たな息が吹き込まれます。組織としての考え方にも多様性が生まれ、私たちのビジネスにも好影響が生まれてくる。女性にとって魅力的な職場だと思ってもらうためには、同一労働に対する男女同一賃金というのは始まりにすぎません」
では、具体的な施策としてどのような取り組みをしているのか。
「意思決定権を持つ女性をより増やしていくためには、母数となる優秀な女性社員を増やすことがマストです。人がいなければ、可能性は広がりません。
それと、“まずは女性を管理職ポストに登用してみる”ということも大切。重要な役割を与え、そこから成長させる、という発想を取り入れる。例えば、若くて潜在能力があるけれど、まだ一部の要素が足りない候補者がいたとします。その場合は役割や仕事のスコープを少し変えて、足りない部分を別の人に役割を分担したり、フォロー体制を作ったりして彼女らが成長する機会を与えればいいのです」
フィリップ モリス インターナショナルとして、現在は34.4%の女性管理職比率を、2022年までには40%に達成することを目標としている。
誰もが持っている「無意識のバイアス」
ここで国谷氏から、男性優位の企業文化のなかでは、女性の登用に対して男性社員からの反発や、もしくは男女格差の改善に努めようとしつつも“無意識のバイアス”が露呈することもあったのではないか、との問いかけが。これに対しケネディ氏は「無意識のバイアスは、誰にでもあるもの。それを可視化することから始めました」と述べた。
「社内において、意図的に男女平等に反対するようなバイアスは一切ありませんでしたが、無意識のバイアスは存在しました。ただ、それらは人間ならば誰もが持っているものです。私たちは、無意識を可視化するためのワークショップや話し合いを何度も重ねました。
例えば、男女ともに候補者がいる昇格のレビューで、女性候補者のときだけ『彼女は最近子供を産んだばかり』『高齢のご両親がいる』という条件に目を向け、役職を果たすのが難しいのではないかと想定をしてしまっていました。想定するのではなく女性の候補者に直接聞いてみるプロセスを導入したところ、10人中9人がイエスと答えるか、今はちょっと難しいけれど時期が変わればやりたい、誰かに手伝ってもらうかもしれないけれど挑みたい、といった答えが出てきました。互いの考えを明確に話し合うことで、女性も管理職への道がひらけ、女性への正しい評価も可能となったのです」
管理職の5人に1人が「女性」。男女同一賃金は、採用にも効果が
今回ハフポスト日本版は、登壇後のケネディ氏に取材。日本における格差是正の取り組みなどについて話を聞いた。
―男女同一賃金の取り組み、日本での実績はどうでしょうか?
性別に関わらず同一労働同一賃金であることを明確に打ち出すことは、女性の採用にも功を奏しています。これまで女性比率が少なかった営業職の新規採用では、3%(2013年)から44%(2018年)に増加。日本オフィスの約75%を占める、1,500人以上の営業組織において女性の割合を増やす意義は非常に大きいと考えています。組織の中で占める割合が大きい部署で女性が活躍することで、よりインパクトをもたらすことができると考えているからです。特に営業職の女性向けにはネットワーキングの機会を提供することで、同僚からもサポートを得られるようにしています。これらの機会を通じて普段は全国の異なる地域で働いている営業職の女性が一同に会し、課題の共有やディスカッションを通じて解決策を見出すことができています。今日では、日本オフィスでは管理職の5人に1人以上、約26%が女性です。この調子で、グローバルで掲げている「2022年までに女性管理職を40%に」という目標を、日本が他国よりも先に達成してほしいと願っています。
―日本全体としては、ジェンダーギャップ指数で110位(2018年)となるなど、まだまだ男女同一賃金までには道のりが遠い状況です。
国全体としてジェンダーギャップを埋めるには、政府の担う役割も大きいですよね。日本政府は透明性を保とうと努力しているし、枠組みも作っているし、政策も導入している印象です。ただ、政府がフレームワークを作っても、実行するのは民間企業になります。フィリップ モリス ジャパンだけでなく、他企業においても、男女間の同一労働同一賃金の実現に向けての取り組みが進めば、と考えています。
あとは、“女性同士の助け合い”もカギになると思っています。みんながそれぞれ努力するなかで、互いを切り分けてしまうのではなく、お互いを認め、サポートして支え合い、ともに解決策を探ることが必要。私たちが企業として掲げる「インクルージョン」も同じく、互いに支え合える環境が整えば、平等性もしっかり保たれて、よりよい社会になっていくと思います。
女性は、もっと声をあげていい
―いわゆる“シスターフッド”も、“女性同士の助け合い”ですよね。
シスターフッドは私の人生にとって非常に大切です。私も個人として素晴らしい男女のメンターに恵まれました。出産前などに、実際に子育てをしながら働いている人に話を聞いたり、キャリアを離れて産休をとったあと、どのように仕事復帰するかのアドバイスをもらったり。キャリアを形成する上で、自分が女性であったり子どもがいたりすることでブレーキを踏まなければならないのではなく、反対にアクセルを踏んでいいのだと教えてくれた人たちがたくさんいます。
また、私自身が女性の先輩として何をすべきかを考えたり、若い世代から新しい風を吹き込んでもらったりするのは刺激にもなりますし、勉強にもなります。自分の成長としても、シスターフッドの関係性はとても重要です。
国も年代を超えた“シスターフッド”が、企業文化にも
―社内でもシスターフッドの風潮はありますか?
フィリップ モリス インターナショナルにも、お互いをサポートしていく素晴らしい環境があります。私自身、さまざまライフイベントで多くの女性社員たちにお手伝いをいただきました。
女性同士が役割によって分断化されてしまうのではなく、お互いを手伝い、支え合えるような環境を作っていくことが、女性活躍につながります。私には10歳の双子の娘がいます。彼女たちにも、私のようにシスターに恵まれてほしい。シスターフッドはこれからの世代にとって、より大切になっていくのは間違いありませんから。
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日本でもシスターフッドが注目されており、女性たちが団結し始めている風潮があると伝えると、「日本でも同じ気持ちを持つ人たちがいるのは、とても嬉しいです」と笑った。
多様性は企業の持続的成長につながる。男女平等を実現するリーディングカンパニーには、そう断言できるだけの実績と自信があるのだった。
※RRP(リスクを低減する可能性のある製品)は、紙巻たばこの喫煙を継続した場合と比較して、
同製品に切替えた成人喫煙者にとって害のリスクが少なくなるか、少なくなることが見込まれるか、
又は少なくなる可能性のある製品を指すものとして私たちが使用している言葉です。
私たちのもとには、開発、科学的評価、市販化といった異なる段階にある様々なRRPが存在します。
私たちのRRPはたばこ葉を燃やさないので、発生させるエアロゾル(蒸気)に含まれる有害および
有害性成分の量が紙巻たばこの煙に含まれる量と比較して、はるかに少なくなっています。