我が子を将来自立した人間に育てたい。そう思うパパママは多いですよね。
でも、赤ちゃんだった自分の子どもに自我が芽生え、好き嫌いや自己主張が出始めたら、どう接していいか戸惑うこともあるのでは。
そんなお悩みについて、Twitter上でのポジティブな子育て情報が人気を集め、49万人のフォロワーを抱える人気保育士・てぃ先生にお話を聞きました。
■自立のスタートは「自我の芽生え」
── まず、子どもの自我や自立心の発達について教えてください。
赤ちゃんの頃から、少しずつ自我は芽生えていきます。最初は、お母さんをはじめとした自分以外の人間を認識するようになり、1歳くらいには、自分の意思で物に触れたり、移動したりできるようになってきます。
2歳くらいになると、さらに自我がはっきりしてきます。洋服や食べ物の好みなど「自分の価値観」も出てきて、「自分でなんでもやりたい」という気持ちも強くなってきますね。これらは、自立への大切な過程です。
とはいえ、この時期は、自分で靴を履くとか、できると思ったことがうまくできず、子どもは癇癪(かんしゃく)を起こすことも。話せる言葉が少ないので、自分の思いをうまく表現できず、些細なことも「イヤ」「ダメ」などと拒否することが増えてきます。
親は「今までは素直だったのに、急に言うことを聞いてくれなくなった……」と苦労することが多いですね。
── 自我が強くなってきた子どもに、大人はどう接したらいいですか。
何かを拒否された時は、子どもの言葉や態度に何が込められているのか、すくい取って「代弁」してあげられるといいですね。
「イヤじゃないの!」とか「やりなさい!」ではなくて、「もっと遊びたかったのかな?」「お片付けしたくなかったんだよね」など、子どもが思っていそうなことを、いくつか言葉にしてみましょう。
どれかがヒットすれば、子どもは理解してもらえたことに安心し、落ち着きを取り戻します。
自分でなんでもやりたいという気持ちに対しては、「自分で決めた」という達成感を与えることが大切です。
物事を自分で考え、決めさせることは自立にもつながりますので、できる範囲で、何でも選択をさせてみてください。
── 子どもの好き嫌いは克服させるべきですか。
そうは思いません。好きな食べ物があるように、嫌いな物もあって当たり前です。好き嫌いが出てくるのは、子どもが人間として成長している証。無理して食べさせなくていい、子どもの意思を尊重していいと僕は思います。
例えばニンジンを食べなくても、ご家庭であれば、他の食べ物から必要な栄養素を摂取できますよね。
嫌いを克服させることに労力を割くくらいだったら、子どもが素直に食べてくれる物を出してあげて、空いた時間を全部子どもとの触れ合いに使ってあげた方がいいと思います。食べる量も、みんな違っていいんです。
■お着替えやおむつ替えを嫌がる時は「選択」で解決
── 着替えやおむつ替えについてはどうでしょう。「この服はイヤ」「おむつ替えしたくない」という主張に対して、どう接すればいいですか。
まずは「選択」が基本ですね。お着替えのときにおすすめしたいのが、Tシャツ、ズボン、靴下などの着替えをシュシュや輪ゴムで1つにまとめて、子ども用のお着替えかごに入れておくこと。
大人が「はい、これ着て」と言うのではなくて、子どもが自分でそのかごから選んで着るという習慣づけをしてあげてください。
おむつ替えを嫌がられた時、保育園では、2種類の絵柄のおむつを子どもに見せて「新幹線と消防車、どっちがいい?」と選んでもらうことがあります。
── パンパースから、子どもが自分で選んではける下着風おむつ「パンパースの肌へのいちばん* おにいさん/おねえさん気分パンツ」が発売されました。
1つのパッケージに2つの柄のおむつが入っていて、子どもに選んでもらえるのがいいですね。子どもは、「自分で決めた」という達成感を得ることができると思います。
見せる時は、消防車の「ウーウー」というサイレン音を真似したりすると、より子どもの興味を引くことができます。
また、「おにいさん」「おねえさん」というネーミングを生かして「ほら、おむつだよ」ではなくて、「おにいさんパンツだよ」「おねえさんパンツだよ」と声がけすると、子どもの自尊心をくすぐることもできるのではないでしょうか。
足を入れる場所が分かりやすくなっていたり、ウエストゴムがよく伸びたりする点も、 「自分で履きたい!」という子どもには嬉しいポイントですね。
■「自分でやりなさい」という言葉は自立を妨げることも
── 我が子の自立心を育むため、親が気をつけた方がいいことはありますか。
自立させたいと思うあまり子どもを突き放してしまうのは、逆効果になることもあります。
子どもにとって、親というのは「基地」のようなもの。自分を必ず受け入れてくれる基地があるという安心感があればこそ、外の世界へ冒険ができるようになっていくんです。
その冒険する世界が広がってくことが、自立だと思います。いくつになっても子どもが甘えてきたら、必ず受け止めてあげてください。
例えば、いつもは自分でできているお着替えやおむつ替えも、「やって」と子どもが頼ってきたら、拒否せずやってあげましょう。
親が1回やってあげたからといって、次から子どもができなくなるということはありません。
その代わり、子どもが「今日は自分でやってみたい!」という時には応援してあげてください。
■「子どもファースト」じゃなくてもいい。まずはパパママが幸せに
── てぃ先生は、保育士としてたくさんの家族を見てきたと思います。いま、子育てを頑張るパパママに、伝えたいことはありますか?
常に我が子に最善を尽くしたい、と思うパパママの気持ちは当然のこと。ただ、そんなに気負わなくてもいいんじゃないかなと思います。
「子どもファースト」じゃなくていいんです。
子どもは王様ではなく、パパママと同じ家族の一員なんですから、もっとパパママが主役の日があっていいと思います。
まずは、パパママが日常的に自分自身の好きな物事を選び実行する姿を見せること、そして子どもにも好きな物を選ぶ習慣をつけさせることが、子どもの自立にもつながっていくと思いますよ。
(写真:坪池順)