先日、日本で受動喫煙防止対策法案への反対運動が起きているというニュースを目にしました。
そして同時期に、チェコではたばこの日である5月31日から、レストランやカフェといった飲食店での喫煙が全面禁止されることを知りました。喫煙室は、空港やショッピングセンターでのみ設置が許可されるそうです。チェコでできたことが何故日本ではできないのか、両国を比較して考察しました。
チェコと日本の違い
これまで、チェコのレストランでは、喫煙を許可するか否かはお店の裁量に任されていました。
私の経験では、ほとんどのお店で店内は禁煙・テラスでは喫煙可、というルールが適用されていました。店内どこでも喫煙可能なお店もありますが、友人達はみな避けています。日本に多い、店内で喫煙・禁煙スペースを分けているお店は見かけません。
一方、バーやパブ、クラブなど、お酒を楽しむ場所は喫煙可能なお店が多いです。
意外かも知れませんが、チェコではバス停やトラム駅付近以外での路上喫煙は禁止されていません。「外では吸ってよい」という意識があるように思います。駅や路上での喫煙が禁止されている日本と逆です。
タバコのパッケージは、チェコでは大きく異なります。タバコの箱の大部分は吐血している写真や、実際の肺がんや口腔がんなどタバコによりリスクが高まる病気の写真で占められています。
これには、文字ではなく視覚的にリスクを伝えることで、危険性の認識を高めてもらう狙いがあるようです。警告文のみ記載され、スタイリッシュなデザインである日本のパッケージとは真逆です。
成熟した個人主義と禁煙法との関係
EU28カ国中、既に17カ国が禁煙法を設けています。この背景には、ヨーロッパの喫煙者と非喫煙者に対する二つの考えがあると思います。リスクを知った上で個人が喫煙することは、自己責任に重きをおくヨーロッパでは個人の選択として認められています。
ただし、それと同時に喫煙による被害を受けたくない人の権利にも注意をむけようとする考えもあります。喫煙する権利を認めますが、受動喫煙による健康被害を受けない権利もまた認められているのだと思います。
チェコでも反対意見が多かった喫煙全面禁止案
チェコでの飲食店での喫煙全面禁止案は、日本と同様に主にバーやパブから反対を受けていました。政府側はこの法律を制定する為に、要求していた項目のうちの「少なくとも一つのノンアルコール飲料をアルコール飲料より安く提供すること」を取り下げることで対応したようです。
これは、水よりもビールの方が安いお店があるチェコの現状に寄り添った妥協となっており、日本では同様の妥協案は通用しないでしょう。
OECDによると、2014年の喫煙者の割合は日本が19.6%、チェコは22.3%でした。約80%という大部分を占める非喫煙者の健康を守ろうとする動きは、妥当です。
チェコのミロシュ・ゼーマン大統領は喫煙者であり、一時期は喫煙禁止に反対していたそうですが、今年の2月に禁煙法に正式に署名しました。ボフスラフ・ソボッカ首相は「この法案は、チェコ共和国を、国民の健康を守る文明国になし得る」と述べたそうです。私もその考えに賛同します。
それに対して、政権与党の議員が法案成立に反対している日本の現状に、先進国かつ長寿国であり、2020年にオリンピックを控えている国の国民として暗澹たる気持ちになります。
日本での受動喫煙防止法案受理を望みます
受動喫煙が原因で年間1.5万人が死亡しているというデータがあります。私にはこれは、本来あるべきではない死亡原因に思えます。
受動喫煙防止法案に反対している喫煙者の方には、自身が喫煙する権利を認められていると同時に、非喫煙者が健康被害を受けない権利を持っていることを認識してほしいです。
チェコでは未成年の喫煙や飲酒、肥満、アルコール中毒といった健康問題を抱えていますが、健康対策の一歩を今回踏み出しました。
それに対して日本はどうでしょうか。「おもてなし」の文化を持つ日本がより他人に配慮でき、国民の健康状態を考慮する国となることを願っています。