パリオリンピックの開会式が「悪魔的」「キリスト教への冒涜」だとアメリカの一部保守層の怒りに火をつけ、ネット上でさまざまな議論を引き起こした。
この批判に対し、大会主催者は演出の意図はまったく異なると説明している。
保守派の一部が問題にしたのは、全身青い、ほぼ裸の人物が長テーブルの上に置かれた皿から登場して、歌や踊りを披露する場面だ。
長テーブルの周りにいたドラァグクイーンなどのパフォーマーらも、青い人物と一緒に音楽にあわせて体を揺らした。
この演出を見た保守派の一部は、「ドラァグクイーンを起用した、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品『最後の晩餐』のパロディー」だと主張した。
「最後の晩餐」は、イエス・キリストが、十字架にかけられる前夜に12人の弟子たちとともに食卓を囲む様子を描いた作品だ。
ドナルド・トランプ・ジュニア氏は演出を「悪魔的 」と批判。共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は「オカルト」と呼び、マイク・ジョンソン下院議長は「信仰に対する大規模な戦争の一部」と主張した。
イーロン・マスク氏も「キリスト教徒に極めて失礼だ」と投稿している。
一方で、オリンピックの公式Xアカウントは開会式の途中で、青い人物は「ギリシャ神話の神ディオニュソス」であり「人間同士の暴力の不条理さを私たちに気づかせてくれる」と投稿している。
開会式の芸術監督を務めたトーマス・ジョリー氏も、演出はギリシャ神話に登場するワインと豊穣の神「ディオニュソス」のオマージュだと説明。「『最後の晩餐』のパロディ」という主張を否定した。
ジョリー氏は、「誰かを馬鹿にしたり、侮辱したりする気持ちは全くなく、オリンポスの神々とつながる異教徒を祝うという考えに基づいている」と28日にフランスのテレビ局BFMTVに語った。
また、パリ2024大会の広報は28日、演出が「最後の晩餐」やキリスト教とは関係がなかったことに言及した上で、「もし不快な思いをした人がいれば申し訳なかった」と謝罪した。
ソーシャルメディアには、保守派の批判に対する問題提起も投稿されている。
インフルエンサーでLGBTQ+活動家のマット・バーンスタイン氏は、「演出は『最後の晩餐』ではなくディオニュソスを再現したものだが、たとえこれがキリスト教に言及したものだったとしても、何が問題だというのか」とインスタグラムを通じて疑問を投げかけた。
「なぜ『トリビュート』ではなく『パロディ』扱いするのでしょうか。ドラァグクイーンはキリスト教徒にはなれないのでしょうか?」
他にも「『最後の晩餐』はこれまでもアニメやドラマで何度も再現されてきたのに、ドラァグクイーンが演じたとたんに問題視される」という指摘も投稿されている。
パリ五輪の開会式では、マリー・アントワネットに扮したと思われる人物が、自身の生首を抱えて登場する演出もあった。
「マリー・アントワネットはフランス、ディオニュソスはギリシャ、ヘビーメタルは単なる音楽、ドラァグクイーンはパフォーマンスアートだ。すべてがあなた一人のために行われているわけではない」という意見もソーシャルメディアに投稿されている。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。