PT2の表彰式はアメリカチームの独占だった。式の前にスタッフがビーチに集まっていた観客を近くに呼び寄せ、会場はギャラリーに囲まれていた。
8月1日、2016リオパラリンピックのテストイベントを兼ね開催されたWPEパラトライアスロン(世界パラトライアスロンイベント)は、9時30分にレースがスタートした。通常のWPEイベント同様に、全クラスから60名の選手により開催されたが女子は、PT2、PT4、PT5のパラリンピック出場3クラスのみがエントリーしていた。日本人はウエイティングで現地へ来ていた選手も含め、4人全員がコパカパーナ・ビーチでのレースに出場した。
立位のPT2、4の男女から始まり、座位(PT1)、視覚障害、立位(PT3)とシフトしながら、午後2時すぎまで5回にわかれて、浮き島からスタートした。
横浜大会で優勝したPT2の秦由加子(マーズグラッグ・稲毛インター)は6名中3名がアメリカからで、トップ3を奪われ、秦は5位、タイムはいつもよりわずかに遅い1時間34分45秒と厳しい結果となった。
秦由加子のスイムアップ。女子PT2トップ、ともにスタートした2つ障害の軽度の女子PT4とあわせても2位で通過。
「シーズンの初めからほぼ同じメンバーで戦っています。横浜大会では勝つことができましたが、その後、相手は力をつけてきているのを感じます。練習の時より、波の状態は穏やかで泳ぎやすく、バイク、ランも問題なく終えることができました。炎天下の中で体力が途切れることがなくフィニッシュでき、さまざまなレースに対応できるようになった。課題はやはり、義足の調整とランにあります」と秦は話した。
フィニッシュエリアで、義足のソケットが汗で外れそうになるのを調整しながらフィニッシュした秦。課題は義足の調整とランにあるとのこと。
男子PT4は、ドイツのSCHULZ MARTIが59分11秒で優勝。佐藤圭一(エイベックスホールディングス)は、ウエイティング状態で渡航し3日前の7月29日にスタートリストに掲載されて出場。14人中11位でフィニッシュ。トータルタイムは1時間7分53秒だった。
佐藤圭一(PT4/エイベックスホールディングス)のスイムアップ。このレースで佐藤は課題のスイムのタイムをいかに知縮めるかに取り組んだ。
「トップ3が出てきて、レベルの高い試合となった。自分は、予定通りのレースができた。課題のスイムでどこまで世界との差を縮められるかに挑戦したレースだった。ほかは、トランジッションだけはトップを狙っていたが、なかなか勝たせてくれない」という佐藤。課題のスイムのタイムは13分台で、自己ベスト(オーシャンスイム)だった。しかし他の選手は11分台には帰ってきており、依然として水をあけられていた。
「海外の選手は長い経験を積んできている。自分はまだ2年で、始めたばかり。リオでの出場というより、今後10年、東京の後を見通して競技をしていきたい」と佐藤は話していた。
レース前日に欠員が出て、急遽出場が決まったPT1木村潤平(ABCキュービック)は、12時45分に無事スタートした。木村はランの1週目で転倒も、危機を乗り越えて完走した。11人中10位。最下位を免れた。
木村潤平(PT1/ABCキュービック)フィニッシュエリアでのラン
「実力がともないませんでした。スイムはいつも通りできたが、バイクの段階で大きく遅れをとってしまった。朦朧としていたため、ランで転倒。完走しなければ、という想いで、フィニッシュに向かいました。出場できたこと、完走できたことは良かった。コースはトランジット前後の坂があるが、自分の技術の問題です」
と、木村。水泳との2種目で来年のパラリンピック出場をめざす。
午後2時18分18秒にスタートした女子PT5(視覚障害)は、山田敦子(アルケア)とガイド脇真由美は、スイムはうまくいったが、その後に選手とガイドでペースを合わせることが難しくなりガイドが体力を消耗するなどのアクシデントがあったが、最終のランでブラジルの選手を抜きさり、出場9組で7位だった。
山田敦子(アルケア)とガイドの脇真由美氏によるバイク。午後スタートになったPT5(視覚障害)のレースは、バイク、ランの時間帯は日差しが翳っていた
「リオでの試合に出場でき、よかった。また来年、ここに来たい」と山田は悔しさの残るレースだったが、笑顔をみせた。
エントリーリストへの掲載をめぐる浮き沈み、水質問題の浮上、不安、転戦の控える競技活動の厳しさなどさまざまな経験をした4人だが、疲れのなかでも、リオパラリンピック本番のコースを完走したことは、今後の自信につながっていくことと信じる。
レース後、富川JTUパラリンピック対策プロジェクトリーダーに今回の感想を伺った。
「WPEのひとつとしてポイントを稼ぐのが目的のレースでしたが、リオで開催されるということで、世界からパラリンピックを目指す選手が出場しました。開催地で実際のコースを体験し、レースをしたという経験、町や会場にも慣れておくことができたことは、来年の本番のレースにも集中しやすいと思います。できるだけ本番に近い状況を作るため2名のケアスタッフも帯同しました。もちろん、スタッフも現場をわかっておく必要があります。
今回は、エリートのみのチームで、オリンピック・パラリンピックの選手の交流の機会がありました。オリンピック選手から学ぶことがあると思うので、これを機会に、ぜひウォーミングアップやコンセントレーションの様子などを勉強して欲しい」
トライアスロンのシーズンは、ちょうど中間地点、リオへのトライアスロンへの参照レースとしては2戦目で始まったばかりとなる。日本代表として、トライアスロンでの挑戦をめざす選手たちには、次回8月16日にスービックベイ(フィリピン)でのレースが控えている。このアジアでの大会に日本からは4人を含む13人(男子11・女子2)が出場する。今後も注目していきたい。