アメリカ・オハイオ州南部地区地方裁判所は10月20日、コロンビアで暮らす100頭近くのカバたちを、法的に人間と同等とみなす判断を示した。
人間同等の扱いをされることになったのは、コロンビアの麻薬王だった故パブロ・エスコバルが所有していたカバの子孫たちだ。
動物が法的に人間同等だという判断が示されたのは、アメリカでは初めてだ。
カバたちの駆除を阻止する闘い
この判断を巡り、アメリカの動物保護団体「アニマル・リーガル・ディフェンス・ファンド(ALDF)」が、原告であるカバたちのために野生生物専門家が裁判で証言できるよう求めていた。
裁判所が申請を承認したため、アメリカの歴史で初めて、カバたちが法的に人間と同等の存在として認められたことになった。
ALDFは、申請が認められた同日に、コロンビア政府に対してカバの駆除計画中止を求める申請もした。
より安全な避妊を
カバたちは、エスコバルが私設動物園のために密輸した4頭のカバの子孫だ。1993年にエスコバルが死去した後、コロンビア政府がカバたちを放置したため、自由の身となったカバが繁殖し、現在の頭数にまで増えた。
増えすぎたカバが地元の生態系にダメージを与えているとして、カバの駆除を求める声が上がっていたが、コロンビアのルイス・ドミンゴ・ゴメス・マルドナード弁護士が2021年7月、カバの代理人として駆除しないよう求める裁判を起こした。
ニューズウィークによると、マルドナード氏は駆除ではなく安全な避妊薬の使用を訴えていた。ところがコロンビア政府が10月に入ってから、カバたちの一部にゴナコン(GonaCon)と呼ばれる、マルドナード氏が求めるのとは別の避妊薬の投与を開始した。
コロンビアの法律は動物に対して、自身の利益を守るために裁判を起こす法的地位を認めている。しかし同国の法律制度では、アメリカ在住者が裁判を支援する証言をすることはできない。
一方でアメリカの法律は、コロンビア在住者がアメリカの連邦裁判所に対して、証言を求めることを認めている。
そのため、ALDFがコロンビアのカバの代理人となって、オハイオ州在住の野生生物専門家たちに裁判で証言させるよう、オハイオ州南部地区地方裁判所に求めていた。
ALDFによると、野生生物専門家のエリザベス・バークレー氏と、リチャード・バーリンスキ氏が、より安全とされる避妊薬「PZP」の使用を裁判で推奨する予定だという。
裁判所の判断を受けて、ALDFのスティーブン・ウェルス氏は「動物には残虐な行為や搾取から逃れる権利があります」「カバは法的権利を行使できると認めた裁判所の命令は、動物の権利を巡る闘いの画期的な節目になった」と声明で発表した。
また同団体のエリザベス・プッチ氏は「コロンビア政府がカバを駆除しないよう、監視を続けていく」とハフポストUS版に述べた。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。