可愛らしい姿から、日本でペットとして人気を集めていた東南アジア原産の「コツメカワウソ」が、輸出入が禁止される見通しとなった。絶滅の危機から救うのが目的だった。
■輸出入は原則禁止。国内流通も規制へ
環境保護団体「WWFジャパン」によると、ワシントン条約締約国会議がスイスのジュネーブで開かれ、小委員会で8月25日にビロードカワウソ、26日にコツメカワウソが、ワシントン条約の「附属書I」に掲載することが賛成多数で可決された。会議最終日の28日に全体会合で正式決定される。
これにより、両種は輸出入などの国際取引が原則禁止されることになる。日本でも「附属書I」に掲載された野生動植物を、「種の保存法」に基づき、国内での商業取引を原則として禁止しているために流通が規制される方向だ。
NHKニュースによると原田環境大臣は27日の記者会見で「最終日の全体会合の採択結果を踏まえ、今後、国内の流通も規制するべく種の保存法などで国際希少種に指定してきたい」と述べた。
WWFジャパンでは「コツメカワウソを『かわいい』愛玩物として盛んにもてはやす、日本のメディアや市民の意識も変えていかねばなりません」と指摘した上で、「日本での暮らしや、その中で生じるさまざまな需要が、野生生物を絶滅のふちに追いやっている」と警告している。
■コツメカワウソとは?
日本大百科全書などによるとコツメカワウソはイタチ科のカワウソの一種。インドからスマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島、中国南部など東南アジアを中心に広く生息している。
カワウソ類のなかでは小形の種類で、頭胴長約60センチ、尾長約30センチほど。四肢の爪が小さいことから「コツメカワウソ」の名前がついた。河口や海岸に小集団をつくって生活するものが多い。カニやザリガニなどの甲殻類や魚類などを捕食している。
生息地である水辺の開発や密猟などにより、絶滅のおそれが心配されている。WWFジャパンによると、過去30年間で野生のコツメカワウソの個体数は、およそ30%減少したと推定され、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「危急種(VU)」になっていた。一部の生息国では捕獲や取引が規制されているなど、保護の対象だ。
■『天才!志村どうぶつ園』がきっかけで大人気に
日本では、2012年ごろからコツメカワウソの愛らしい姿が大人気となった。日本各地に「カワウソカフェ」が出来たほか、ペットとして需要が高まった。それに伴って、カワウソ類が生息するタイやインドネシアから日本への密輸が急増していた。
WWFジャパンの野生生物取引監視部門「TRAFFIC」は2018年10月、日本のカワウソブームにともなう密輸急増を受け、その取引実態に関する報告書を発表した。
この報告書ではカワウソのペット人気を押し上げた要因として、日本テレビ系で放送された動物番組『天才!志村どうぶつ園』を挙げた。同番組では、ブーム以前の2007年から2014年にかけて、コツメカワウソを長期間にわたって取り上げていた。
番組内容について「カワウソが著名人と一緒に旅行したり、自宅で飼育したりといった擬人的な状況の中で 演出されており、カワウソが実際よりもより身近な生き物でペットにもなりうるというイメージを視聴者に植え付けた可能性が考えられる」と指摘した。
2000年から2017年にかけて起きた、日本が関係する東南アジアでの押収事例を調べたところ、少なくとも7件、合計52頭のカワウソが日本を密輸の目的地としており、そのうち17頭はコツメカワウソだった。
確認できただけで2011年以降に12人の販売者が少なくとも85頭のカワウソを販売していた。そのうちの約9割に当たる74頭はコツメカワウソだった。カワウソの1頭あたりの販売価格は80万円~162万円で、過去5年間で約2倍になっていたという。