老子、論語…東洋思考をインストールし、変わりゆく世界をサバイブするための1冊

《本屋さんの「推し本」 ジュンク堂書店・家田和明の場合》

はじめまして。ジュンク堂書店ロフト名古屋店、社会・ビジネス書担当、家田和明です。

ふだんは、“書店員”と同時に“バンドの裏方”もやっていたりします。茨城や幕張で開催される音楽フェスなどの舞台裏でお仕事していることも。

“書店員”と“バンドの裏方”、この2つはコンテンツを扱うという点で共通点が多く、相乗効果があるように感じています。

その共通点は、「著者/ミュージシャンが伝えたいことを読者/リスナーへ伝える、そのサポート」だということ。

なので、そういった「発信者〜︎受け手の間のこと」をくみ取ったり、「トレンド(変化)」を感じ取るのは、わりと得意かもしれません。

中継地点にいるから、見えやすいこともあったり…。 おっと、前置きはほどほどに。

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このブログは、そんなぼくが、書店員の立場から「今」気になっている本、推したい本、を紹介するというものです。

その1冊はこちら⬇︎

田口佳史『なぜ今、世界のビジネスリーダーは東洋思想を学ぶのか』(文響社)
田口佳史『なぜ今、世界のビジネスリーダーは東洋思想を学ぶのか』(文響社)

田口佳史『なぜ今、世界のビジネスリーダーは東洋思想を学ぶのか』(文響社)です!

この本は、昔からたくさん出ている東洋思想の本の中で、なぜ「今」東洋思想が必要なのか、という視点で書かれている、今のところ珍しい1冊です。

とはいえ、「今」って、どれくらいのスパンにおける今…? 今日? 今週? 今月? 平成が終わる今? 10年? 100年? 1000年? それ以上?

人類の歴史の中で、今、ってどこ? 地球の歴史で、宇宙の歴史で、今、って???

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では、少しだけ、「現在の様子」を確認してみます。

(ぼくは書店員ですので、いろんな本に書かれていることをピックアップしてみます)

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ときは西暦2019年3月(今日は17日)

目に見える世界では、あまり変化していないように見えるのに、ネット上では、得体の知れない変化が起きていて驚く…

世界のルールが、毎日変わっていく… 昨日の当たり前は、今日役に立たないかもしれない…

中央集権型の社会から自立分散型の社会へ

ブロックチェーンと信用革命、資本主義から価値主義への認識革命

所有からシェアへ

場所や移動の意味が書き換わる、モビリティ革命

まもなく開始する5G通信、いつか来る量子コンピュータの普及

AIによる人間のサポート、指数関数的なテクノロジーの進歩…

それによりぼくら人類は、神にも似たチカラを手にすると予想する人もいます。 一方で、その予想は、西洋の近代的な視点によるものだと捉える人もいます

ならば、「東洋の」「現在の」僕たちは、今の世界をどう捉え、どんなアクションをしていくといいのでしょうか?

未来はユートピア? それとも、ディストピア?

安心して生きていける、望ましい未来ははたして、あるのでしょうか?

では、この本『なぜ今、世界のビジネスリーダーは東洋思想を学ぶのか』を開いてみましょう。

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■この本のテーマ①

「今起きている『七つのパラダイムシフト』と、そこに共通する『東洋思想』」

この本の著者は、まず今の世の中の変化を次の七つにまとめています。

①『機械的数字論』から『人間的生命論』へ

②『結果主義』から『プロセス主義』へ

③『技術・能力偏重』から『人間性重視』へ

④『見える世界、データ主義』から『見えない世界、直感主義』へ

⑤『外側志向』から『内側志向』へ

⑥『細分化・専門化型アプローチ』から『包括的アプローチ』へ

⑦『自他分離・主客分離』から『自他非分離・主客非分離』へ

ふむふむ…!

つまり、西洋的な考え方から、東洋的な考え方へ変わろうとしていると…。

なるほど。

そして、その色んな変化に共通しているのが『東洋思想』であると…(このキーワードでいまいちピンとこなかったら、ぜひ本書を読んでみてください。最近の思い当たることばかりで、スッキリわかると思います)。

そして、次…

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■この本のテーマ②

「西洋と東洋の知の融合」

この本の2つ目のテーマは「西洋と東洋の知の融合」です。 著者は、今、世界が東洋の考え方/思想を求めている、といいます。

「思想」というと、ちょっと難しく感じる方は、「コンピュータのOS」と考えてみてください(Mac、Windows、etc.)。

今、西洋は自前のOSをアップデートできずに困っています。そして、その解決法として、東洋のOSを参考に進化させようとしています(マインドフルネス、禅、仏教、Mottainai、Ikigai、etc.)。

一方、日本も、明治以降、近代西洋のOSを取り込んできました。しかし、もとは東洋的であったぼくら日本は、西洋に歩み寄ったものの、現在、このやり方ではうまくいかないことに気づきつつある。

ならば一度、ぼくら日本ももともと持っていた“東洋的な視点/思想/OS”について、考えてみよう、と。

僕たちは何を捨ててきてしまったのか。 もしくは、持っているけど当たり前すぎて気づかないことは何か。

それをこの2019年の今、数百年単位で思い出そう、おさらいしよう、断捨離しよう、ルネッサンスしよう、としているように、ぼくには見えています。

では、ぼくたち日本人は、「今」そして「これから」、どういった役割を果たすことを世界から求められているのでしょうか? 地球という生態系において、日本人の果たす役割とは??

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まずは、本書の「はじめに」を読んでみてください。

この「西洋と東洋の知の融合」というテーマは、ビジネスシーンだけの話ではなく、これからの僕たちの生活や人生、ひいては世界の平和にもつながるかもしれないことを予見させてくれます。

東洋思想は、経済と文明とが同時に大転換するという、今の世界の変化の謎を解く鍵であり、また、新たなる未来へと導く光となっていくことでしょう。

ちなみに、この本は文字もやや大きめで、読みやすい文体です。古典系のジャンルには珍しく話し言葉に近い感じなのもオススメです!

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この本は、最近のビジネス書のトレンドにもフィットしています。

「真・善・美」のうち、「美意識/アート」に重きをおき、 「東洋思想」の中でも、孔子(論語)/孫子(兵法)だけではなく、「老子」を重要視する。

本書のサブタイトルは、「史上最高のビジネス教養『老子』『論語』『禅』で激変する時代を生き残れ」なのですが、これについて、とある出版社の営業担当さんと「老子が先頭に来ているのが最高だ!」と、2人で固く握手を交わしました。

その営業の方は、大人になる前から古典をたくさん読んでおり、ぼくとは異なるルートの人生を通りながらも、出会って間もなく、古典について熱く会話をすることができました。

本を接点に、会話ができる尊さ。力が半減したテレビや、速すぎるインターネットでは得られない、会話のための共通の話題があることの有り難さ。

重要なのは、2人とも懐古的な話をしていたわけではなく、あくまで「現在」の話をして、ここにたどり着いているということです…!

その頃ぼくは、人生の先輩とも言える、東洋思想の大家たちの関係性と、その思想の僕自身への活かし方について、モヤモヤしたままでした…(人数が多いし、互いに矛盾もしているし、笑)。

しかし、先ほどの営業担当さんと“会話”をしたことで、スッキリと整理されて、次のような考えに至りました。

それは、「僕らの内側のメンタリティや世界の捉え方を、老子や華厳経的なOSで駆動させることで、内なる心の平穏を保ち(主)、

僕らの外側/俗世に潜んでいる悪意/敵意に飲み込まれないようにするために、社会をサバイブするために、(あくまで)アプリ的に論語や兵法を使う(従)、 という考え方(処世術)」。

つまり、ベースにおくべきは孔子/孫子ではなく、老子的なものであるということ(例えるなら、MacOSの上でWindowsOSを走らせる、みたいな)。

さらにこれからは、それらを主従なく、(また矛盾をも)統合して乗り越えていく。

その思想の上で、今、現実にできるアクション/行動指針としては、論理や倫理のみに正解を求めるのではなく、正誤のみで判断しない「美(意識)」に重きをおこう、と。

そこで、東洋人で日本人であるぼくは、まず「和」服、着物を着ることにしてみました(まずは休日のみ)!

思考や感性を変えるには、まず身体感覚から変えると効果が大きいと思うので、ときにはカタチから入るといいはず。「楽しいから笑顔になるのではない、笑顔でいるから楽しいのだ」的なことです。

余談ですが、名古屋が地元の人間にとっては、名古屋の伝統工芸を使っていきたいですね。名古屋友禅に名古屋黒紋付染めの組み合わせ。はぁ…ステキ…。

これは、土地や場のアイデンティティやセンスオブプレイスを強化する、個人の取り組み。しかも、着物は体感の感度を増幅できる気がしているので、「洋」服のように人間を自然から分かつのではなく、人間をグリーンインフラと接続するにもふさわしいのでは、と。

おっと! 個人的な話はほどほどに…。

 *

ときは、21世紀、2019年。

今や、幸福は山の上にはなく、持続可能な道の先に続くという…。

とはいえ、その道の先はどこにつながっているのか。誰にもわかりません。

ただ、今の時代が、かつてよりも未来への見通しがききにくいからといって、歴史や時間の流れに逆張りして(逆らって)、せっかく振り絞ったエネルギーをムダにしてほしくない…。

ぼくら人間がそれぞれの人生をかけて生み出すエネルギーを、少しでもムダにしてほしくない…。

そのとき、時代の大きな流れをつかんでいれば、「時代と併走する意思」を持っているならば、生み出したエネルギーは、目に見える成果として積み上がっていくのかもしれません。

その場でウロウロしながら、ぐるぐる回ってしまう思考も、時代の大きな流れをつかんでいれば、矢印のカタチのように、一点へ向けて伸ばしていける。

そのときの手助けにも、この本が与えてくれる視点は大いに役立つことでしょう。

まだまだ、ウェブには上がっていない「知」が、本や書店にはあります。 情報ではなく、問題を発見し解決するための思考の元となる「知性」が。

そこに、自身の知見で信ぴょう性を与え、理想の未来/ビジョンを想像してみる。そうすることで、得体の知れない不安の暗雲から解放され、人生を人類を世界を、望ましい未来へと進ませることができる。

今回、この本の存在を知り、未来の光が少し大きく見えるようになった方もいるかもしれません。

得体の知れない未来が来てからうろたえるか、もしくは、先に希望を見出し、みんなを導くような存在になるか。

世界は今、「東洋と西洋の知の融合」を求めています。 どちらかのみではなく、お互いに補い合う、協力関係。

その中で、日本人は、世界から、どう振る舞うことを求められているのでしょうか?

この続きは、ぼくも今考えているところです。 願わくば、多くの人とそれを一緒に考えたいし、対話をしたい。

「『人』と『会話』を大切にしたい」

ぼくは、「本」が、その間をつなぐものになることを願っています。

 *

おわりに…

データ上ではなく、フィジカル(質量がある物体/ブツとして)の本が動くことの、脳や世の中への影響力は、いまだ健在です。

ぼくという、フィジカルが、真心とともに書店でお待ちしております。

しかしながら、本だけでもなく、インターネットだけでもなく、やはり願うのは、「もっと、人と人との、会話を」。

追記

ぼくが上記の考えなどに至った経緯で、とても勉強になった本がたくさんあります! なので、この場を借りて、何点かご紹介です!!

新井和宏『持続可能な資本主義』

家入一真『なめらかなお金がめぐる社会。』

佐藤航陽『未来予測の技法』

菅付雅信『これからの教養 激変する世界を生き抜くための知の11講』

そして、さらに、今回オススメの『なぜ今、~東洋思想を学ぶのか』のネクストステップとしてはこちら。

『脱近代宣言』

今回の脱近代はガチ!ってことがわかります。個人的には、このあたりの話題で会話ができる人と機会が増えたことに猛烈感謝!

『デジタルネイチャー』

本命!!(ハードモードだけど…)

『ジェダイの哲学』

デジタルネイチャーが、なんのことやら? という方はこちら。フォースと華厳経的世界観をイメージしやすくなるかも。

それでは、どうぞお楽しみください!

連載コラム:本屋さんの「推し本」

本屋さんが好き。

便利なネット書店もいいけれど、本がズラリと並ぶ、あの空間が大好き。

そんな人のために、本好きによる、本好きのための、連載をはじめました。

誰よりも本を熟知している本屋さんが、こっそり胸の内に温めている「コレ!」という一冊を紹介してもらう連載です。

あなたも「#推し本」「#推し本を言いたい」でオススメの本を教えてください。

推し本を紹介するコラムもお待ちしています!宛先:book@huffingtonpost.jp

今週紹介した本

田口佳史『なぜ今、世界のビジネスリーダーは東洋思想を学ぶのか』(文響社)

今週の「本屋さん」

家田和明(いえだ・かずあき)さん/ジュンク堂書店 ロフト名古屋店(愛知県名古屋市)社会/ビジネス書担当

どんな本屋さん?

若者が集う栄のナディアパーク内にあり、約80万冊のストックを誇る、東海地区最大級の品ぞろえの書店です。「ロフト名古屋」の地下1階と7階が売り場になっています。なかでも7階の社会ジャンルのコーナーでは若者向けの商品陳列に力を入れていて、お店の特色が出ているので、足を運んだ際はぜひ見ていただきたいです。

撮影:川島理(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

(企画協力:ディスカヴァー・トゥエンティワン 編集:ハフポスト日本版)

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