安倍晋三首相が大阪市内で開かれたG20サミットのあいさつで、大阪城の天守を復元した際にエレベーターを設置したのは「大きなミス」と発言した。これに対して「障害者への配慮が足りない」などと批判が相次いでいる。
安倍氏は、サミット初日の6月28日夜に開かれた夕食会のあいさつで、「ようこそ大阪にいらっしゃいました」と地域の歴史について紹介した。NHKニュースによると、その際に次のように述べた。
「大阪のシンボルである大阪城は、最初に16世紀に築城されました。石垣全体や車列が通った大手門は17世紀はじめのものです。150年前の明治維新の混乱で、大阪城の大半は焼失しましたが、天守閣は今から約90年前に、16世紀のものが忠実に復元されました。しかし、1つだけ、大きなミスを犯してしまいました。エレベーターまでつけてしまいました」
この発言について「バリアフリーを愚弄する」「悲しい気持ちになる」いった批判がネット上で続出している。
なお、大阪城の天守は、鉄筋コンクリート造で1931年に完成したものだ。16世紀の「大坂夏の陣図屏風」に描かれた豊臣時代の天守の姿をベースにしているが、忠実な復元ではない。
Twitter上での多くの専門家が、安倍首相のエレベーター発言に対して批判的な意見を述べている。
■城郭研究者の千田嘉博・奈良大教授
「健常者だけが、復元した大坂城天守に上がれればよい、エレベーターは最大の誤りだったと、G20で世界の首脳に総理自ら堂々と語るというのは、もはや悪夢でしかありません。本当に悲しいです」 (6/29のTwitterより)
■障害者教育を研究している亀井伸孝・愛知県立大教授
「このスピーチだけは絶対に容認できない。バリアフリーを愚弄し、ネタだと思って言い放ち、完全に無視されて、世界に恥をまき散らかした。人権無視の政府であることを、自ら体現した。大阪城にエレベータを付けた、大阪の人たちの先見の明を讃えたい。恥ずかしい首相を即刻変えたい」 (6/28のTwitterより)
■「五体不満足」などの著作がある作家の乙武洋匡氏
「朝から、とっても悲しい気持ちになる」(6/29のTwitterより)