新型コロナウイルスは今後の都市交通のあり方も変えそうだ。イタリアの中でも感染拡大が最も深刻とされる北部ロンバルディア州のミラノは、ロックダウンの解除後、主要なショッピング・ストリートなどの車道を削減し、住民らが少しでも距離を置いて通行できるように歩道・自転車道を試験的に増幅する方針。公共交通の混雑を緩和し、移動による感染拡大を押さえる安全策だが、二酸化炭素の排出量削減も期待される。米ニューヨーク市でも感染拡大防止策として、歩道・自動車道を拡張する法制化が進み始めている。(サステナブル・ブランド ジャパン=小松遥香)
英紙ガーディアンは21日、「欧州で最も野心的な対策」と新たな「オープン・ストリート計画」を報じた。金融・産業都市ミラノの中でも多くの人が集まるブエノスアイレス通りなど距離にして約35kmで歩道・自転車道が拡張されるという。マルコ・グラネッリ副市長は自身のフェイスブックで詳細を明かし、低コストの仮設自転車レーンや歩行者・自転車優先道の設置、時速30kmの速度制限などが実施される。ミラノは全長約15km。人口約140万人のうち55%が通勤にバスや地下鉄、トラムなど公共交通機関を利用しており、新計画の実施による感染拡大防止の効果が見込まれる。
同副市長はガーディアンの取材に対し、「経済活動を再開させたいのはもちろんだが、これまでとは違う前提をもとに進めていくべき。われわれは新しい状況の中で、ミラノを再構築しなければならない」とポストコロナの経済活動の方針について語り、イタリアが誇る文化を支えるバルやレストラン、職人への支援が重要とした。
欧州宇宙機関(ESA)の観測データによると、ミラノは現在、大気汚染の原因物質である二酸化窒素の濃度が昨年の同時期と比べ約45%下がっている。ミラノは大気汚染が深刻で、1月末には日曜日の自動車使用を禁止することが検討されていたといわれる。この大気汚染については、独マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルクの研究者Yaron Ogen氏が20日、欧州の大気汚染が深刻な地域ほど新型コロナウイルスの感染による死亡率が高い傾向にあると指摘。長期的な大気汚染への曝露により呼吸器への負担が高まることが感染による死亡率の高さにつながるとし、「地球環境を毒することは、自らの体を毒することにもなる」とガーディアン紙に語っている。
地球温暖化の要因でもある二酸化炭素については、ロックダウン以降、EUの1日あたりの排出量がほぼ60%下がったと英紙フィナンシャルタイムズが報じている。とりわけ、EUの中で最も経済的な打撃を受けているイタリア、フランス、スペインの3カ国の排出量の減少率は最大という。
イタリア経済のエンジンと称され、経済復興の命運を握るといわれるミラノ。国内でも富裕層の多い地域であり、感染者数が最も多い地域。イタリアでは5月4日からロックダウンが段階的に緩和される予定だが、ミラノはいつ解除されるのか。ブルームバーグは、ミラノを首都に置くロンバルディア州の産業界や政治家がジュゼッペ・コンテ首相に通常の経済活動への早期復帰を求め圧力をかけていると報じている。いずれにしても、深刻なコロナ危機を経験している国際都市として、ミラノと拠点を置く企業、住民などがどのような未来を描き、経済を立て直すのかに注目が集まる。
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