女性の約8割は、生理痛・PMS、頭痛などの不調を我慢しながら仕事や家事をしているという(※1)。ツムラの#OneMoreChoice プロジェクトは、「生理のつらさを、我慢しなくていい社会へ。」をスローガンに、不調を我慢する以外の選択肢が取れる社会を目指している。2021年にスタートし、調査や対話のきっかけづくりなど、多様な活動を積み重ねてきた。
今回、#OneMoreChoice プロジェクトとハフポストは、生理・PMSの不調にまつわるコミュニケーションに注目。生理・PMSの課題に関心のある20代前半の座談会、有識者座談会、ツムラ担当者・ハフポスト泉谷編集長座談会の全3回の記事を配信する。
第1回の本記事では、生理・PMSの課題に関心のある20代前半の女性3人の座談会を実施。生理の課題に関するコミュニケーションをどう考えているのか?リアルな声を聞いた。

話すきっかけづくりは大事。でも、多様な視点も大切に
── #OneMoreChoice プロジェクトは、多様な生理のつらさを可視化するなど、様々な活動をしてきました。2024年には「第2回生理・PMSの本音と理解度調査」(※2)を実施し、3人に1人が生理・PMSについて言いづらさを感じていることがわかりました。さらにその中の約8割は「もっと気軽に伝えたい」と回答しています。

── そこで、身近な人と生理について話すきっかけをつくるため、同プロジェクトでは、「ちょっと生理いま邪魔しないでよプリ」という一人ひとり違う生理痛・PMSによるつらさが、キャラクターとなって写りこみ、日常生活への影響を表すプリント写真機の体験型イベントを企画しました。このプリント写真機は、生理に関するアンケートに答えると、その人の生理のつらさを表現した「じゃまするず」というキャラクターが撮影画面に現れるものです。イベント告知後、SNSなどで様々な意見(下記一例)があり、ツムラは中止の判断をしました。みなさんはどう感じましたか?

戸田:話すきっかけづくりは本当に大事だと思います。以前に大学のゼミで、生理について話し合った時、生理による症状が重い子が「スッキリした。今まで話していいと思っていなかった」と言ったんです。もちろん話すことを強制したいわけではないけど、「本当は言いたいのに言えない人」や「言っていいという認識がない人」もいると思うんです。

田野:私は大学院でスポーツと生理の研究をしているのですが、見えないものとされている生理のつらさを可視化して、当事者同士で会話をするだけでも、つらさの改善につながることを学びました。この点は、ツムラさんの調査結果に一致しますし、私も話すきっかけをつくる取り組みは大事だと思います。

戸田:生理のつらさを表現した「じゃまするず」というキャラクターは、言語化しづらい症状をポップに表現していて、私はいいなと思っていました。でも中止になったことを知って、タイトルとプリント写真機という企画から、「つらさを可視化する」という本来の意味合いが見えづらいところもあったのかな、とも感じました。生理が重い友人と話してみると、「自分のつらさを理解されていない気がした」とも言っていて。
佐々木:キャラクター化して表現したことに対しては、痛みが見えないからこそ、すごく伝わりやすいと思いました。もっと気軽に生理やPMSのつらさを伝えたいと思っている人のきっかけとしては、ポップな表現もいいかもしれません。ただ、「楽しい」「ハッピー」というイメージのプリント写真機と、「つらい」「しんどい」という生理の悩みとのマッチングについては、みなさんいろいろと考えてしまったのかなと思いました。私自身も生理不順で悩んでいて、いろいろと対策しているものの、やっぱりしんどくて。

田野:私はプリント写真機の企画にしたことに、「これなら若者が来るだろう」という大人の目線を感じました。
佐々木:「邪魔」というネガティブな言葉も気になりました。生理そのものを否定的に捉えるより、ニュートラルにスタートできる言葉選びが必要だったのではないかと思うんです。
田野:生理の症状によるつらさは改善できるかもしれないけれど、生理自体は消せないですもんね。
生理のつらさを伝えにくいのはなぜ?
佐々木:今は男性とも生理について話せるようになりましたが、中高生の頃は言えなかったです。当時は、生理をきれいなものではないと感じている人もいて、保健室の先生にひそひそ声でしか話せませんでした。
田野:私が通っていた女子校は、ナプキンを投げて貸し借りできるくらいオープンな環境でした。だから、共学の大学に入って、生理について言いづらい、隠さなきゃいけない雰囲気をとても負担に感じました。
── 環境によっても大きく変わるんですね。
戸田:私は生理痛が軽かったのですが、年齢が上がるにつれ、生理時の感覚が変わってきたんです。ギュルギュルするというか、経血が出ている感覚がより強くなったんです。自分の経血量が多いのではと、不安にもなります。今は生活に支障はありませんが、これから生理の症状がつらくなった時、仕事を休めるのか不安があります。
先日、胃腸炎でアルバイトを休みたかった時、伝え方にすごく悩んだんです。そこで、以前に参加したツムラの大学生向け#OneMoreChoice 研修で、「どのくらいつらいのか」を言語化するといいと教わったことを思い出しました。

田野:ただ「つらいです」じゃなくて。
戸田:そう。だから、「昨夜からこんな症状があって、今朝は電車に乗れないくらい吐き気が強い」と具体的に伝えました。ただ、生理痛だったら言えなかったかも。特に社会人になったら「甘えてる」って思われないか心配です。
佐々木:「Z世代は甘ったれてる」って言われそうとか考えちゃいますよね。
戸田:やっぱり、伝えたい気持ちよりも「どう思われるのか」ということが先行しちゃうかもしれないです。
── 特に若手だと上司に伝えづらいと感じるかもしれません。

田野:私は空手をしているんですが、経血の管理が何よりも嫌です。道着が白いから、漏れると悲惨なんです。「もし男性にも生理がきていたら道着は白かったかな?」と、スポーツも社会も、生理がない前提だと思うこともあります。
生理のつらさの前提には、「休めない社会」もあると思います。生理に限らず、休まないことが信頼につながると思っているから、我慢してしまう。
── 調査(※2)では、生理痛・PMSについて人に言いづらい理由として「相手を困らせてしまいそうだから」「相手にわかってもらえないと思うから」「みんなも我慢していると思うから」と答える20代が多かったそうです。

佐々木:みんなが我慢するのが当たり前って、生きづらいですよね。
田野:生理は個人差があって、すごくつらい人もいる一方で、あまりつらくない人もいるからこそ、我慢できるものと認識されやすいのかもしれません。なので、休む理由で「生理痛」とはなかなか言えないですよね。「頭痛」とか「腹痛」と別の言葉で代替します。生理について学ぶ、議論する機会は本当に少ないので、みんなが知識を持っているわけではないし、「言っても通じないだろうな」という諦めがあるのかと思います。
本当に助けになるものがほしい
── 生理のつらさを人に伝えやすくしたり、我慢しない社会にしたりするために、ツムラや他の企業は何ができると思いますか?
佐々木:生理って、一人として同じ症状がないくらい、本当に多種多様ですよね。だからこそ、当事者の声を聞きながら、丁寧に進めることが大切なのかな。
田野:話したくない人もいますもんね。いろいろな人がいる中で、肝になるのは「本当に助けになるかどうか」だと思います。コミュニケーションに課題があるなら、親や上司に伝えやすくするツールとか、実用的なものがいいな。

佐々木:生理痛で休みたい時につらさを言語化できるよう、企業や団体がサポートする、テンプレートがあればいいかもしれない。みんなが知っている企業がやるからこそ受け入れられやすいというか、関心を持つことや、何らかのきっかけが生まれることもありますよね。企業には、多様な視点を持ちながら、個人ではできないアプローチ、アクションを続けてほしいと思います。
戸田:ツムラさんが報告しているような統計データは、私が包括的性教育の普及活動に関わる際の裏付けにもなっていて、本当に助かります。特に、私たち若者世代のジェンダー観や月経に対する意識が日々アップデートされていると感じています。なので、企業には、こうした現場の実態を的確にとらえた統計データを提示するような調査を続けてほしいです。

田野:生理にまつわる対策へのアクセスをよくしたり、もっと話し合いたい人との会話がしやすい何かをつくったり、実用的なもののほうが、当事者にとってはすごく響くのかなと思いました。そして、生理がない前提の社会ではなく、生理があることが当たり前のものとされる環境づくりも大事だと思います。生理のつらさにも、社会的背景があるはずなので、個人の問題にしないことは重要かなと。
生理に限らず社会課題は、当事者や関心のある人たちだけで盛り上がっていても、結局周りの人が巻き込まれないと、インパクトも生まれないと思うんです。企業は、経済の中心からインパクトを最大化できると思います。私もこれから企業に入る一員として考えていきたいと思っています。
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※1 「隠れ我慢に関する実態調査」調査概要
調査主体:株式会社ツムラ
実施時期:2021年1月16日~1月18日/調査手法:インターネット調査/調査委託先:楽天インサイト
調査対象:①全国の20代~50代女性10000人(人口構成比に基づく) ②心身の不調があっても、いつも通り家事や仕事を行っている20代~50代女性1000人(年代別に250人ずつ)
※2 「第2回生理・PMSの本音と理解度調査」調査概要
調査主体:株式会社ツムラ
実施時期:2024年9月9日~9月12日/調査手法:インターネット調査/調査委託先:株式会社エクスクリエ
調査対象:全国の15歳~49歳の生理を経験した人6000人、および15歳~49歳の男女15000人(男性7608人、女性7392人)
(撮影:川しまゆうこ)