沖縄から北におよそ2時間でソウルに着く。韓国の仁川国際空港に、那覇空港から毎日7便以上の直行便が就航している。9月初旬。那覇で夏日が続く一方、ソウルは朝晩肌寒く、本格的な秋の気配が漂っている。
沖縄県の翁長雄志知事が9月6日、沖縄観光を振興するためのトップセールスでソウルを訪れた。沖縄県は6日午後、ソウル市中心部のコリアナホテルで、観光セミナーと商談会を開催した。夜は「沖縄ナイト」を開き、韓国の旅行業界関係者らに感謝を伝えた。韓国関係者らを中心に、延べ300人以上が参加した。
日本側は、翁長知事の他、平良朝敬沖縄観光コンベンションビューロー会長、長嶺安政駐韓特命全権大使らが参加し、韓国の業界関係者らと交流した。
ソウルでの「沖縄ナイト」開催は、2016年11月に続き2度目となった。
■#観光#アジア#自立
沖縄県は経済の自立を目指して、2015年に「アジア経済戦略構想」をまとめている。
翁長知事は16年3月、「アジアの巨大マーケットの中心に位置する地理的優位性を生かし、アジア経済と連動することで活力を取り込み、自立型経済を発展させたい」と表明した。
「沖縄ナイト」で翁長知事は、次のようにあいさつした。
韓国から沖縄を訪れる観光客は16年度に初めて40万人を超えた。外国観光客全体の約20%を占めている。韓国と沖縄を結ぶ直行便は10年の1社週3便から、17年8月末までに7社週60便になった。約7年間で20倍に増加した。本日お集まりの航空会社、旅行会社などの関係者の尽力のたまものだ。心から感謝する。韓国との関係を一層強化して引き続き誘客に取り組みたい。いっぺーにふぇーでーびる、カムサハムニダ(沖縄の言葉と韓国語で「ありがとうございます」)
■ 韓国で空前の沖縄人気
韓国から沖縄を訪れる旅行者の数が、ここ3、4年で急増している。2014年度に10万人を記録した旅行者数が、16年度は45万人を超えた。
「沖縄ナイト」に来賓として参加した韓国旅行業協会の梁武承(ヤン・ムスン)会長は、次のように話した。
日本と韓国の間で行き来する観光客数は、16年に740万人を超えた。日韓観光振興拡大会議が目標とする1000万人達成に向けて、勢いがついている。特に沖縄と韓国間の往来は爆発的に増え、16年は、15年と比べて約45%増加した。沖縄県の積極的なマーケティングが、韓国の航空会社と旅行会社に大きな励みとなっている。今後は観光に加えて、教育やスポーツ分野にも持続的な交流を拡大させたい
韓国最大手の旅行会社、ハナツアーの担当者は、沖縄は身近な海外旅行先として、家族連れや若者を中心に人気だと説明する。パッケージツアーよりも、それぞれの好みに合わせたフリープランが主流で、ピーチ、チェジュ航空、ティーウェイなどの格安航空会社(LCC)利用も盛んだという。また、ソウル周辺に住む市民にとっては、済州島に行くのと同じくらいの予算で海外旅行できる手軽さも人気の理由だという。
■ アジア各地>関西 訪沖観光客数
韓国からの旅行者だけではない。沖縄には今、アジア各地からの観光客が増え続けている。
沖縄県観光政策課の調べによると、2016年度に沖縄を訪れた外国からの観光客で最も多かったのは、台湾からで、65万人を超えた。次いで韓国の45万人、中国本土44万人、香港22万人の順となっている。外国からの観光客数の合計は約213万人に上り、史上初めて200万人を超えて過去最高値を記録した。15年度と比べて約28%増えているという。
一方、16年度に日本国内から沖縄を訪れた観光客数はおよそ664万人だった。総数では外国からの観光客の3倍を超えるも、15年度からの増加率は約6%にとどまっている。
16年度に台湾、韓国、中国本土から沖縄を訪れた観光客数は合わせて約155万人。関西地方からの約137万人を大きく上回る状況となっている。
■ 海外からの観光 経済自立の鍵
アジアを中心とした海外からの観光需要が、沖縄県経済に大きく貢献しはじめている。
沖縄県観光政策課の調べでは、2016年度の沖縄県の観光収入は6603億円に上り、過去最高値を記録した。内容を詳しく見ると、一人当たりの観光消費額は、国内客が7万4763円、海外客(空路)は9万8097円となっている。海外からの観光客による観光収入が重要度を増していることが理解できる。
沖縄県では、観光収入が基地関連収入の2倍を上回る状況がすでに始まっている。観光を軸にしたアジア各国との交流拡大が、経済自立の鍵とみられる。
沖縄県企画調整課の調べによると、14年度の県民総所得は4兆2744億円だった。その内5.7%が基地関連の収入で、額はおよそ2436億円だった。一方、同年度の観光収入は12.5%、約5342億円に上っている。
(つづく)