日本は「多言語国家」? 沖縄で固有言語の普及センター開設

「しまくとぅば」とは、沖縄固有の言語の名称で、「ウチナーグチ」「琉球語」と呼ばれることもある。
しまくとぅば普及センターの看板を掲げる嘉手苅孝夫沖縄県文化観光スポーツ部長(右)と、波照間永吉センター長=9月12日、沖縄県庁
しまくとぅば普及センターの看板を掲げる嘉手苅孝夫沖縄県文化観光スポーツ部長(右)と、波照間永吉センター長=9月12日、沖縄県庁
JINHEE LEE

沖縄県文化振興課は9月12日、県庁内に「しまくとぅば普及センター」を開設した。

「しまくとぅば」とは、沖縄固有の言語の名称で、「ウチナーグチ」「琉球語」と呼ばれることもある。沖縄県の嘉手苅孝夫(かでかる・たかお)文化観光スポーツ部長は、センターの開所について次のように話し、期待を寄せた。

しまくとぅばを話せる人材の育成、しまくとぅば講座への人材派遣、会話集の作成などを通じて、しまくとぅばの全県的な普及と継承に取り組む。それらをつかさどるワンストップ総合窓口として、センターを開所する。このセンターを核として、しまくとぅばの普及と継承がさらに発展するように期待している

◾️ 沖縄県の公用語化という理想も

センターは、県から委託を受けた沖縄県文化協会が運営する。センター長には、沖縄県立芸術大学客員教授の波照間永吉(はてるま・えいきち)さんが就任した。

波照間さんは、ハワイでハワイ語の復興に携わった経験を持つ学識経験者で、琉球文学や地域文化に精通している。波照間さんは、しまくとぅばが日本語と並ぶ沖縄の公用語になることが理想だとして、次のように意気込みを語った。

 県内各地域の言葉を沖縄県の「重要文化」と位置付けて、守り、育てたい。近代沖縄の歴史の中で衰退の道をたどらされたしまくとぅばを、現代の私たちの力で再興、普及させたい。言葉は文化の母。ウチナー文化の母である、しまくとぅばを継承し、沖縄文化がさらに発展してルネッサンスを迎えられるように、全ての県民と共に取り組みたい

しまくとぅば普及への思いを語る波照間永吉さん=9月12日、沖縄県庁
しまくとぅば普及への思いを語る波照間永吉さん=9月12日、沖縄県庁
JINHEE LEE

◾️ 消滅避ける最後のチャンス

ユネスコ(国際教育科学文化機関)は2009年、しまくとぅばを消滅の危機に瀕する言語に指定した。

沖縄県は、しまくとぅばを次のように位置づけている。

県内各地において受け継がれてきた「しまくとぅば」は、地域の伝統行事等で使用される大切な言葉であるとともに、組踊や琉球舞踊、沖縄芝居等といった沖縄文化の基層で、いわば沖縄のアイデンティティの拠り所

沖縄県は06年、毎年9月18日を「しまくとぅばの日」とする条例を公布、施行するなど、普及継承活動に取り組んでいる。

一方、沖縄県でしまくとぅばを話す人口は減少の一途をたどっている。10~20代の若者世代で流ちょうに話す人は、ほとんどいないのが現状。祖父母世代との会話で相手が話す内容は理解できるが、自分は話せないという人が圧倒的な大多数だ。

16年度の県民意識調査(2630人が回答)によると、しまくとぅばを「まったく使わない」「あまり使わない」「あいさつ程度」と答えた割合は合わせて72・1パーセント。一方、「主に使う」「共通語(日本語)と同じくらい使う」と答えた割合は合わせて27・8パーセントだった。

波照間永吉さんは、次のように強調した。

継承への取り組みを今やらなければ、しまくとぅばが葬られる可能性が極めて高い。今回、沖縄県が本気になって大規模な形で取り組むことは、本当に最後のチャンスだと思っている

沖縄の固有言語を守る取り組みは、文化の多様性豊かな「日本」が残るか消えるかという問題を、本土住民らにも問いかけている。

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