沖縄県は9月6日、韓国・ソウルで「沖縄ナイト」を開催し、沖縄観光振興への韓国側の尽力に感謝した。翁長雄志知事は、集まった200人ほどの韓国旅行業界関係者らに、持続的な交流拡大を呼び掛けて、次のように話した。
沖縄県は世界水準の観光リゾート形成を目指して、那覇空港第2滑走路建設、主要港湾の設備強化、大型MICE施設の整備など、国際観光地としての環境整備に取り組んでいる。韓国のお客様に、多様な沖縄の魅力を楽しんでいただき、スポーツや教育分野のさらなる交流も期待している
◾️沖縄と両想い 韓国学術界の熱視線
交流拡大を呼び掛ける沖縄県に呼応するように、韓国では、学術会が沖縄に関心と共感を寄せている。2017年度に入り、沖縄関連の書籍が2冊出版され、注目を集めている。
5月末、近代日本文学研究者の趙正民(チョ・ジョンミン)さんによる『沖縄を読む:戦後の沖縄文学と思想』が出版された。8月末には、文学評論家の李明元(イ・ミョンウォン)さんによる『2つの島:抵抗の両極、韓国と沖縄』が出版された。2冊はいずれも学術書。沖縄を幅広く捉え、深く理解しようと試みている。
『2つの島』は、琉球と朝鮮の中世からの交流や、日本の植民地主義、戦後の米軍基地問題などを通して、沖縄と韓国が抱える共通の課題を論じている。李明元さんは、本のタイトルの2つの島とは沖縄と韓国のことだという。南北の分断により、歩いて国境を越えられない状況が続く以上、韓国は沖縄と同じように「島の状態にある」と説明する。
もともと日本の市民教育などを研究していた李明元さんは、2011年の東日本大震災をきっかけに、関心が沖縄に移ったという。12年7月に初めて沖縄を訪れ、宜野湾市の米軍普天間基地の爆音問題を訴える市民団体らと交流する中で、同じような問題を抱える韓国人として強く共感したという。
韓国では近年、米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD〈サード〉)配備などに対して、地元住民らが猛烈な反発の声を上げている。米軍新基地建設を巡り、沖縄県の名護市辺野古などで市民が連日抗議を続けるのと同様の動きが、韓国各地でも起きている。
李明元さんは、沖縄と韓国が、日米、米中(あるいは米ロ)間で「人質状態」にあると指摘する。周りの大国の利害関係によって沖縄や韓国が苦しむ構造はおかしいとして、次のように話した。
自己決定権を確立するために、韓国は、南北問題を解決することが最も重要な課題だ。沖縄は、中立化を経て自立化を達成することが一つの方法だと考える。朝鮮半島で南北間の緊張が解消されれば、沖縄の軍事基地としての重圧もなくなるはずだ。東アジアの平和のために、沖縄と韓国が緩衝地帯になることが大切だ
李明元さんは、2014年に韓国大手紙・京郷(キョンヒャン)新聞の週刊誌で沖縄に関するコラムを連載した。コラムを本に転載して、一般の読者も読みやすい内容に工夫したと話す。週刊誌でのコラム連載が決まったとき、李明元さんは文学評論か沖縄かどちらのテーマで書くか迷っていた。編集者が「ぜひ沖縄を書いてほしい」と要望したという。
◾️自治体外交で東アジア連帯の可能性
翁長雄志沖縄県知事は、那覇市長時代(2000〜14年)に、姉妹都市提携を模索して韓国を2度訪問している。9月6日のソウルでの記者会見で、翁長知事は、沖縄と韓国間の自治体外交の可能性について次のように話した。
沖縄県はすでに、ハワイ(米国)とチェジュ(韓国)の間で、自然環境や再生エネルギーをベースにした交流に取り組んでいる。経済界が間に入り、今後、沖縄県と韓国の地方自治体の間で姉妹友好都市を結ぶことも可能かもしれない。私たちにとって韓国はとても身近で、長い歴史の中で培った素晴らしい絆がある。文化と経済の面でも、また兄弟のような気持ちの面でも、良い形が作れるだろう。自治体外交は重要だと思っている
韓国内では、沖縄県との姉妹都市提携について「チェジュ島が最も相応しい」とする呼び声が高い。実際にチェジュ島でも沖縄への関心が高まっている。
済州(チェジュ)大学校は8月、「チェジュ沖縄学会」を発足させる計画を明らかにした。
チェジュ沖縄学会準備委員会は、韓国内の研究者に向けて、学会の創立について次のように案内している。
沖縄を通じてチェジュをより深く知り、韓国、日本、世界への理解を深め、未来を開きたい。韓国と日本の研究者の交流は拡大しているが、形式的な関係を超え、お互いを深く理解するために付き合う機会は多くない。研究発表と討論を大切にしながらも、人間的な交流を重視する学会にしたい。チェジュ島の外からも、チェジュと沖縄に関心を寄せる研究者なら誰でも参加できる集まりにしたい
沖縄県と韓国の交流は、学術分野でも着実に拡大している。
チェジュ島では16年に、韓国海軍の基地が完成。17年には、米海軍が最新鋭のミサイル駆逐艦「ズムウォルト」の配備を提案し、地元が強く反発した。沖縄とチェジュで、国境を越えた地域間交流が進めば、東アジアの島々を軸にした平和連帯への機運が高まることも考えられる。
(つづく)