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地球の水の循環に重要な役割を果たしている海流システムが、著しく減速もしくは停止する可能性があるとする研究が、学術誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。
崩壊の可能性が指摘されたのは、大西洋内で温かい水を北へ、冷たい水を南へと循環させる「大西洋子午面循環(AMOC)」と呼ばれる海流システムだ。
AMOCは、地球のさまざまな地域に温かさをもたらすほか、海の生き物たちに必要な栄養分を運ぶ、世界の海の「ベルトコンベヤー」の一つとされる。
米国海洋大気庁(NOAA)によると、AMOCはもともと水の塊を約1000年かけて運ぶほどゆっくりとした速度で循環しているものの、さらに減速していることがわかっている。温暖化によりこれ以上動きが弱くなり続ければ、干ばつや海面上昇など大きな影響が出るとされている。
今回調査をしたデンマーク・コペンハーゲン大学の2人の研究者は、AMOCの強度を予測するために、1870〜2020年までの150年分の海面の水温を分析。AMOCが不安定になっていることを示す「早期警戒信号」の統計モデルを作成した。
その結果、温室効果ガスを削減するための劇的な措置が講じられなければ、AMOCが現在から2095年の間に、最も早い場合は2025年に停止するだろうと結論づけた。
AMOCの崩壊は、気候システムの「ティッピング・ポイント(一度超えてしまうと、再び元の状態に戻れない転換点)」の1つとされており、研究者らは論文で「AMOCの破綻は、北大西洋地域の気候に深刻な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。
ちなみに、グリーンランド氷床や永久凍土層の融解、アマゾンの熱帯雨林の破壊などもティッピング・ポイントとされている。
一方、国連気候変動政府間パネル(IPCC)は第6次評価報告書で、AMOCが今世紀中に完全に崩壊する可能性は低いとしており、今回の研究結果とは異なる見解を示している。
また、ワシントンポストによると、AMOCが弱くなっていることは2004年から収集されているデータから明らかになっている一方で、短期間のデータを基に、今後数十年の海洋の変化を予測するのは難しいとされている。
さらに、今回の調査に携わった研究者たちも、今回の分析で見過ごしたもしくは発見できなかったAMOCの変化に関連したメカニズムがあることは否定できないとしている。
それでも、ペンシルベニア大学気候科学者のマイケル・マン氏は、今回の調査結果にはいくつかの疑問が残るとしつつ、説得力がある内容で「研究者らは現実をよく理解していると思う」とAxiosに語っている。
研究に携わったピーター・ディトレブセン氏は「非常に心配な結果です」とワシントンポストに述べた。
「これは、私たちが(温室効果ガスの排出に対して)さらに強くブレーキを踏まなければいけないということを示しています」
ハフポストUS版の記事を翻訳・加筆・編集しました。