福島県川内村も紅葉の季節がすぎ、冬の準備をそろそろ始めなければいけないと感じている中、遠藤村長は帰村者が安心して生活するため、そして戻りたくても戻れず避難先の介護施設で生活している村民のために、念願だった特別養護老人ホームを11月1日に開所することができました。
懸念していた人材確保も、東京から今年の4月に川内村民になった大西事務長が村内を走り回り、村役場・村民のご協力により何とか間に合い、入所を希望される方々を11月中に59名入所できることを心から嬉しく思います。
大西事務長は、福島原発事故が起こった2011年には東京で生活していましたが、NPO団体の一員として原発事故半年後から福島県に入り、ボランティア活動をしていました。川内村でボランティア活動することが多くなり、川内村の自然の美しさ・人の温かさを感じ、村民から色々と頼られるようになり、この特養が開所することを知り、当法人の職員になってくれました。
59名の入所が決まった利用者情報を確認すると、この特養開所が重要な意味を持つことを再度認識するとともに、遠藤村長がなぜあれほどまでに強く特別養護老人ホームを川内村に設立することを望んでいたのか分かりました。
何と59名の入所者の中に19名が川内村民で、全村避難で川内村から郡山市・いわき市・三春町、遠くは東京に避難者したいた方がこの特養の開所をキッカケに帰村することができました。その方々は仮設住宅・借上住宅・病院からの入所であり、利用者家族も一緒に村に戻ることができました。
入所希望背景で目立つのは、「単身世帯・高齢者世帯等で家族等に介護者がいない」や「主介護者が就労・病気になったから」です。ある利用者家族からは、「2年前から特養が村にできると聞いていたので、入所できたらみんなで村に戻ろうと決めていた。入所できること・みんなで村に戻れたことがとてもうれしい。」と言っていました。帰村・復興に貢献できていることに私もうれしく感じています。
帰村宣言後、既に川内村に戻っていた13名合わせて32名の川内村の方が入所されます。その他に相双地区からも10名の入所が決まっており、会津美里町・東京に避難していた方が入所されます。
スタッフは42名の必要人員に対して、16名が村民で、5名がやはりこの特養がキッカケで帰村しています。20歳の男性スタッフは、県内のグループホームで働いていましたが、村に帰るキッカケを探していた時に村に特養にできることを知り帰村しました。
村出身のスタッフが16名いるので、入所される村民も昔から知っている方に介護すること、入所する家族も昔から知っている方がスタッフでいることに安心しています。昔からの付き合いがこの特養で再び始まることに、この特養が村民のコミュニケーションをはぐくむ場所になってくれることを確信しています。入所される高齢者は施設から外出することが難しいので、この特養に村民が集まってみなさんが楽しく時間を過ごせるような施設つくりを目指していきます。
小さい子どもから大人まで入所している高齢者とこの特養で楽しくふれ合い、原発事故後の自治体が復興に向けて進んでいることを私はこの特養で証明していかなければと感じています。一人でも多くの方が村に戻り、原発事故後に避難・仮設住宅での生活等で苦痛を感じていた方が楽しい人生になるために私ができることを今後も邁進していきます。そして、遠藤村長はじめ村役場の方々の苦労が報われ、世界でも稀な帰村宣言をした自治体の取り組みをみなさんに知っていただきたいと存じます。多くの皆さまに心から感謝申し上げます
(※この記事は2015年11月1日発行のMRIC by 医療ガバナンス学会 Vol219 「特別養護老人ホームかわうち開所 ~帰村のキッカケに~」より転載しました)