PRESENTED BY NTT西日本

「自動運転EVバス」で人手不足の課題を解決。鹿児島県初の実証実験がスタート

「お金を出してもバスの運転手がいない」地域で市民の交通手段を維持する方法は?持続可能なまちづくりに向けた取り組みとは

少子高齢化による働き手不足が進む日本。運転手の確保が困難になる中で、新たな公共交通として期待されるのが「自動運転EVバス」だ。日本政府は2027年度までに100か所以上の自動運転EVバスの展開・実装を目標に掲げており、全国で動きが活発化している。そんな中、鹿児島県南さつま市が、同県初となる実証実験をスタートした。

鹿児島県本土の最西南端に位置する南さつま市は、人口3万人ほどの自然豊かなまちだ(画像はイメージ)
鹿児島県本土の最西南端に位置する南さつま市は、人口3万人ほどの自然豊かなまちだ(画像はイメージ)

今回の実証実験は、南さつま市、マクニカ、NTT西日本の3者が2024年に締結した包括連携協定にもとづくもの。以降の社会実装をめざした段階的な取り組みのファーストステップとして、2024年12月14日〜27日に実施された。

初日のオープニングセレモニーには、本坊輝雄 南さつま市長をはじめ、関係企業や地域の子どもたちが集まった。

オープニングセレモニーの様子。自動運転EVバスのラッピングは、地元の鳳凰高校の生徒たちがデザインした
オープニングセレモニーの様子。自動運転EVバスのラッピングは、地元の鳳凰高校の生徒たちがデザインした

自動運転EVバスは持続可能なまちづくりに、どう寄与できるか? 本坊輝雄 南さつま市長、NTT西日本 鹿児島支店長の瓜生昌史さん、マクニカ スマートシティ&モビリティ事業部長の可知剛さんに聞いた。

お金を出してもバスの運転手がいない

オープニングセレモニーの様子。左からマクニカ スマートシティ&モビリティ事業部長の可知剛さん、本坊輝雄 南さつま市長、NTT西日本鹿児島支店長の瓜生昌史さん
オープニングセレモニーの様子。左からマクニカ スマートシティ&モビリティ事業部長の可知剛さん、本坊輝雄 南さつま市長、NTT西日本鹿児島支店長の瓜生昌史さん

── 南さつま市が自動運転EVバスの導入を進める背景は?

本坊市長(以下、本坊):南さつま市は高齢化率が高いこともあり、公共交通を利用する方が多い地域です。通院や通勤、通学など、特に路線バスが重要になります。しかし、近年は働き手不足で「お金を出してもバスの運転手がいない」という問題が起きていました。

本坊輝雄 南さつま市長
本坊輝雄 南さつま市長

「市民の交通手段をしっかり確保するためにはどうすればいいのか」と考えていった結果、いち早く自動運転EVバスの導入にチャレンジすることにしました。NTT西日本、マクニカをはじめ、皆さまのお力添えによって、ようやく実証実験のスタートに辿り着いたところです。

無人の車を遠隔監視する時代へ

── 南さつま市、マクニカ、NTT西日本、3者の役割を教えてください。

NTT西日本鹿児島支店長の瓜生昌史さん
NTT西日本鹿児島支店長の瓜生昌史さん

瓜生さん(以下、瓜生):南さつま市さまには、事業主体としてバスの走行ルート、駐停車エリア、充電エリアなどを提供いただいています。マクニカさまは、自動運転EVバス、遠隔監視システムなどの技術を担当されています。この事業全体のプロジェクトマネジメントをしているのが、NTT西日本です。

──自動運転EVバスの車両はどのようなものですか?

マクニカ スマートシティ&モビリティ事業部長の可知剛さん
マクニカ スマートシティ&モビリティ事業部長の可知剛さん

可知さん(以下、可知):フランスのNavya Mobility社が開発する 「EVO(エヴォ)」を使用しています。乗車定員は 12 人(実証実験時は10 人)で、一番の特徴はハンドルがないことです。

はじめから完全に無人の自動運転EVバスとして設計されており、運転手の目や耳の代わりになる、さまざまなセンサーがついています。ライダー(レーザー光を使ったセンサーの一種)、衛星測位システムなどの技術を用いて、安心・安全に自分の位置を推定しながら走ることができるんです。電気自動車(EV)であることも特徴ですね。

自動運転EVバスの車内。今回の実証実験は「レベル2」で、緊急時にはコントローラー(左側にある黄色い装置)で搭乗員が運転操作できる
自動運転EVバスの車内。今回の実証実験は「レベル2」で、緊急時にはコントローラー(左側にある黄色い装置)で搭乗員が運転操作できる

今回の実証実験は、搭乗員が同乗する「レベル2(特定条件下での自動運転機能)」で、緊急時に搭乗員が運転操作できるコントローラーがついています。社会実装段階の「レベル4(特定条件下での完全自動運転)」になると、遠隔監視室にて1人が複数台を監視、コントロールするシステムとなります。もう少し技術が進むと、AIが24時間365日監視する体制にできると考えています。

今回の実証実験における遠隔監視室の様子。バスのルートや走行スピード、車内外の様子などをモニタリングしている
今回の実証実験における遠隔監視室の様子。バスのルートや走行スピード、車内外の様子などをモニタリングしている

市民の声を反映し、社会との協調性を高めていく

── 実証実験で解決していきたいことは?

瓜生:今回、初となる実証実験で実施したいことは2つ。1つは、我々が選定したルートを、本当に予定通り安心・安全に運行できるかの確認。鹿児島県で初の実証実験になりますので、しっかりと安全を意識して進めています。

もう1つは、市民へのアンケートをもとに、速度やルートなど、実際のニーズをさらに反映させることです。例えば「ブレーキが強すぎるから、こう変えたほうがいい」といった声をデータとして集め、ソフトウェアのアップデートをしていきます。

可知:実はもう、技術自体はレベル4(特定条件下での完全自動運転)まできています。ここから大事なのは、人々の理解や、自動運転ではない一般車との協調性を高めることだと思います。コストを抑えつつ、いかに社会と協調し、持続可能にしていくかを検討しているところです。

二人三脚で地域に応じた課題解決を

── 今後について、教えてください。

本坊:この事業は「今日からスタート」するものです。財源の問題、道路管理者や国、県の協力を含め、皆さまにお力添えをいただき、ゴールに向かっていきたいです。また、他地域とも連携し、点から面に自動運転EVバスの取り組みを広げていきたいです。

子どもたちは、「僕たちのまちには自動運転EVバスが走っているんだよ」と誇りに思ってくれることを期待しています。同時に、南さつま市にはこの地ならではの宝がたくさんありますので、地域の魅力をさらに高めていければと思っています。

可知:いずれは自動運転EVバスが日常に溶け込む時代がやってくると思います。自動運転EVバスの導入は、地域の方々の全体的なウェルネス(より良く生きようとする生活態度)につながると考えていますので、ぜひ全国の自治体と一緒に取り組んでいきたいです。

また、全国で実証実験をしていると、地域の方々はそれぞれ独自のアイデアをお持ちだと気付かされます。そういった方々と、今後は一緒にイノベーションを起こしていければと思っております。将来的には、「交通事業の1つ」というよりも「まち全体のサービス」として、幅広い連携をしていきたいです。

瓜生:少子高齢化や運転手不足は日本全国の課題です。今回の自動運転EVバスの実証実験を全国に広げ、加速させていきたいと思います。

NTT西日本は「人と人」「人と地域」をつなぐ仕事をしています。それぞれの自治体の課題を丁寧にヒアリングして、二人三脚で地域に応じた課題解決をしていきたいです。ICTや最新技術のソリューションを用意していますので、今後もさまざまな声を聞かせていただけたら、と思います。

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新たな公共交通手段である自動運転EVバス。地域の豊かな暮らしを支える技術として、今後、急速に普及していくことが見込まれる。

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