PRESENTED BY NTT西日本

森林大国、日本で進む「森林・林業DX」とは?京都府京丹波町に学ぶ、未来のまちづくり

京都府京丹波町の取り組みから見えた、森林活用やまちづくりの未来。森林・林業DXの資金循環に向けて「J-クレジット制度」を活用する動きに迫る。

2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けた動きが加速する今。森林面積が国土の2/3にあたる日本では、CO2を吸収する森林の価値に着目し、デジタル技術を利用して適切な管理をめざす「森林・林業DX」が本格化しつつある。

森林・林業DXの資金循環の要となるのが、国が認証する「J-クレジット制度」の活用だ。自治体としていち早く取り組みを始めた京都府京丹波町の岡元真美さん、プロジェクトを管理するNTT西日本の二宮大士さん、森林データの分析等を担う地域創生Coデザイン研究所の西村陵さんに聞いた。

左から、地域創生Coデザイン研究所研究主任リードCoクリエイターの西村陵さん、NTT西日本京都ビジネス営業部社会基盤営業担当の二宮大士さん、京丹波町産業建設部農林振興課農林振興係主事の岡元真美さん
左から、地域創生Coデザイン研究所研究主任リードCoクリエイターの西村陵さん、NTT西日本京都ビジネス営業部社会基盤営業担当の二宮大士さん、京丹波町産業建設部農林振興課農林振興係主事の岡元真美さん
Photo by 木村充宏

森林の価値が注目される背景とJ-クレジット制度

── 森林・林業DXが注目される背景とJ-クレジット制度について教えてください。

西村さん(以下、西村):2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて、企業はCO2排出量の削減に努めています。しかし、特に工場を有する企業等の場合、排出量をゼロにすることは非常に難しいです。 

西村陵さん。NTT西日本に入社後、自治体や企業のカーボンニュートラル関連業務を経験。現在はグループ会社である地域創生Coデザイン研究所にて森林・林業DXに従事
西村陵さん。NTT西日本に入社後、自治体や企業のカーボンニュートラル関連業務を経験。現在はグループ会社である地域創生Coデザイン研究所にて森林・林業DXに従事
Photo by 木村充宏

そこで、他企業や自治体のCO2削減活動に投資をすることで自社のCO2排出量を相殺する「カーボンオフセット」に注目が集まるようになりました。日本では、CO2排出の削減・吸収量をクレジットとして国が認証する「J-クレジット制度」がスタート。2023年には東京証券取引所に「J-クレジット市場」が開設されました。今後はカーボンオフセットを希望する企業とJ-クレジットを保有する自治体等で、資金循環の加速が見込まれています。 

J-クレジット市場には、省エネ・再エネ設備の導入や森林管理等、さまざまな種類があります。中でも、森林はCO2吸収源だけでなく、災害防止、水源かん養、生物多様性保全等、多面的な機能を有しています。そのためカーボンオフセット目的だけでなく、企業価値向上の観点からクレジット購入を希望する企業も増えています。自治体等では、デジタル技術を利用した森林情報の計測・分析が進みだしています。

自治体が「森林の使い方」を変えていく時代

── 京丹波町では、J-クレジットの流通に向けて、いち早く取り組みを始められました。 

岡元真美さん。京丹波町の林業大学校を卒業。森林関連の法人を経て、林業に注力する自治体で働きたいとの思いから京丹波町に入庁
岡元真美さん。京丹波町の林業大学校を卒業。森林関連の法人を経て、林業に注力する自治体で働きたいとの思いから京丹波町に入庁
Photo by 木村充宏

岡元さん(以下、岡元):京丹波町は森林率が約82%の町です。この豊富な森林資源を次の世代に引き継ぎ、森林・林業の活性化につなげたいと思っています。しかし、木材の価格は下落し、人手も不足しており、全国的にも手入れの行き届いていない放置林が増えています。 

京丹波町の木造新庁舎(2021年開庁)。木材の96%が町産材で、森林や林業に対する町の思いを感じることができる
京丹波町の木造新庁舎(2021年開庁)。木材の96%が町産材で、森林や林業に対する町の思いを感じることができる
Photo by 木村充宏

「これからは森林のいかし方を多面的にとらえ、そこで得た利益を森林整備に還元していかなければいけない」と考えていたところ、NTT西日本グループがJ-クレジット制度をご紹介くださりました。「すぐにでも取り組みたい」となり、2023年秋に補正予算を確保。プロポーザルを経て、現在はNTT西日本グループと共に、2025年のJ-クレジット創出・売買をめざしています。森林・林業DXを進めてきた企業として親身に相談にのっていただけることは、ありがたく思っています。

J-クレジット流通までの3段階をサポート

── NTT西日本グループの森林・林業DX、J-クレジットに関するサポート内容を教えてください。 

二宮大士さん。NTT西日本京都支店の社会基盤営業担当として課題解決型ソリューションを提供。京丹波町との取り組みでは、初期の段階から事業の取りまとめ等に寄与
二宮大士さん。NTT西日本京都支店の社会基盤営業担当として課題解決型ソリューションを提供。京丹波町との取り組みでは、初期の段階から事業の取りまとめ等に寄与
Photo by 木村充宏

二宮さん(以下、二宮):J-クレジット実施には、「プロジェクト申請」「モニタリング」「クレジットの流通」の3段階があります。NTT西日本グループは、はじめから終わりまでトータルで伴走支援をしています。 

流れとしては、まず「プロジェクト申請」に向けて、森林情報を計測・解析。対象となる山林の決定、CO2吸収量の算定、プロジェクト計画書の作成等をします。「モニタリング」では、森林情報を観測し、必要書類の作成、審査機関対応などを支援。「クレジット流通」では、最終段階であるJ-クレジット市場におけるクレジット売却までサポートします。

J-クレジット制度自体が新しく、複雑であるため、手続きには多くの時間と専門知識を要します。そのため京丹波町では、関係者との認識合わせ、合意形成等から手探りで進めてきました。現在は、京丹波町に加え、宮崎県諸塚村、佐賀県太良町でもJ-クレジット実施支援をしています。 

ドローンを用いて森林資源情報を計測・解析する様子。CO2吸収量の算定等を通じて森林・林業DXを進める
ドローンを用いて森林資源情報を計測・解析する様子。CO2吸収量の算定等を通じて森林・林業DXを進める

西村:現在、私たちNTT西日本グループが受ける相談の6〜7割は森林由来のJ-クレジット関連。関心の高まりを実感しています。J-クレジットは森林を活用し、新たに収益を得られる仕組みであることが最大の理由だと考えています。

森林は、豊かなまちづくりの基盤   

── 今後について教えてください。

岡元:新たに取り組むJ-クレジット流通・活用が、今進めている森林整備の後押しとなり、さらには地域の活性化につなげていけたらと思っています。また、町内では一般の方向けに、森林・林業に関するイベントも行っております。興味がある方はぜひ一度京丹波町に足を運んでいただけたら嬉しいです。

Photo by 木村充宏

西村:日本には放置林が増えていますが、森林には潜在的な価値があります。まずは多くの方に興味を持っていただきたいです。そして、J-クレジットにご関心のある自治体等には、ぜひご連絡いただければと思います。

二宮:「森林の価値」について、漠然としたイメージをお持ちの方が多いと思いますが、J-クレジットの流通で得られる資金は、地方自治体の財源となります。つまり、結果的には住民へのサービスにも還元されます。これからは、「自分たちの森林が、豊かなまちづくりの基盤になっていく」と考えていただけたらと思います。

また、NTT西日本グループ=電話等の通信サービスを扱う企業というイメージを抱いている方も多いと思いますが、森林・林業DXに限らず、多様な分野で地方自治体の課題解決をお手伝いできます。「地域密着型」という強みをいかし、地方自治体に寄り添いながら、よりよい「まちづくり」をサポートしていきたいと思います。

*** 

森林が持つ価値の再評価や新たな活用を可能にする森林・林業DX。今後は多くの自治体や企業等で、2050年のカーボンニュートラル社会へ向けた資金循環が生まれることが期待される。

(取材撮影:木村充宏)

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