誰でも気軽に有料のデジタルコンテンツを投稿できる「note」がリリースされて以来、コンテンツ課金に対する新しい取り組みがサービス内で試行錯誤されています。
noteは、ダイヤモンド社で『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』などの書籍を手掛け、現在はピースオブケイクス(渋谷区)を率いる編集者の加藤貞顕さんが立ち上げたばかりのサービスです。
最大の特徴はコンテンツに対する課金・支払いの手続きが驚くほどシンプルに設計されているということ。リリース翌日の4月8日には早くもユーザー数が1万人を超え、プロアマ問わず多くのクリエーターが参加しています。(詳細については過去のエントリをご確認ください)
とはいえ、デジタルコンテンツの課金と言えばこれまで数多のサービスが挑戦し、失敗してきた歴史があります。しかし、noteの場合、100円~10,000円という金額設定のルール以外はユーザーの裁量にある程度ゆだねられているため、「課金方法」自体もクリエーターの創意工夫の対象となっているという点が面白い。
たとえば、noteではテキストコンテンツを投稿する際にどこまでを無料で読めるようにするか、自身で設定することができます。しかし、これまでネット上に無料でコンテンツを公開してきた多くのクリエーターにとって、いきなり有料コンテンツを投稿することは精神的にハードルが高い。そこで開発されたのが"投げ銭"という方法です。
"投げ銭"方式は、コンテンツを100%公開したうえで最後に課金バナーを設置するという方法。フリーライター・鷹野凌さんのノートなどで提案され、現在多くのユーザーが採用しています。灰色ハイジさんのエントリには、ほかにも編集者・文筆家の岡田育さんによるファンクラブ的な使い方や、漫画家の鈴木みそさんによる早期購入権の販売などの取り組みが紹介されているので、ぜひチェックしてみてください。
また、近々の取り組みでは写真家の青山裕企さんによる課金方式が注目を集めています。青山さんは写真集『ソラリーマン』や『スクールガール・コンプレックス』などで知られる有名な写真家。そんな青山さんに「自分の好きな女の子」を撮影してもらえる権利が、10,000円で販売されています(すでに募集は終了)。青山さんはほかにも投げ銭で集めた資金で「何か」を買い、それを使って写真を撮影するというクラウドファンティング的な課金方式も試行しています。
もちろん、コンテンツの質が玉石混淆になる恐れもありますし、ブロガーのrootportさんが指摘するように盗作のトラブルが起きる可能性も否定できないでしょう。
しかし、ユーザーが「自身のデジタルコンテンツを売る」ということに向き合って試行錯誤していく先にどんな未来があるのか、筆者は期待せずにはいられません。既存のコンテンツビジネスの枠組みでは発見されなかった新しいアイディアや秩序が生まれる可能性を秘めたnoteに、引き続き注目していきたいと思っています。
※筆者のnoteアカウントはこちら→https://note.mu/miyazakid