「自分の体だいじょうぶかな」心愛さんがつづったSOS
2017年11月6日。小学3年だった女の子は心の中にあった思い、悩みを鉛筆でしっかりと書いた――。自宅で死亡した千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さん(10)が父親の暴力を訴えた学校のアンケートのコピーを市が1日に公表した。余白には担任が心愛さんから聞き取った暴力の内容の書き込みもある。どれほどつらかったのか、悲しかったのか。この1枚の用紙から心愛さんの必死のSOSが伝わってくる。
「お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり、起きているときにけられたり たたかれたりされています。先生、どうにかできませんか」
当時小学3年だった心愛さんが、アンケートの最後の自由記述欄にそう書いたのは11月6日朝の1時間目が始まる前。通っていた市立山崎小学校で実施された「いじめにかんするアンケート」だった。
B4用紙の冒頭には「ひみつをまもりますので、しょうじきにこたえてください」「なまえをかきたくないばあいは、かかなくてもかまいません」とあり、その下に名前が正直に書かれている。続く選択方式の質問で「あなたは、今いじめられていますか」の問いには「はい」を選び、いじめの内容を問う質問には「こわいことばでいわれたりする」「ぶつかられたり たたかれたり けられたりする」などの項目を丸で囲んでいる。「いじめをだれからうけましたか」には「かぞく」を選んでいた。
余白には翌日の7日、担任が心愛さんに聞き取りした内容が残されている。「きのうのたたかれた あたま、せなか、首をけられて 今もいたい」「口をふさいで ゆかにおしつける 自分の体だいじょうぶかな?」「せなか 首をちからいっぱいける」「あたま なぐられる 10回(こぶし)」「お母さんがいない時 せなかをける」などと記され、「おきなわでは、お母さんがやられていた」との記載もあった。
この日のうちに心愛さんは千葉県柏児童相談所に一時保護された。12月27日に解除。翌18年1月15日、市教育委員会は担任の書き込みを消してアンケートのコピーを父親に渡した。心愛さんは直後に市立二ツ塚小に転校。その後、2回あったアンケートにいじめを訴えることはなかった。
市はアンケートのコピーを公表した理由を「報道では父親が虐待を認めず、しつけと言っている。心愛さんの名誉のため、公表することが必要と判断した」としている。(上嶋紀雄)
(朝日新聞デジタル 2019年02月04日 00時31分)