北朝鮮の兵士1人が12月21日、韓国北部・京畿道の軍事境界線を越えて韓国側へと亡命した。聯合ニュースなどが報じた。兵士は19歳ぐらいで入隊して2年目の若手。韓国軍は軍の「しごき」に耐えかねたのではと分析している。
兵士は自動小銃を携帯しており、韓国軍に身柄を確保されている。
北朝鮮側からは亡命した兵士を捜索するため、3~4人が境界線付近まで近づいたため、韓国軍は午前9時30分ごろに警告放送を数回流し、機関銃20発を射撃した。北朝鮮側からも応戦があり、10時10分過ぎに銃声2発が聞こえたが韓国側に着弾はしなかったため、戦闘状態にはならなかったという。
北朝鮮からの亡命は前年比3倍
2017年、北朝鮮兵士による韓国側への亡命はこれで4人目となった。
直近では11月13日にも、板門店(パンムンジョム)の共同警備区域で北朝鮮兵士が銃撃を受けながら走って亡命し、重傷を負った。この時の監視カメラの映像を国連軍が公開、世界中で報じられその実態に関心が集まった。
この兵士は、韓国側による宣伝放送を聞いており、上官による暴力が「耐えられなかった」と話しているという。その後、韓国側の治療を受けており、韓国側は宣伝放送でこの兵士の処遇について広報していた。
また、兵士以外の亡命も相次いでいる。
韓国側は、今回の事件の前日、12月20日午後11時半ごろにも、手漕ぎの木造船を使用して民間人2人が韓国側に亡命していた。海洋警察が身柄を確保している。
2017年に北朝鮮から韓国へ亡命した軍人、一般人は計9回で15人(うち兵士が4人)。2016年の5人(兵士1人)から3倍となっている。
脱北者への取り締まり強化が影響?
一方、亡命者が増えている背景についてはよくわかっておらず、分析が続けられている。
聯合ニュースは、「経済制裁で生活が苦しくなったのではとの分析があるが、説得力に欠ける」と解説する。脱北者の数は減っているからだ。
2017年に韓国入りした脱北者は、961人(10月末まで)で、2016年の同期比で16.8%減少している。金正恩委員長が脱北者の取り締まりを強化しており、中国ルートではなく韓国海上ルートでの亡命が増えているとの見方を聯合ニュースは紹介している。