子どもが「磁石セット」「水で膨らむボール」を誤飲して開腹手術。アメリカでは死者も。相次ぐ事故で販売禁止へ

マグネットセット(ネオジム磁石)、水で膨らむボール。この二つの製品は原則として販売禁止となります。乳幼児が誤飲し、開腹手術をしたケースも。アメリカでは死者も出ていました。
マグネットセット、水で膨らむボール(出典は国民生活センターと消費者安全調査委員会)
マグネットセット、水で膨らむボール(出典は国民生活センターと消費者安全調査委員会)
経済産業省のホームページから

「磁力を持ったマグネットセット」と「水で膨らむボール」の二つの製品を、子どもが誤飲する事故が発生している。

これを受け、政府は5月16日、技術基準を満たさない上記製品の販売を規制する法令の改正を閣議決定した

磁石によって消化管壁に穴があいたり、ボールが膨らんで腸閉塞になったりする恐れがあり、実際に誤飲した子どもは開腹手術が必要になっている。

関係機関は、すでに二つの製品を持っている家庭に対し、乳幼児に触れさせないように注意を呼びかけている。

アメリカでは死者も

NITE(製品評価技術基盤機構)や経済産業省によると、子どもがマグネットセットを誤飲してしまう事故は2017年1月〜22年6月、11件報告されている。

そのうち3歳未満の子どもの誤飲は5件で、11件全て開腹手術が必要になった。

アメリカでは同種のマグネットセットを含む磁石の誤飲事故で、5人が死亡しているという。

また、水で膨らむボールについても、乳幼児が誤飲してしまった事故報告が21年に4件あった。

いずれも開腹手術による摘出が必要になった。

マグネットセットの危険性

二つの製品には、それぞれどのような特徴があるのだろうか。

マグネットセットは、複数の磁石で構成されており、組み合わせることで様々な形をつくれるおもちゃだ。

磁石は球体や立方体の形をしており、直系や一辺が3〜5ミリと小さい。この小さい磁石が500個や1000個といった単位でセット販売されている。

磁石はネオジム磁石で、一般的なフェライト磁石と比べ、10倍以上の磁力を持つとされている。

誤飲すると、磁石が胃や腸といった消化管壁越しに引き合い、壁を挟んでひっついてしまうため、自然排出されなくなる。さらに、消化管壁の血流が滞り、壊死することで穴があく恐れがある。

水で膨らむボールの危険性

また、水で膨らむボールも数十や数百といったセットで販売されている。

高吸水性のプラスチックを材料としており、吸水前は2〜10ミリと小さいが、吸水することで数倍から数十倍に膨らむ。

誤飲してしまうと、胃液や腸液の体液を吸収し、消化管内でボールが膨張。消化管内で詰まり、腸閉塞を生じさせる。

NITEの実験でも、消化管に見立てたホース内を水道水で満たし、水で膨らむボールを投入すると、膨張したボールによってホースが詰まり、水が通らない状態になった。

注意を呼びかけるポスター
注意を呼びかけるポスター
経済産業省

開腹手術や死亡に至る可能性

このような事故を受け、政府は5月16日、消費生活用製品安全法施行令の一部を改正する政令を閣議決定。

技術基準を満たさないマグネットセットと水で膨らむボールの2製品は、消費者の生命や身体に危害を及ぼす恐れが多いと認められる「特定製品」に指定される。

施行日は6月19日で、それ以降は製造や販売が禁止されることになる。

NITEの担当者は16日に開いた記者会見で、「二つの製品の誤飲で開腹手術や死亡に至る可能性がある」と注意喚起した上で、すでに製品を持っている家庭に次のような注意を呼びかけた。

  • 小さな子どもに触れさせない
  • 子どもが持ち出せないよう、保管場所に注意する
  • 「口に入れると危険」と子どもに伝える
  • 不要になった場合は製品を廃棄する
  • 購入する場合は、リスクがあることを理解した上で購入し、PSCマークの表示があるか確認する

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