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群馬県の学校法人「NIPPON ACADEMY」の理事長が、ウクライナから避難してきた学生を「難民貴族」「乞食」と呼んだことに対し、批判の声が広がっている。
セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使は2月28日、「絶対に許されない、恥ずべき発言」「謝罪しなければならない」とTwitterで憤りをつづった。
問題の発言とその背景
ウクライナからの避難民を「乞食」など侮辱的な言葉で呼んだのは、前橋市の学校法人「NIPPON ACADEMY」の清水澄理事長だ。
NHKによると、同法人はウクライナから避難してきた学生約40人を受け入れ、身元保証人となっていたが、学費の支払いをめぐり16人の学生とトラブルになっている。
学生たちは来日前、「行政の支援を前提に、学費を一定期間無料にする」という説明を受けていたという。
しかし、来日後に通い始めた日本語学校で、無料と聞いていた期間も含めての学費支払いを求められたと主張している。
この問題について清水理事長は2月24日、記者会見を開いた。
さらに「教育活動の一環なんです。学費の請求は。学生さんが、ここまでくると言わざるを得ないけど、はっきり言って乞食になります」「ウクライナの人たちの今の支援状態皆さんご存じですか。はっきり言って『難民貴族』ですよ」などと発言した。
清水理事長によると、学費を請求すると伝えたのは受け入れた後だったという。しかし、同理事長はそのことについて「自立するなら当たり前」と主張。
学費を支払えない学生については「はっきり言って泥棒」とも述べた。
これに対し、ウクライナから避難した学生の一人、ルニン・ウラディスラブさんが27日に記者会見を開いた。
朝日新聞によるとウラディスラブさんは「来日前の説明では学校側から無料と聞いていた期間中も含めて、学費の支払いを求められた」と説明し、「学校側には約束を果たしてほしい」と求めた。
さらに、理事長の発言に対して「確かに私たちは日本社会でよく扱われているが今回は侮辱のために使われた」と述べた。
「アパートを取り上げる」の発言も
テレビ朝日によると、学校側は学生に対し「学費を納めなければアパートやスマホを取り上げる」とも伝えた。
しかし、学生たちが暮らしているのは学校ではなく前橋市が提供している市営住宅で、スマートフォンは企業からの無償提供だという。
また、前橋市には、ウクライナから避難してきて日本語学校に通う学生の身元保証人になった場合、個人には30万円、学校は10万円を支給する制度がある。
前橋市によると、NIPPON ACADEMYは学生たちの身元保証人になっており、10万円の申請をしているという。
申請は実績報告が提出された後に決定する形式であり、市は「中身を精査した上で支払いを決めたい」とハフポスト日本版の取材で説明した。
SNSでは「酷すぎる」の声も
NIPPON ACADEMYは2022年3月に、「理念である『平和・環境・共生』を今こそ実現したい」として、30人のウクライナの人達を無償で受け入れると発表した。
今回の清水理事長の「乞食」などの発言はこの理念とは相反する。
さらに、発言は戦争で出身国を追われた人たちに疎外感を感じさせるだけではなく、避難民に対する憎しみを加速させる可能性もある。
ウラディスラブさんたちは、望んで避難民となったわけではない。記者会見では「難民貴族より(戦争のない)平和なウクライナの一般人でいたかった。そうしたら多くの人は死ななかった」とも述べている。
理事長の発言にはSNSで「酷すぎる」「見下している」などの非難の声も投稿されている。