「NFL v.s. トランプ大統領」が勃発。人種差別問題めぐり MLBやNBAにも飛び火

試合前の国歌斉唱で膝をつき、腕を組むなどして起立を拒否する選手が相次いでいる。
国歌斉唱の際、膝をついて起立を拒否するニューイングランド・ペイトリオッツの選手たち=9月24日、マサチューセッツ州
国歌斉唱の際、膝をついて起立を拒否するニューイングランド・ペイトリオッツの選手たち=9月24日、マサチューセッツ州
USA Today Sports / Reuters

アメリカプロフットボールリーグ(NFL)の選手多数が9月24日、試合前に国歌が演奏された際、ひざまづいたり、腕を組んだりして斉唱するのを拒否した。人種差別を容認しているとして批判を浴びているトランプ大統領への抗議の意思表示だった。「反トランプ」の動きは、NFLだけにとどまらず、ほかのプロスポーツにも広がっている。

「場外」戦が勃発

アメリカのマサチューセッツ州フォックスボロ。24日、NFLのニューイングランド・ペイトリオッツとヒューストン・テキサンズの試合前、「事件」が起きた。国歌の演奏が始まると、両チームの複数の選手がひざをついて起立を拒んだり、選手同士で腕を組んだりして斉唱しなかった。

ほかの試合会場でも、続々と選手たちが同じような行動を取った。

国歌斉唱の際、膝をついて抗議の意思を示したマイアミ・ドルフィンズの選手たち=9月24日、ニュージャージー州
国歌斉唱の際、膝をついて抗議の意思を示したマイアミ・ドルフィンズの選手たち=9月24日、ニュージャージー州
USA Today Sports / Reuters
国歌斉唱時に膝をつくワシントン・レッドスキンズの選手たち=9月24日、メリーランド州
国歌斉唱時に膝をつくワシントン・レッドスキンズの選手たち=9月24日、メリーランド州
USA Today Sports / Reuters
国歌斉唱時の起立を拒否する姿勢を示すジャクソンビル・ジャガーズの選手たち=9月24日、ロンドン
国歌斉唱時の起立を拒否する姿勢を示すジャクソンビル・ジャガーズの選手たち=9月24日、ロンドン
Paul Childs / Reuters

抗議を示したのは選手だけではなかった。CNNによると、デトロイトであったアトランタ・ファルコンズ対デトロイト・ライオンズの試合前には、両チームのオーナーが選手たちと腕を組んで国歌斉唱を拒否した。国家をマイクで歌うはずだった地元の歌手も膝をついてしゃがみ込み、マイクを握る右手を突き上げた。

きっかけ

この日、一斉に選手たちが抗議の姿勢を示したのは、この2日前、アラバマ州であったトランプ大統領の演説がきっかけだった。ニューヨークタイムズによると、トランプ氏はこう語気を強めた。

「我々の遺産に対する完全な侮辱であり、我々が敬意を表しているすべてを軽んじている」。

NFL「批判」を含んだ演説をするトランプ大統領=9月22日、アラバマ州
NFL「批判」を含んだ演説をするトランプ大統領=9月22日、アラバマ州
Aaron Bernstein / Reuters

NFLでは昨年、当時サンフランシスコ・49ersに所属していたコリン・キャパニック選手がアメリカで黒人や有色人種に対する差別的な事件が起きていることに抗議して国歌斉唱での起立を拒否。以来、同調する選手が後をたたないことに、トランプ氏はイライラをぶつけたとみられる。

国歌斉唱時に起立せず、しゃがんで抗議の意思を示したコリン・キャパニック選手(中央)=2016年10月6日、カリフォルニア州
国歌斉唱時に起立せず、しゃがんで抗議の意思を示したコリン・キャパニック選手(中央)=2016年10月6日、カリフォルニア州
USA Today Sports/Reuters

トランプ氏は追い討ちをかけるように、TwitterでもNFL界を牽制。24日、立て続けにこんなツイートをした。

「もしNFLやその他のプロリーグで高額の報酬を得る特権が欲しいなら、選手たちは我々の偉大なアメリカ国旗を侮辱することは許されないし、国歌斉唱の時は起立すべきだ。そうしないならクビだ。何かほかに仕事を探せ!」

「NFLの選手たちが国旗と国家への侮辱をやめるまでファンたちが試合観戦を拒否すれば、すぐに変化が見られるだろう。解雇と中止だ!。NFLの観客動員数と人気はガタ落ちだ。退屈な試合だから当然だ。多くの客が離れたままだ。なぜなら彼らは愛国者だから。リーグはアメリカに戻るべきだ」

トランプ氏に対しては、人種差別を容認しているとの批判が高まっている。バージニア州で8月、白人至上主義者らと反対派が衝突した際、トランプ氏は当初、「両者に非がある」なとど発言し、白人至上主義団体をかばっているなどと批判を浴びた。

ほかのスポーツ界にも「飛び火」

トランプ氏への反発の動きはNFL以外のプロスポーツ界にも広がっている。アメリカのスポーツ専門チャンネル「ESPN」の電子版によると、アメリカのプロ野球・メジャーリーグ(MLB)で23日、オークランド・アスレチックスのブルース・マックスウェル選手が、国歌が演奏された時に膝をついた。メジャーリーグで初めて国歌斉唱を拒否した選手となった。

国歌斉唱の際、起立するのを拒否したマックスウェル選手=9月24日、カリフォルニア州
国歌斉唱の際、起立するのを拒否したマックスウェル選手=9月24日、カリフォルニア州
USA Today Sports / Reuters

また、アメリカのプロバスケットリーグ(NBA)の昨シーズンのファイナルを制したゴールデンステイト・ウォーリアーズの選手たちが、ホワイトハウス(大統領府)への訪問を辞退することを表明。これを受け、トランプ氏はチームを招待することを取り消した。Twitterでもチームの主力、ステファン・カリー選手を名指しし、「チャンピオンチームにとってホワイトハウス訪問はこの上ない名誉と考えられている。ステファン・カリーはためらっている。それゆえ、招待は取り消す!」と述べた。

Foxスポーツによると、チームのヘッドコーチを務めるスティーブ・カー氏は「驚きはない。私たちがトランプ氏に辞退を告げる前に、彼の方が先に中止を言っただけのこと」と話した。

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